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◆◆◆メールマガジン国際結婚◆◆◆

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◆第49章 国籍確認訴訟の最高裁判決◆

みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。今回は、当メルマガでこれまで何度か取り上げてきた国籍確認訴訟の最終結果についてお話ししようと思います。

国籍確認訴訟に関する最高裁判決が平成20年6月4日に出ました。結果は、これまでの入管政策を覆して、原告の勝訴となりました。これは最高裁が出した8件目の違憲判決になります。

当メルマガ12章で詳述しましたが、国籍確認訴訟について簡単に説明しますと、日本人男性とフィリピン人女性との間に婚外子として生まれた日比ハーフの子供たちが、出生後に父から認知を受け国籍取得届を提出したところ、国籍法3条1項の準正要件(両親の結婚)を備えていないという理由で日本国籍の取得が認められなかったために、両親が結婚しているかどうかによって国籍の取得に差を設けているのは憲法14条の法の下の平等に反するなどとして日本国籍の確認を求めて起こした訴訟です。

まず平成18年3月29日の地裁判決では、原告の子供たちが勝訴しました。判決では、国籍法3条1項が準正要件を備えた非嫡出子については届出による国籍取得を認めているのに対して、準正要件を備えていない非嫡出子(生後認知された子供)の国籍取得を認めないのは合理性が認められず、法の下の平等を定める憲法14条1項に違反しているとして、子供たちの日本国籍が認められました。

しかし、平成19年2月27日の控訴審判決では、原告が逆転敗訴し、子供たちの日本国籍は認められませんでした。理由としては、国籍法には準正されていない非嫡出子が届出によって日本国籍を取得できるという規定がない以上、準正要件を備えていない非嫡出子が届出をしたとしても日本国籍を取得することはできないというものでした。これは法律を厳格に解釈した判決であり、要するに、法改正をしない限り、このケースでの国籍取得はできないという判断です。

これに対して原告が上告し、今回の最高裁判決では原告が勝訴し、子供たちの日本国籍が認められることになりました。理由としては、国籍法3条1項が日本人の父と外国人の母との間に生まれた婚外子で出生後に認知された子供について、両親が結婚しているかどうかによって日本国籍の取得に関して区別していることは、昭和59年の国籍法改正当時は合理的であったかもしれないが、遅くとも訴えがあった平成17年においては憲法14条1項に違反していたと判断でき、届出による国籍取得を準正要件を備えた非嫡出子に限定している部分は無効であるというものです。

違憲判決の結果、一部無効とされた国籍法3条1項は今後改正されることになります。ただし、改正されたとしても、日本人の父と外国人の母との間に生まれた婚外子は、出生と同時に日本国籍を取得できるわけではないということには変わりありません(出生と同時に国籍を取得するのは胎児認知の場合のみです)。今後改正されれば、父が日本人の婚外子は、認知届と国籍取得届の双方を提出すれば、届出の時に日本国籍を取得できるようになる運びです。

この判決は、日本人の子供であるのにも関わらず、これまで国籍が取得できずに苦しんできた婚外子にとっては大きな朗報です。実数は把握できていませんが、この判決によって、日本人が相当増えることになるでしょう(もしかしたら万単位になるかもしれません)。しかし、入管が危惧しているように、悪用しやすいものであることも間違いありません。実態と継続性が必要とされる結婚と異なり、認知は一回限りの行為であるため、偽装認知は偽装結婚よりも簡単に行なうことができるからです。今後はアジア系の子供の「偽装国籍取得」と、日本国籍を取得した子供(実子)を扶養していることを理由にした外国人母の「定住者」の在留資格取得の悪用が増えることが予想されます。当然悪用を防止することが必要になりますが、扶養を理由にする「定住者」の在留資格取得が難しくなって真実の外国人母が困ることになるのは問題なので、国籍法の改正後の運用については、国籍取得届の必要書類としてDNA鑑定書を加えるなどの措置が必要になると思われます。

※参照「第12章 国籍確認訴訟について

平成20(2008)年7月1日

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