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成年後見に関する基礎知識と用語解説

これより本文

成年後見制度

認知症や知的障害などで事理弁識能力(判断能力)が不十分な成人を保護・支援するために作られた制度です。

成年後見制度は、大きく法定後見制度と任意後見制度に分けられます。法定後見制度は、さらに、本人にどの程度の判断能力が備わっているか(残存しているか)の段階によって、後見・保佐・補助の3種類に分けられます。

成年後見制度では、本人の権利と利益を守るために、成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人・任意後見人)が本人に代わって財産管理や契約などの法律行為を行なったり、本人が法律行為を行なうことをサポートしたりします。

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事理弁識能力

事理弁識能力とは、意思能力とも言い、自分がした行為の内容や結果を理解する判断能力のことです。

たとえば売買契約を例にとれば、契約には権利義務関係が伴ないます。権利義務関係を問題なく履行するには、その契約の意味を理解していることが必要です。このような能力を事理弁識能力と言います。

認知症・知的障害・統合失調症など精神上の障害がある者、または、一時的に病気・怪我・泥酔・薬物使用等により意識が正常でない者は、事理弁識能力を欠いていると判断される場合があります。

乳幼児にも意思能力は認められていません。7歳ぐらいから、おやつを買うなど単純軽微な行為について、意思能力が認められるようになります。その後、年齢に応じて段階的に意思能力が認められる範囲が拡大して行き、完全に意思能力が認められるのは、原則として20歳になってからです。

事理弁識能力を欠いた者が行なった法律行為は、法的に無効とされています。

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行為能力

法律行為の有効性は意思能力(事理弁識能力)の有無によって判断されます。意思能力を欠いた意思無能力者が行なった法律行為は無効とされています。しかし、いちいち法律行為ごとに意思能力の有無を立証するのは困難です。そこで、意思能力の有無をいちいち証明しなくても、単独で確定的に有効な法律行為を行なうことができると判断する基準を定め、この法律行為を行なう能力を行為能力と呼んでいます。

行為能力の有無の基準は、形式的に年齢によって定められています。意思能力は7歳ぐらいから認められるようになり、段階的に認められる範囲が拡大して行きますが、充分な意思能力を備えたとする年齢を満20歳と定め、20才未満の未成年者には行為能力を認めず、一般的に満20歳以上の成年者には行為能力を認めています。

制限行為能力者

単独で確定的に有効な法律行為を行なう能力(行為能力)が認められていない者を制限行為能力者と言います。具体的には、未成年者および成年者でも成年被後見人・被保佐人・被補助人が制限行為能力者に当たります。

制限行為能力者については、事理弁識能力(判断能力)が不十分であり、社会的な保護が必要であるとして、法律行為を行なう際に成年後見人等の同意を必要とする場合があるなど、制限行為能力者の権利を制限するとともに、成年後見人等の同意なくなされた行為については取り消しができるものとして、制限能力者の保護が図られています。

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法定後見制度

法定後見制度は、家庭裁判所が選任した成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が、制限行為能力者を保護・支援する制度です。

法定後見制度では、制限行為能力者を、本人にどの程度の判断能力が備わっているか(残存しているか)の段階によって分類し、後見・保佐・補助の三種類に分けています。

平成12年3月まであった禁治産・準禁治産の制度は明治時代に作られた制度で、現代の観点からは人権上の問題もあり、高齢化社会が進行した現情にもそぐわなくなったとして、平成12年4月から現行の後見・保佐・補助の制度に改正されました。新しい制度では、自己決定の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーションの理念などを取り入れて現代化を図り、かねてより人権侵害の問題が指摘されていた公示の方法も戸籍への記載から成年後見登記制度に移行しました。

後見・保佐・補助の三種類は、精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況にある者(判断能力がほとんど常に欠けている者)については後見、精神上の障害により事理弁識能力が著しく不十分である者(判断能力がかなり欠けている者)のサポートについては保佐、精神上の障害により事理弁識能力が不十分である者(判断能力が少し欠けている者)のサポートについては補助の制度を適用するとされています。

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補助

補助とは、法定後見制度の三種類のうち、精神上の障害により事理弁識能力が不十分である者をサポートするもので、家庭裁判所の審判で決定された特定の法律行為に限って、補助人に同意権か代理権のどちらか、あるいはその両方を付与する制度です。

事理弁識能力が不十分である者とは、判断能力が少し欠けている者のことで、大抵のことについての判断能力はあるが、重要な財産の処分を独力で行なうことには不安な者を指します。

平成12年の法改正では、それまでの禁治産・準禁治産の制度は概ね後見・保佐の制度に移行し、補助はそれまでの制度では対象とされていなかった精神上の障害が軽度の者をサポートするものとして新設されました。

補助の対象者は、日常生活を送ることには何ら問題がなく、基本的な判断能力はありますので、補助の申し立ては、本人が申し立てるか、本人以外の者が申し立てる場合には本人の同意が必要です。本人以外に申し立てできるのは、配偶者、四親等以内(従兄弟などまで)の親族、任意後見人、検察官などです。申し立てる者がおらず、特に必要ある場合には市町村長も行なえます。

補助開始の審判の申し立ては、本人の住所地の家庭裁判所に行ないます。補助開始の審判の申し立てとともに、同意権付与の審判または代理権付与の審判のどちらか、あるいは両方を申し立てます。家庭裁判所は申し立てに基づいて、補助を開始するかどうかを判断します。

後見や保佐の場合は原則として医師の鑑定が必要ですが、補助の場合は必ずしも医師の鑑定は必要ではありません。審判によって補助の必要性を認めれば、家庭裁判所が補助人を選任します。補助が開始されると、法律上本人を被補助人と呼びます。

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同意権付与の審判

精神上の障害により事理弁識能力が不十分である者をサポートするために、被補助人(本人)が特定の法律行為をする場合には補助人の同意が必要であると決定する手続きです。

本人ないし配偶者、四親等以内の親族、後見人、検察官、市町村長などが家庭裁判所に申し立てます。本人以外の者が申し立てる場合には、その内容や範囲も含めて本人の同意が必要です。同意権付与の審判を経て、補助人に同意権が付与されます。

補助の制度では、同意権付与の審判または代理権付与の審判のどちらかを申し立てていればもう一方は申し立てる必要はありません(両方申し立てても構いません)。同意権付与の審判は、本人が補助人に特定の法律行為についての同意権を付与することを望んでいる場合にのみ申し立てます。

同意権付与の審判では、民法第十三条で保佐の場合に同意が必要とされている以下の行為の中から、その一部を選択して申し立てます。

一 元本を領収し、又は利用すること。

ニ 借財又は保証をすること。

三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。

四 訴訟行為をすること。

五 贈与、和解又は仲裁合意をすること。

六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。

七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。

八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。

九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。

※民法第六百二条に定める期間(山林10年、土地5年、建物3年、動産6ヶ月)

全部ではなく一部というのは、補助が保佐より軽度な者を対象にしているからです。もし全部の項目について同意権の付与が必要であるならば、補助ではなく保佐開始の審判を申し立てることになります。

補助人に同意権が付与された法律行為については、取消権も付与されます。これにより、被補助人(本人)が補助人の同意または許可を得ないで単独で行なった法律行為は取り消すことができます(補助人が問題がないと判断すれば、取り消さずに追認することもできます)。補助人だけではなく、被補助人本人も取り消せます。

なお、同意権付与の審判では補助人に代理権は付与されませんので、本人が補助人に特定の法律行為についての代理権を付与することを望む場合は、別に代理権付与の審判を申し立てる必要があります。

同意権付与の審判は、「補助人の同意を要する旨の審判」とも言います。

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代理権付与の審判

精神上の障害により事理弁識能力が不十分である者をサポートするために、特定の法律行為に限って補助人に代理権を付与する手続きです。

本人、配偶者、四親等以内の親族、後見人、検察官、市町村長などが家庭裁判所に申し立てます。本人以外の者が申し立てる場合には、その内容や範囲も含めて本人の同意が必要です。代理権付与の審判を経て、補助人に代理権が付与されます。

補助の制度では、同意権付与の審判または代理権付与の審判のどちらかを申し立てていればもう一方は申し立てる必要はありません(両方申し立てても構いません)。代理権付与の審判は、本人が補助人に特定の法律行為についての代理権を付与することを望んでいる場合にのみ申し立てます。

代理権の対象となる法律行為は、当事者が必要に応じて申し立てるもので、個々の事案によって内容や範囲が異なります。申し立てに応じて、個別具体的に審判で決定されます。

なお、代理権付与の審判では補助人に同意権(取消権)は付与されませんので、本人が補助人に特定の法律行為についての同意権(取消権)を付与することを望む場合は、別に同意権付与の審判を申し立てる必要があります。

代理権付与の審判は、「補助人に代理権を付与する旨の審判」とも言います。

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補助人

家庭裁判所は、補助開始の審判で補助の必要性を認めれば、補助人を選任します。選任に当たっては、本人の状態や財産状況、本人の意見、本人との利害関係などが考慮されます。補助人は複数選任することや、法人を選任することもできます。

補助人には、特定の法律行為についての同意権(取消権)あるいは代理権(財産管理権)が与えられます。両方が認められる場合もあります。同意権と代理権の内容は、家庭裁判所が、本人の同意のもと、同意権付与の審判もしくは代理権付与の審判により決定します。

補助人は補助事務について家庭裁判所に定期的に報告する義務があります。補助人は、補助の事務を行なうに当たって、本人(被補助人)の意志を尊重し、被補助人の心身の状態および生活の状況に配慮する身上配慮義務を負うものとされています。ただし、補助人の職務は法律行為に関するものに限られており、実際に被補助人の食事の世話や介護を行なうことは職務に含まれていません。身上配慮義務の内容は、本人の生活や医療・介護・福祉の状況を考慮して、たとえば介護サービスとの契約など必要な法律行為を行なうことです。

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保佐

保佐とは、法定後見制度の三種類のうち、精神上の障害により事理弁識能力が著しく不十分である者をサポートする制度で、家庭裁判所の審判により、保佐人に民法第十三条で規定されている法律行為に関する同意権を付与します。

事理弁識能力が著しく不十分である者とは、判断能力がかなり欠けている者のことで、日常生活において簡単な取引き等は行なえても、重要な財産の処分を独力で行なうことには助けが必要な者を指します。

保佐開始の審判の申し立ては、本人の住所地の家庭裁判所に行ないます。申し立ては、本人の他、配偶者、四親等以内(従兄弟などまで)の親族、任意後見人、検察官などが行なえます。申し立てる者がおらず、特に必要ある場合には市町村長も行なえます。審判によって保佐の必要性を認めれば、家庭裁判所が保佐人を選任します。保佐の審判には、原則として医師の鑑定が必要です。保佐が開始されると、法律上本人を被保佐人と呼びます。

被保佐人は原則として単独で法律行為を行なえます。ただし、民法第十三条で規定されている以下の行為については単独で行なうことはできず、保佐人の同意が必要とされています。

一 元本を領収し、又は利用すること。

ニ 借財又は保証をすること。

三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。

四 訴訟行為をすること。

五 贈与、和解又は仲裁合意をすること。

六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。

七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。

八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。

九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。

※第六百二条に定める期間(山林10年、土地5年、建物3年、動産6ヶ月)

保佐人に同意権が付与された法律行為については、取消権も付与されます。これにより、被保佐人(本人)が保佐人の同意または許可を得ないで単独で行なった法律行為は取り消すことができます(保佐人が問題がないと判断すれば、取り消さずに追認することもできます)。保佐人だけではなく、被保佐人本人も取り消せます。

同意権の範囲を拡張する審判および代理権付与の審判を経て、同意が必要な法律行為の範囲を拡大すること、あるいは保佐人に代理権を付与することもできます。

保佐と準禁治産との相違点

保佐の制度は、平成12年の法改正によりそれまでの準禁治産の制度から移行したものですが、用語が改められただけではなく、内容についても重要な変更がなされています。以下に代表的なものを挙げます。

1、自己決定権尊重の観点から、日用品の購入その他日常生活に関する行為が、取消権の対象から明確に除外されました。

2、配偶者がいる場合は配偶者が当然に保佐人になるとされていて、配偶者がいない場合にのみ家庭裁判所が保佐人を選任するとなっていましたが、個々の事案において最も相応しい者を家庭裁判所が保佐人に選任することになりました。

3、代理権付与の審判を経て、保佐人にも代理権が付与できることになり、それに伴ない、保佐監督人の制度が新設されました。

4、浪費者が対象から外され、精神上の障害により事理弁識能力が著しく不十分である者のみをサポートする制度になりました。

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保佐人

家庭裁判所は、保佐開始の審判で保佐の必要性を認めれば、保佐人を選任します。選任に当たっては、本人の状態や財産状況、本人の意見、本人との利害関係などが考慮されます。保佐人は複数選任することや、法人を選任することもできます。

保佐人には、民法第十三条で規定されている法律行為についての同意権(取消権)が認められます。家庭裁判所は、本人の同意があれば、同意権の範囲を拡張する審判および代理権付与の審判を経て、同意が必要な法律行為の範囲を拡大すること、あるいは保佐人に代理権を付与することもできます。

保佐人は保佐事務について家庭裁判所に定期的に報告する必要があります。保佐人は、保佐の事務を行なうに当たって、本人(被保佐人)の意志を尊重し、被補助人の心身の状態および生活の状況に配慮する身上配慮義務を負うものとされています。ただし、保佐人の職務は法律行為に関するものに限られており、実際に被保佐人の食事の世話や介護を行なうことは職務に含まれていません。身上配慮義務の内容は、本人の生活や医療・介護・福祉の状況を考慮して、たとえば介護サービスとの契約など必要な法律行為を行なうことです。

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保佐監督人・補助監督人

保佐人や補助人が適正に職務を行なっているか、権限を濫用していないかについて監督します。保佐監督人や補助監督人は必ず選任されるものではありませんが、保佐人や補助人には代理権が付与される場合があり、通常の任意代理と異なり判断能力を欠く本人がチェックできないので、家庭裁判所の職権もしくは本人や親族などの申し立てによって選任されます。保佐監督人・補助監督人は複数選任することや、法人を選任することもできます。

保佐人や補助人が病気などの理由でその事務を行なうことができず、本人の保護のために緊急の必要性がある場合には、保佐監督人や補助監督人が保佐人・補助人に代わって必要な法律行為をすることができます。

売買契約や遺産分割など、保佐人や補助人と本人との間で利益が相反する場合があります。そのような場合には、保佐人や補助人が家庭裁判所に臨時保佐人・臨時補助人の選任を申し立てて、選任された臨時保佐人・臨時補助人が本人を代理して保佐人や補助人と取引き等を行ないます。保佐監督人・補助監督人が選任されている場合は、臨時保佐人・臨時補助人を選任するまでもなく保佐監督人や補助監督人が本人を代理します。

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後見

後見とは、法定後見制度の三種類のうち、精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況にある者をサポートする制度で、家庭裁判所の審判により、成年後見人に法律行為に関する広範な代理権と取消権を付与します。

事理弁識能力を欠く常況にある者とは、日常生活において常に判断能力を欠いた状態にあり、意思能力がない者のことです。一時的に本心(普通の状態)に戻る場合があっても、ほとんどの時間において判断能力がない状態にあれば、事理弁識能力を欠く常況にあると言えます。事理弁識能力を欠く常況にある者は、法律行為を独力で行なうことはできないので、法律行為全般にわたって助けが必要です。

後見開始の審判の申し立ては、本人の住所地の家庭裁判所に行ないます。申し立ては、本人の他、配偶者、四親等以内(従兄弟などまで)の親族、任意後見人、検察官が行なえます。申し立てる者がおらず、特に必要ある場合には市町村長も行なえます。審判によって後見の必要性を認めれば、家庭裁判所が成年後見人を選任します。後見の審判には、原則として医師の鑑定が必要です。後見が開始されると、法律上本人を成年被後見人と呼びます。

保佐や補助の場合とは異なり、後見は代理権付与の審判等を申し立てる必要はなく、当然に成年後見人に代理権と取消権が付与されます。同意権については、意思能力を欠く成年被後見人は同意したとしても適正に法律行為を行なえると期待できないことから問題とならず、付与もされません。

成年被後見人は単独で法律行為を行なえませんので、成年後見人が代理します。成年被後見人が行なった法律行為は取り消すことができます(成年後見人が問題がないと判断すれば、取り消さずに追認することもできます)。成年後見人だけではなく、成年被後見人本人も取り消せます。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為は、自己決定権尊重とノーマライゼイションの観点から、取消権の対象から除外されており、取り消すことはできません。取り消しできない行為の範囲は、本人の資産や収入、社会的地位によって個別に判断されます。

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成年後見人

家庭裁判所は、後見開始の審判で後見の必要性を認めれば、成年後見人を選任します。後見人ではなく成年後見人と言うのは、未成年者で両親など親権を行なう者がない場合の後見人(未成年後見人)と区別するためです。成年後見人の選任に当たっては、本人の状態や財産状況、本人の意見、本人との利害関係などが考慮されます。成年後見人は複数選任することや、法人を選任することもできます。

成年後見人には、本人に代わって法律行為を行なう代理権と、本人が判断能力が不十分な状態で行なった法律行為を取り消す取消権が認められます。成年被後見人は原則として単独で法律行為を行なえず、成年後見人が代理します。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為は、自己決定権尊重とノーマライゼイションの観点から、取消権の対象から除外されており、取り消すことはできません。

成年後見人は、後見事務について家庭裁判所に定期的に報告する義務があります。定期的な報告以外に、本人の居住用不動産の売却や担保権設定など重要な行為については、家庭裁判所の許可が必要です。

成年後見人は、後見の事務を行なうに当たり、本人(成年被後見人)の意志を尊重し、成年被後見人の心身の状態および生活の状況に配慮する身上配慮義務を負うものとされています。ただし、成年後見人の職務は法律行為に関するものに限られており、実際に成年被後見人の食事の世話や介護を行なうことは含まれていません。身上配慮義務の内容は、本人の生活や医療・介護・福祉の状況を考慮して、たとえば介護サービスとの契約など必要な法律行為を行なうことです。

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成年後見監督人

成年後見人が適正に職務を行なっているか、権限を濫用していないかについて監督します。成年後見監督人は必ず選任されるものではありませんが、成年後見人には強い権限が付与されており、通常の任意代理と異なり判断能力を欠く本人がチェックできないので、家庭裁判所の職権もしくは本人や親族などからの申し立てによって選任されます。成年後見監督人は複数選任することや、法人を選任することもできます。

成年後見人が病気などの理由でその事務を行なえず、本人の保護のために緊急の必要性がある場合は、成年後見監督人が成年後見人に代わって必要な法律行為をすることができます。

売買契約や遺産分割など、成年後見人と本人との間で利益が相反する場合があります。そのような場合には、成年後見人が家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てて、選任された特別代理人が本人を代理して成年後見人と取引き等を行ないます。成年後見監督人が選任されている場合は、特別代理人を選任するまでもなく成年後見監督人が本人を代理します。

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任意後見契約

任意後見契約とは、本人が元気で充分な判断能力がある間に代理人(任意後見人)を選んでおき、将来、判断能力が不十分な状態になった場合には、任意後見人に生活や財産管理についての代理権を与えるという契約を結んでおくことです。任意後見契約を締結しておくと、本人の判断能力が不十分な状態になった時は、法定後見ではなく、原則として任意後見契約に基づく任意後見が開始されます。

任意後見契約は、本人に意思能力がある段階でなければ結べません。精神上の障害が軽度の補助に該当する状態でも、意思能力があれば契約することができます。しかし、契約の時点ですでに判断能力が不十分であれば、任意後見契約は結べず、法定後見制度を利用することになります。ただし、本人の判断能力が不十分でも、本人が未成年の場合は親権者が本人を代理して任意後見契約を締結することにより、成人後に任意後見制度を利用することが可能です。

任意後見契約は、通常の契約とは異なり、当事者の意思のみで契約することはできません。契約が適法で有効なものであることを担保するために公証人の関与が必要とされていて、任意後見契約を結ぶためには公証人が本人と直接に会って、本人の意思や契約の内容、本人に意思能力があることを確認し、必ず公正証書によって作成するものとされています。契約が成立すれば、公証人は東京法務局の後見登録課に任意後見の登記の嘱託を行ない、契約の内容が登記されます。

任意後見契約は、本人が元気で判断能力が正常な間は効力が生じません。本人の判断能力が衰えて後見の必要が生じた時に家庭裁判所に任意後見監督人選任の審判を申し立て、任意後見監督人が選任されて初めて契約が発効します。法定後見とは異なり、任意後見監督人の選任は必須条件です。

本人と任意後見契約を結んでいる受任者は、任意後見監督人選任前は任意後見受任者、選任後は任意後見人と言います。

任意後見監督人の選任の審判は、本人、配偶者、四親等以内の親族、任意後見受任者が、本人の住所地の家庭裁判所に申し立てます。本人以外の者が申し立てる場合には本人の同意が必要です。法定後見とは異なり、検察官・市町村長は申し立てできません。審判によって任意後見の必要性を認めれば、家庭裁判所が任意後見監督人を選任します。

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将来型・移行型・即効型

任意後見契約は、将来型、移行型、即効型の3種類に分類できます。

将来型(本来型)

将来型は、本人が元気で充分な判断能力がある間に任意後見契約を結んでおき、判断能力が不十分になった時点で任意後見監督人選任の審判を申し立て、任意後見を開始するものです。将来に備えて任意後見契約を結んでおくものなので、将来型と言います。任意後見契約の基本形なので、本来型とも言います。

移行型

移行型は、任意後見契約と同時に財産管理契約を結び、任意後見契約が発効するまでの間は任意代理人として任意後見受任者に財産管理等について委任するものです。本人の判断能力が不十分になれば、任意後見監督人選任の審判を申し立て、財産管理契約から任意後見契約に移行します。

即効型

即効型は、事理弁識能力が不十分な者(法定後見の補助に該当する程度の者)でも意思能力があれば任意後見契約は結べるので、本人が任意後見契約を結び、契約後直ちに任意後見監督人選任の審判を申し立て、任意後見を開始するものです。契約の時点で後見が必要な者が行なう契約なので、即効型と言います。

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財産管理契約

財産管理契約とは、代理人に財産の管理を委任する民法上の任意代理契約です。任意後見では任意後見契約を結んでも本人に充分な判断能力がある場合は契約が発効しませんので、契約発効までの期間についても任意後見受任者に財産管理等について委任したい場合は、任意後見契約とは別に財産管理契約を結びます。任意後見における財産管理契約は、判断能力が充分にあっても高齢や障害などの理由で将来の財産管理に不安がある場合に契約されます。見守り契約と呼ぶこともあります。

契約の内容は当事者のニーズに応じて決定しますが、不動産の管理や処分、家賃や公共料金の支払い、医療や介護の手続きなどについて任意後見受任者に委任する契約、またそれらを自分で行なう場合に任意後見受任者に相談する、または立ち会ってもらう契約などが一般的なものです。

その後、本人の判断能力が不十分になった場合は、任意後見監督人選任の審判を申し立て、財産管理契約を終了し、任意後見契約に移行します。

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任意後見人

任意後見契約において、本人の判断能力が不十分になった場合の後見事務を委任されている者を任意後見人と言います。本人の判断能力に問題が生じていない、任意後見契約が発効するまでの期間は、任意後見受任者と言います。任意後見人は複数選任することや、法人を選任することもできます。

その後、本人の判断能力が不十分になり、任意後見監督人選任の審判で家庭裁判所が任意後見の必要性を認めて任意後見監督人を選任すれば、任意後見契約が発効し、本人が十分な判断能力がある間に決めておいた法律行為についての代理権が任意後見人に付与されます。

任意後見人は、後見の事務を行なうに当たり、本人の意志を尊重し、本人の心身の状態および生活の状況に配慮する身上配慮義務を負うものとされています。ただし、任意後見人の職務は法律行為に関するものに限られており、実際に本人の食事の世話や介護を行なうことは含まれていません。身上配慮義務の内容は、本人の生活や医療・介護・福祉の状況を考慮して、たとえば介護サービスとの契約など必要な法律行為を行なうことです。

任意後見契約では任意後見人に代理権が付与されますが、本人も法律上単独で契約することが可能とされていて、任意後見人に同意権や取消権は付与されていません。そのため、制限行為能力者の行為として取り消し可能な法定後見とは異なり、任意後見契約において本人が行なった契約などの法律行為を判断能力が不十分として取り消すためには、裁判を起こす必要があります。

本人の行為によってしばしばトラブルが生じ、同意権や取消権のない任意後見では対応に限界があると判断すれば、家庭裁判所に法定後見の開始を申し立て、任意後見から同意権や取消権の行使が可能な法定後見に移行する必要があります。法定後見が開始された段階で、任意後見は終了します。

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任意後見監督人

任意後見契約では、任意後見監督人の選任が契約発効の条件(停止条件)になっています。家庭裁判所は、任意後見監督人選任の審判で任意後見の必要性を認めれば、任意後見監督人を選任します。任意後見監督人は複数選任することや、法人を選任することもできます。

任意後見監督人は、任意後見人の事務を監督するため、任意後見人から後見事務の報告を受け、任意後見人の事務や本人の財産の状況について調査することができます。また、任意後見人の事務に関して家庭裁判所に定期的に報告する義務があります。

任意後見人が病気などの理由でその事務を行なえず、本人の保護のために緊急の必要性がある場合は、任意後見監督人が任意後見人に代わって必要な法律行為をすることができます。

売買契約や遺産分割など、任意後見人と本人との間で利益が相反する場合には、任意後見監督人が本人を代理して任意後見人と取引き等を行ないます。

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成年後見登記

判断能力が不十分である者を保護するとともに、適正に情報を開示することで取引の安全を確保するために、成年後見人等の権限や任意後見契約の内容などを登記する制度です。

成年後見登記は、東京法務局後見登録課に行ない、ここが全国の成年後見登記を取り扱っています。後見開始の審判、保佐開始の審判、補助開始の審判、任意後見監督人選任の審判が行なわれた時は裁判所書記官の嘱託により登記され、任意後見契約が結ばれた時は公証人の嘱託により登記されます。また、変更や終了についても登記されます。

禁治産・準禁治産の制度では、その内容は戸籍に記載されていましたが、人権上の問題もあり、成年後見制度では登記制度に移行しました。

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後見登記等ファイル

成年後見登記では、成年後見人等の権限や任意後見契約の内容は後見登記等ファイルに記録されます。取引き等に当たって必要な場合は、登記事項証明書、または自分が成年後見を受けていないことを証明する、登記されていないことの証明書の交付が受けられます。登記事項証明書の交付は、東京法務局だけではなく、各法務局・地方法務局で取り扱っています。

登記事項証明書

後見登記等ファイルに記録されている成年後見登記の内容を証明する書類です。法定後見の種類、代理権や同意権の範囲、本人と成年後見人等の住所・氏名などが記載されています。

登記事項証明書の交付を請求できるのは、プライバシーの保護から限られた者だけで、本人と成年後見人等以外には、配偶者、四親等以内の親族、相続人などです。職務上必要とする場合には国または地方公共団体の職員も請求できます。

成年被後見人等の取引相手は、直接には法務局から登記事項証明書の交付が受けられませんので、取引きに当たり必要な時は、成年後見人等に提出を求めることになります。

交付手数料は、窓口での申請の場合、1通につき1000円。オンライン申請の場合、電子的な証明書は700円、紙の証明書の郵送を求める場合は750円です。

登記されていないことの証明書

成年被後見人等の登記がされていないことを証明する書類です。登録や就任に当たって提出が必要となる場合があります。証明書を提示することで、自分が成年後見などを受けていないことを証明できます。

交付手数料は、窓口での申請の場合、1通につき500円。オンライン申請の場合、電子的な証明書は400円、紙の証明書の郵送を求める場合は450円です。

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成年後見制度利用支援事業

成年後見制度の利用が必要でも、身寄りがなく費用を負担できない高齢者や障害者の保護のために、市町村長が成年後見等の審判の申立てを行ない、利用にかかる費用の全部または一部の助成を行なうものです。厚生労働省の介護予防・地域支え合い事業のメニューの一つとして行なわれているものですが、市町村によって実施の有無や内容に差があります。

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地域福祉権利擁護事業

一定の判断能力はあるが十分ではない高齢者等の自立を支援する制度です。平成11年10月から社会福祉協議会が実施しています。

利用者と社会福祉協議会が共同で作成した支援計画に基づいて、専門員・生活支援員が、福祉サービス利用支援・金銭管理・書類等の預かりサービスを行ないます。利用には1時間当たり1000円と交通費(1km当たり20円)がかかります。生活保護を受けている世帯については無料です。

判断能力の程度によっては地域福祉権利擁護事業は利用できませんので、その場合は成年後見制度を利用することになります。

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支援費制度

平成15年4月、これまで行政処分として画一的に行なわれてきた措置制度から、自己決定権を尊重した支援費制度に移行しました。これによって、障害者自身がサービスを選択し、契約をしてサービスを利用することができるようになりました。

障害者は、希望するサービスについて指定事業者・施設の中から利用したい施設・事業者を選択して直接申し込み、市町村に支援費支給の申請を行ないます。市町村による支援費支給の決定がなされると、障害者に受給者証が交付され、サービスが受けられるようになります。利用者は支援費支給決定時に決められた利用者負担をサービスを提供する事業者・施設に支払い、サービスを提供する事業者・施設は利用者に代わって市町村に支援費の支払いを請求します。

障害者が成年後見制度を利用している場合は、成年後見人等が代理し、または保佐人等の同意を得て、事業者や施設と契約し、支援費の支給を受けます。

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