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建設業許可判例全文3−不正の手段による建設業許可取得(仙台地裁平成6年7月11日)

(最高裁判所 裁判例情報より)

事件番号:平成5(行ウ)1
事件名:処分取消請求事件
裁判年月日:平成6年7月11日
裁判所名:仙台地方裁判所

主文
1 原告A、同B、同C及び同Dの各訴えを却下する。
2 原告E株式会社の請求を棄却する。
3 訴訟費用は原告らの負担とする。

事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告が平成四年七月二一日付け宮城県(監)達第一号をもってした原告E株式会社に対する特定建設業の許可の取消処分を取り消す。
2 被告が平成四年七月二一日付け宮城県(監)達第二号をもってした原告Aに対する営業禁止命令を取り消す。
3 被告が平成四年七月二一日付け宮城県(監)達第三号をもってした原告Bに対する営業禁止命令を取り消す。
4 被告が平成四年七月二一日付け宮城県(監)達第四号をもってした原告Cに対する営業禁止命令を取り消す。
5 被告が平成四年七月二一日付け宮城県(監)達第五号をもってした原告Dに対する営業禁止命令を取り消す。
6 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 本案前の答弁
(一) 主文第一項と同旨
(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。
2 本案の答弁
(一) 原告らの請求をいずれも棄却する。
(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。

第二 当事者の主張
一 請求原因
1 被告は、平成四年七月二一日、原告E株式会社(以下「原告会社」という。)に対し、建設業法(以下「法」と略す。)二九条五号の規定に基づき、同日付け宮城県(監)達第一号をもって特定建設業の許可の取消処分をし、また、法二九条の四第二項の規定に基づき、原告Aに対しては同日付け宮城県(監)達第二号をもって、同Bに対しては同日付け宮城県(監)達第三号をもって、同Cに対しては同日付け宮城県(監)達第四号をもって、同D(以下「原告D」といい、原告A、同B、同C及び同Dの四名を「原告会社役員ら」、原告会社及び原告会社役員らを「原告ら」という。)に対しては同日付け宮城県(監)達第五号をもって、それぞれ右取消に係る建設業について、同日から二年間、新たに営業を開始することを禁止する営業禁止命令による処分(以下「営業禁止命令処分」という。)をし、右各処分の通知書は、同月二五日、原告らに郵便により送達された。
2 (一)原告会社が法二九条五号に該当する事由があるとして特定建設業の許可の取消処分を受けた理由は、原告会社が平成三年九月二七日、右許可の更新申請(以下「本件許可更新申請」という。)をするにあたって、当時、原告会社の資本金の額が一〇〇〇万円であったにもかかわらず二〇〇〇万円と偽り、資本の額の欄を二〇〇〇万円と偽造した原告会社の商業登記簿謄本を被告に提出し、これによって被告から右許可の更新を受けたためとされている。
(二) しかし、法二九条五号の「不正の手段」とは、建設省計画局長通達(昭和四七年三月一八日建設省計建発第四六号、以下「本件通達」という。)により、詐欺・脅迫等の法律に違反する行為を指し、建設業者が法人である場合には、その代表者おいて右行為を認識していなければこれに該当しないと解釈されるところ、原告会社代表取締役は、原告会社が本件許可更新申請手続を行った当時、右偽造の事実をまったく知らなかったのであるから、原告会社には同条同号に該当する事由は認められない。
したがって、被告のした原告会社に対する建設業の許可の取消処分は違法であり、これを前提とする原告会社役員らに対する各営業禁止命令処分も違法である。
3 (一)さらに、被告が前記各処分を行うには、平成五年法律第八九号による改正前の建設業法三二条(以下法三二条については、右改正前のものを指す。)の聴問を行うことが必要であるところ、被告は、原告会社に対する処分については同会社の代表取締役である原告Aに対して聴問を行ったが、原告会社役員らに対する処分については同人らに対して聴問を行わなかった。
(二) また、原告会社代表取締役である原告Aに対する聴問は、同人に弁解としてその欲するところを申述させず、単に被告の言い分のみを確認するだけの甚だ形式的な方法で行われ、聴問としての実体を備えないものであった。
(三) したがって、被告は、前記各処分を行うにあたって必要な法三二条の聴問を実施しておらず、被告の原告らに対する前記各処分は違法である。
4 原告会社は、平成四年一〇月三日、あらためて増資手続をし、資本金の額を二〇〇〇万円に増額しているのであるから、本件許可更新申請における瑕疵は治癒した。
よって、原告らは、前記各処分の取消を求める。
二 被告の本案前の主張
1 原告会社役員らは、平成四年七月二五日、各営業禁止命令処分の通知書の送達により同人らに対する右各処分のあったことを知った。
2 しかるに、原告会社役員らは、平成五年二月一二日に至って本件各訴えを提起し、右各処分の取消を求めたものであるから、原告会社役員らの右各訴えは、行政事件訴訟法一四条一項に規定された出訴期間の経過後に提起された不適法な訴えとして却下を免れない。
三 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2(一)の事実は認める。
3 同2(二)の事実のうち、本件許可更新申請手続を行った当時、原告会社代表取締役が偽造の事実を知らなかったとの点は否認し、その余は争う。
4 同3の事実のうち、原告会社役員らに対して聴問を行わなかったことは認め、その余は否認ないし争う。
5 同4は争う。
四 被告の本案前の主張に対する原告会社役員らの認否及び反論
1 被告の本案前の主張1の事実は明らかに争わない。
2 原告Aは、原告会社代表取締役として審査請求をしたものであるが、当然個人としても審査請求の意思を有していたものであるから、同人については、行政事件訴訟法一四条三項、四項に準じて出訴期間は徒過していないものと扱うべきである。
また、被告の本案前の申立は、遅きに失し許されない。
五 被告の主張
1 被告が原告会社に対して特定建設業の許可の取消処分及び原告会社役員らに対して各営業禁止命令処分を行った経緯は、次のとおりである。
(一) 特定建設業の許可の基準の一つとして規定されている財産的基礎を有するためには、法一五条三号、同法施行令五条の四、本件通達II五(2)により、資本金の額が一五〇〇万円以上でなければならないところ、原告会社の本件許可更新申請当時における資本金の額は一〇〇〇万円であった。
(二) 原告会社は、本件許可更新申請において、同会社の資本金の額を二〇〇〇万円と偽り、資本の額が二〇〇〇万円に変更された旨記載された偽造の商業登記簿謄本を被告に提出し、平成三年一〇月二五日付けで特定建設業の許可の更新を受けた(以下「本件許可更新処分」という。)。
(三) 被告は、平成四年七月六日、原告会社の右商業登記簿謄本の資本の額が偽造されたものであることを知り、原告会社に対し、同会社が所持している許可申請書類一式を持参するよう指示した。
(四) 同月九日の午前中には原告会社の取締役である原告Dが、同日午後には原告会社代表取締役である原告A及び同Bが宮城県庁に出頭し、いずれも増資手続は完了していたものと思っており、商業登記簿謄本が偽造された事実は知らなかった旨弁解した。
そこで、被告は、原告A及び同Bに対し、右事実に関する顛末書を提出するよう指示した。
(五) 原告A及び同Bは、同月一三日、右商業登記簿謄本の偽造は、原告会社の女子事務員が独断で行ったものであり、代表取締役及び担当取締役は、被告から指摘を受けるまでかかる事実を知らなかった旨の記載のある上申書を提出した。
(六) 被告は、右同日、原告Aに対し、原告会社の聴問を同月一六日に行う旨告知し、聴問通知書を交付した。
(七) 被告は、同月一六日、宮城県庁行政庁舎土木部会議室において、原告会社に対する処分につき原告会社代表取締役である原告Aに対して聴問を行い、同会社が「不正の手段」により本件許可更新処分を受けたものであることを確認した。
(八) 被告は、同月二一日、原告会社の商業登記簿謄本及び建設業許可申請書の添付書類により、原告会社役員らが、不正の事実のあった平成三年九月二七日以前から同会社の取締役として就任し、右二一日現在においても同会社の取締役であることを確認した。
2 (一)法二九条五号に規定された「不正の手段」とは、建設業の許可の取消制度が許可制度の信用性を維持するためのものであること、法二九条には建設業者の故意又は過失を要する旨の定めがないことに鑑み、許可を受けるに際して客観的に内容が虚偽の書面を添付するなど正しく許可申請をしない行為を指すものと解釈すべきである。
(二) 原告らが援用する本件通達による解釈は、法七条一項三号の「請負契約に関しての不正な行為」に関する解釈であって、法二九条五号の解釈にはあてはまらない。
(三) 原告会社は、資本金の額が一〇〇〇万円であるにもかかわらず、商業登記簿謄本の資本の額が二〇〇〇万円に変更された旨偽造し、これを許可申請書に添付して本件許可更新申請を行い、これによって本件許可更新処分を受けたものであるから、同会社には同条同号に該当する事由がある。
3 仮に原告らの主張のとおり、原告会社の代表取締役に「不正の手段」についての認識が必要であるとしても、原告会社代表取締役である原告Aは、商業登記簿謄本の偽造についての認識があったと認められ、また、仮に原告会社代表取締役おいて右認識がなかった場合であっても、かかる偽造が原告会社の経理担当者である訴外Fによって行われたのであれば、原告会社代表取締役が会社の内部的な業務執行についても責任を負う立場にあることから、結局、原告会社は、右偽造についての責任を免れず、「不正の手段」により本件許可更新処分を受けたものというべきであり、したがって、同会社には法二九条五号に該当する事由があると認められる。
4 「不正の手段」により本件許可更新処分を受けたのちに、特定建設業の許可更新の基準を満たすべく原告会社が増資を行ったとしても、特定建設業の許可更新をするか否かを判断するのは許可更新申請時点においてであるから、これによって原告会社の特定建設業の許可の取消事由がなくなったことにはならない。
5 法二九条の四第二項により、法人である建設業者の役員に対する営業禁止命令処分を行うためには、(1)法人について法二九条五号又は六号の許可取消事由があること、(2)当該処分の原因事実の発生当時及び当該処分時において当該法人の役員であること、(3)当該処分を受ける役員に対して法三二条に基づく聴問を行うことが必要であると解されるところ、被告は、右(3)の要件である聴問を実施していない。
しかし、行政処分を行う手続に瑕疵があった場合においても、その手続をやり直すことによって異なる行政行為がされる可能性がない場合には、その行政処分を取り 消す必要はないと解されるところ、本件は、右(1)の要件については原告A及び同Bが提出した上申書並びに原告会社代表取締役である原告Aに対する聴問の結果により、右(2)の要件については原告会社の商業登記簿謄本により、その要件の該当性が明らかであって、さらに原告会社役員らに対して聴問をやり直したとしても、右要件の該当性がないと認めれる弁解のされる可能性がなく、被告が異なった行政行為をする可能性がない場合であるから、原告会社役員らに対する各営業禁止命令処分には取り消されるべき違法性は認められない。
六 被告の主張に対する原告らの認否及び反論
1 被告の主張1(一)、(二)及び(六)の事実は認める。(三)ないし(五)の事実は明らかに争わない。(七)の事実は否認ないし争う。(八)の事実は知らない。
2 同2(一)ないし(三)の主張は争う。
3 同3の主張は争う。
4 同4の主張は争う。
5 同5の事実のうち、被告が原告会社役員らに対する各営業禁止命令処分を行うにつき、同人らに対して聴問を行っていないとの事実は認め、その余は否認ないし争う。
法三二条に定められた聴問手続は、利害関係人の利益を保護し、行政処分の正当性を保障するためのものであるから、必ず実施されなければならず、かつ、公開を要する。
第三 証拠(省略)
○ 理由
一 被告の本案前の主張について
1 請求原因1の事実は、当事者間に争いがなく、被告の本案前の主張1の事実は、原告会社役員らにおいて明らかに争わないので自白したものとみなす。また、 本件訴えの提起の日が平成五年二月一二日であることは、当裁判所に顕著である。
したがって、原告会社役員らの本件各訴えが、行政事件訴訟法一四条一項の出訴期間を徒過して提起されたものであることは明らかである。
2 これに対し、原告Aは、同原告が、原告会社代表取締役として審査請求をしている場合には、個人としても審査請求をする意思を含んでいたものというべきであ るとし、行政事件訴訟法一四条三項、四項を準用すべきであると主張するが、原告会社に対する処分と原告Aに対する処分とでは処分内容も異なり、原告会社のした審査請求を原告Aの審査請求と同視することはおよそ困難であるというべきであって、原告Aの右主張は失当であるというほかない。
3 さらに、原告会社役員らは、被告の本案前の申立が時機に遅れた攻撃防御方法であるとして却下されるべきであると主張するが、出訴期間の遵守は、職権調査事項たる訴訟要件であり(最高裁昭和三四年(オ)第一一八〇号同三五年九月二二日第一小法廷判決・民集一四巻一一号二二八二頁参照)、かかる要件については民事訴訟法一三九条は適用されないと解すべきであるから(最高裁昭和四二年(行ツ)第一一号同年九月一四日第一小法廷判決・民集二一巻七号一八〇七頁参照)、右主張も失当である。
4 以上のとおり、原告会社役員らの主張はいずれも失当であり、同人らの各訴えは、いずれも出訴期間を徒過した不適法な訴えとして却下を免れない。
二 原告会社に対する特定建設業の許可の取消処分の違法性について
1 原告会社に法二九条五号に該当する事由が認められるかについて
(一) 請求原因1及び2(一)の事実は、当事者間に争いがない。
(二) 建設業法による建設業の許可制度は、一定の軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者を除いて、任意に建設業を営むことを原則として禁止し、施工能力、資力、信用のない建設業者の輩出を防止すべく一定の許可基準を設けて、これに適合する者のみに営業を許すものであり、もって建設工事の適正な施工を確保し、発注者の保護を図るとともに、建設業の健全な発達を促進することを目的とする制度である。法二九条による建設業の許可の取消は、右許可制度の実効性を担保するために設けられた許可行政庁の監督処分であると解され、同条五号の「不正の手段」の意味は、許可行政庁の判断を誤らせるべく許可申請書やその添付書類に虚偽の事実の記載をしたり、許可の審査に関連する行政庁の照会、検査等に対して虚偽の回答等をしたり、あるいは暴行、脅迫等の不正な行為を行うことを指すものと解するのが相当である。そして、建設業者が法人である場合において、当該法人の代表者以外の役員ないし従業員により建設業の許可の申請又は許可の更新申請手続が行われ、右行為者が故意に「不正の手段」を用いたときには、たとえ当該法人の代表者において「不正の手段」を用いる認識がなかった場合であっても、右行為者の行為について当該法人の代表者に監督上の責任がないと認められる場合など、かかる行為が当該法人の行為と同視できないような特段の事情のある場合を除き、当該法人において故意に「不正の手段」を用いたものと同視するのが相当である。
けだし、他人を使用して自己の利益を図ろうとする者は、他人を使用することに伴う危険をも負担させるのが相当であり、また、右のような方法で、本来は許可を拒 否されるべきものが許可を受けた場合には、その許可の取消をすることが発注者の保護を図り、建設業の健全な発達を促進するという法の定める許可制度の趣旨にかなうからである。
(三) 以上を前提として、原告会社に法二九条五号に該当する事由があるか検討する。
(1) 被告の主張1(一)及び(二)の事実は当事者間に争いがなく、右当事者間に争いのない事実に、成立に争いのない甲第二号証、第六ないし第八号証、乙第一号証の一ないし五、第二、第三号証、原本の存在及び成立に争いのない乙第四、第五号証、証人Fの証言及び弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第九号証、第一〇号証の一、乙第九号証、証人Fの証言、原告A本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。
ア 特定建設業の許可の基準の一つとして規定されている財産的基礎を有するためには、法一五条三号、同法施行令五条の四、本件通達II五(2)により、資本金の額が一五〇〇万円以上でなければならないところ、原告会社の資本金の額は一〇〇〇万円であったため、平成三年八月初旬ころ、原告会社代表取締役である原告Aは、同会社の専務取締役として総務を担当し、許可更新手続を担当する原告Dと相談のうえ、訴外Gから同会社の太陽神戸三井銀行仙台支店の当座預金口座に振り込まれる予定の工事代金一〇〇〇万円をもって増資資金に充て、同会社の資本金の額を二〇〇〇万円に増額して本件許可更新申請を行おうと考え、右一〇〇〇万円を一時訴外株式会社Hに融資したことにして、H名義で新株引受申込証拠金の払込みをすることを計画した。
イ そして、原告Aは、原告会社の経理担当の従業員であるFに対し、訴外I司法書士に相談のうえ、増資手続を進めるよう指示した。
ウ Fは、原告会社に昭和四六年から勤務し、経理一切を任されていたほか、原告会社の銀行預金通帳及び銀行届出印鑑の管理をするなど、原告Aの信頼を受けていた従業員であり、右増資手続が本件許可更新申請のために必要であることを知っていた。
エ Fは、訴外I司法書士と相談し、Hに新株の第三者割当をするために必要な原告会社の取締役会議事録を作成するにあたっては、その記載内容につき原告Aの指示を求めたり、役員らに押印を求めたりするなどし、さらに申込証拠金の払込取扱金融機関の選定につき原告Aの指示を受け、訴外宮城県中央信用組合(以下「信用組合」という。)にその取扱いを依頼した。
オ しかし、前記原告会社の預金口座は、前記工事代金が振り込まれた平成三年八月七日の時点おいては一〇〇〇万円を超えていたものの、同月九日には一〇〇万円の引き出しがあり、それ以後、申込証拠金の払込期日である同年九月二日に至るまで一〇〇〇万円を下回っていた。
カ したがって、Fおいて新株引受申込証拠金を信用組合に払い込むことができなかったため、原告会社は、増資することができないまま許可更新申請書の提出期限である同月一一日を経過した。
キ その後、Fは、本件許可更新手続を担当していた原告Dから、増資後の原告会社の商業登記簿謄本を求められたので、登記官Jの印章を冒用して、資本の額が二〇〇〇万円に変更された旨の記載のある商業登記簿謄本を作成し、原告Dに交付した。
ク 原告Dは、本件許可更新申請において、右偽造に係る原告会社の商業登記簿謄本を被告に提出し、同会社は、平成三年一〇月二五日付けで本件許可更新処分を受けた。
(2) 以上の事実によれば、原告会社がFの不正な手段により本件許可更新処分を受けたことは明らかであり、本件全証拠によっても、Fの右行為について、原告 会社の代表者に監督上の責任がないと認めるべき特段の事情を認めることは困難である。かえって、前記認定事実によると、原告会社の代表取締役である原告Aは、本件許可更新申請のために増資手続が必要であることを認識し、かつ、増資手続を指揮していたのであるから、同人には、かかる偽造が行われたことについて、少なくとも監督上の過失が認められる。
よって、原告会社は、「不正の手段」により本件許可更新処分を受けたものと認められ、同会社には法二九条五号に該当する事由があるといわなければならない。
2 原告会社に対する聴問手続の違法性について
(一) 原告会社は、法三二条による聴問は、公開によって行わなければならず、また、被聴問者をして、弁解としてその欲するところを申述させるものでなければならないとし、原告Aに対する聴問方法は、単に被告の言い分のみを確認するだけの形式的なものであって、聴問の実体を有しない違法な聴問であると主張するので、この点について検討する。
(二) 法三二条に規定された聴問については、その方法についてなんら具体的な定めがされていない。
しかし、同条の聴問が、法二八条一項ないし三項の指示処分及び営業停止処分、二九条の許可取消処分、二九条の四第一項若しくは第二項の営業禁止処分という重大な権利制限を伴う処分が行われる場合に実施されることに照らすと、法三二条の聴問は、被処分者の権利が不当に侵害されないように、処分に先立って被処分者等の出頭を求め、処分理由を具体的に告知し、十分な弁解の機会を与え、かつ、処分のために必要な事項を聴取するものでなければならないと解される。
なお、同条の聴問については公開が明示されていないから、必ずしも公開を要しないものと解するのが相当である。
(三) そこで、原告Aに対する聴問の経緯、方法について検討する。
被告の主張1(三)ないし(五)の事実は原告会社において明らかに争わないので自白したものとみなす。右各事実に二1(三)(1)掲記の各証拠を総合すれば、 原告Aに対する聴問の経緯について、以下の事実を認めることができる。
(1) 被告は、平成四年七月六日、原告会社から提出された同会社の商業登記簿謄本が偽造されたものであることを知ったため、原告会社に対し、同会社が所持している許可申請書類一式を宮城県庁まで持参するよう指示したところ、同月七日、同会社の事務員が右書類一式を持参したので、これを一時預かった。
(2) 同月九日の午前中には原告会社の取締役である原告Dが、同日午後には原告会社の代表取締役である原告A及び同Bが宮城県庁に出頭し、いずれも増資手続は完了していたものと思っており、商業登記簿謄本が偽造された事実は知らなかった旨弁解した。
そこで、被告は、原告A及び同Bに対し、右事実に関する顛末書を提出するよう指示した。
(3) 原告A及び同Bは、同月一三日、商業登記簿謄本の偽造は、原告会社の女子事務員が独断で行ったものであり、代表取締役及び担当取締役は、被告から指摘を受けるまでかかる事実を知らなかった旨記載された上申書を被告に提出し、かつ、その添付書類として信用組合原町支店宛の株式申込事務取扱委託書、H名義の株式申込証及び増資に関する原告会社の取締役会議事録をも提出した。
(4) 被告は、右同日、原告会社の代表者である原告Aに対し、原告会社に対する聴問を同月一六日に行う旨告知し、聴問通知書を原告Aに交付したが、右聴問通知書には、原告会社に対する処分理由が具体的に明示されていた。
(5) 被告は、同月一六日、原告会社代表者(原告A)に対する聴問を行ったが、その際、あらかじめ質問事項を用意し、許可申請書の同一性を確認したほか、 許可基準の一つとして資本金の額が一五〇〇万円以上でなければならないこと及び不正の手段によって許可または許可の更新を受けた場合には処分を受けることを知っていたかどうか、法令・通達の知識を確認し、また、あらためて商業登記簿謄本の偽造の経緯について説明を求めたほか、新たな弁解をもなしうる質問をした。右聴問には、原告B、同D及びFが原告Aの答弁を補佐するために同行し、これを傍聴していた。
(四) 以上の認定事実に照らせば、被告は、あらかじめ原告会社の弁解内容を把握し、その証拠の提出を受けたうえで、処分理由を具体的に告知して原告会社代表者に対する聴問のための呼出しを行い、右代表者(原告A)の聴問にあたっては、処分に必要な事項を確認しつつ、右弁解内容に対応する質問事項を用意し、かつ、原告会社の新たな弁解をも申述できる方法によって聴問を行ったものと認められるほか、原告会社の他の役員である原告B、同D及び同会社の従業員で経理一切を任されていたFが傍聴できる状態で行われたものと認められ、これは前記(二)の聴問方法に適合するものであったと評価できる。
したがって、原告会社に対する被告の聴問方法には違法と評すべき点は認められない。
3 処分後の増資により特定建設業の許可取消事由が治癒されたかについて
原告会社は、特定建設業の許可を取り消されたのち、右許可基準を満たすべく増資を行ったので、許可取消事由は治癒したと主張するが、法二九条五号は、許可及び許可更新申請手続自体が誠実に行われることを担保しようとするものであるから、不正の手段により本件許可更新処分を受けたのちに右許可基準を満たしたからといって許可取消事由の瑕疵が治癒したと認められるものではない。
したがって、かかる主張は、主張自体失当である。
4 そして、本件全証拠によるも、他に原告会社に対する特定建設業の許可取消処分の違法と評すべき点は認められない。
三 以上のとおり、原告会社役員らの本件各訴えはいずれも不適法であるからこれを却下し、原告会社の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

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