作品例

原の町の家

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原の町の家HARANOMACHI NO IE

本住宅は30代の夫婦と2人の幼い子供のための住宅である。
敷地は秋田市中心部の文教地区ともいえる閑静な住宅地にあり、同一敷地には親の住む住宅がある。
建築にあたり法的に可分された今回の住宅の敷地部分は、いままで既存住宅の住人を長年にわたり多くの美しい樹木により四季折々にわたって楽しませていた庭園である。
この庭園に本建築は計画された。

設計にあたって最も考慮したことは、敷地北側に東西に長く建っている親の住む既存住宅をいかに今まで同様視覚的にも外部環境的にも維持しつつ保全できるかということが設計者として最も考慮した事項であった。
その結果このたび計画された住宅は南北に長い矩形の平面で計画された。敷地を読みながらプランニングをしていく過程で本敷地の外部空間における魅力的な方位は東側にあることに気づいたのである。南側に位置する幅員16mの幹線道路は本建築の計画にあたってはけっして気持ちが強く魅かれるものではなかった。

考案された建築は東側に雁木づくりともいえる軒下空間を計画し、さらに空間的に連結した南側にも内部空間と外部空間の『あわい』ともいえる開放的なアウトリビングを設けた。
南側に勾配をとる大屋根の軒先は大通りに面してきわめて低くなるように計画し、通過交通や人通りから視覚的にある程度遮蔽された抑制的なファサードとした。
しかし、南側リビングから見える外部の光景は非常に開放的になるように外構計画との有機的連動によって静謐な空間の獲得に成功している。

また、内外の仕上はすべて職人の手の痕跡が残る仕上とし、緻密なディテールの裏付けによって実直な骨格と仕上がりに馥郁たる気配感が感じられる材料を選択した。

このようにして出来上がったこの住宅はこれから先長い歳月においてそこに住む住人と共に美しく深みを増しながら建築本来の役目を果たしていくことであろう。

現代の日本の住宅建築の失っている多くの建築的な空間の豊饒さをこの住宅は内部と外部環境を取り込んだ有機的な連結において生き生きとして極めてシンプルな空間構成の獲得に成功しているのではないかと思います。
けっして奇を衒うことのないこの住宅の内外の空間構成が放つ清冽な気配感が地方都市のひとつである秋田市の街並みに秩序と規範を与えられることができればそれは設計者の最も望むところであります。

2019年12月  伊嶋洋文地域環境建築設計室
伊嶋洋文
設計概要
所在地秋田県秋田市保戸野原の町
竣工年月日2019年12月
構造木造在来軸組工法2階建て
建築面積133.04m2
1階床面積90.81m2
2階床面積61.27m2
延床面積152.08m2
仕様仕上
屋根高耐候性ガルバリウム鋼板横葺き
外壁デュッセル左官工法櫛引仕上
軒天シポロック吹付工法
外部開口部高耐候性PVCサッシ
外部土間コンクリートビシャン仕上
犬走男鹿石敷き込み及び川砂利敷き均し