手作りワンチップマイコン

 科学教室等において低年齢の児童にも組立、活用が可能な、特別な施設・設備を必要とせず、一般教室で製作及び実習ができ、製作が容易で、システム内容の変更ができ、拡張性を持ち、且つ単価が2000円を割り、理科の実験実習費で1学級の人数分を購入できるようなマイコンボードの活用を計画し、この発想にそってこのキッズモニタ・システムを開発しました。

 このキッズモニタ・システムの特徴は、「キッズモニタ」と名付けたモニタプログラム(プログラムを作成・保存したり、実行したりするための基本プログラム)による、CPU(MPU、処理の中心となるチップ)として使用している「PIC16F84」というチップの活用法にあります。
 このチップはROMライタ(電源を切っても記憶の消えないメモリ(=ROM)にプログラムを書き込む機具)によって外部からプログラムの書き込みが可能なEEPROM(電気的に書き換え可能なROM)の他、チップ自身のプログラムによって読み書きが可能な、64個のデータが記憶できるEEPROMを備えています。
 本システムでは、プログラム用のEEPROMにはモニタプログラムを予めROMライタで記憶させておき、これによって生徒はプログラミングをおこなうことができ、これをデータ用のEEPROMに保存・実行させたり、電源再投入後もここから読み出して実行できるという活用法をとりました。
(つまり、CPUのチップのなかに、システムの入ったハードディスクと、プログラムを保存するフロッピディスクとの両方が入っているかのように使います。)

 さらに、基板には部品のコードを小穴に差し込んでいくだけで自由に配線のできる、ブレッドボードを使用し、これにより、普通教室の生徒一人一人の机上で、ハンダごて等の工具を使わず製作できる上、入力に各種センサを付けたり、出力に発光ダイオードの他に、スピーカやモータを付けたりといった拡張が容易にできます。
 また、部品を簡素化し、プログラムの入力や、プログラムの実行時におけるデータや指示の入力も、通常のスイッチ・ボタン類は使わずに、コードを抜き差しすることで済ませています。これらの方が、操作を直視できの意義(入力に電圧がかかっているかどうか等)が理解しやすい。また電源は単三電池2本の電池ボックスをつなぐだけでよい。(図参照)
 また、言語はマシン語であり「0」と「1」だけで命令が表現されており、かえってBASIC等のように英語で記述された言語と比べ、低年齢の児童や英語に親しめない生徒にも違和感なく活用できるようになっています。
 命令の種類は16しかなく、64ステップの命令しか組み合わせることができないが、これでもかなりのプログラムが組めます。
 プログラムの入力は5本のスイッチ線を発光ダイオードの指示にしたがい抜き差しすることでおこなうようにしました。
 生徒がパソコン等でデータが上手に活用できるようになるためには、パソコンを活用した授業もしくは実習を取り入れていけばよいとおもいます。
 が、コンピュータそのものを対象に学習するためには、パソコンそのものを活用するより、これを構成するチップを活用した学習のほうがよりよいのではないかと考えました。
 たしかに、コンピュータのしくみや働きの理解は難しいのですが、チップを使ってマイコンを組み立て、活用し、慣れるていくことで、それぞれの年齢、習熟度、到達度なりに、コンピュータとは何かをつかみ、より高度な学習への意欲・興味・関心を増していけるのではないかと期待します。

 このマイコンの活用して、日本からビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズのような人材が育ってくれればとおもいます。

    〜小学館「高校教育展望」1998年12月号に発表した原稿より〜










 このマイコンに関する詳しい制作データ等は、これからこのWebページ等でお知らせしていきたいとおもいます。

もどる 前のページ 次のページ