国鉄・JRの台車

ホームへ ホームへ 次へ 前へ

貨車台車編(その5)

3-3 TR207系 2006/3/20加筆修正
LPガスタンク車用台車として鋳鋼製側梁のTR95が、さらにTR63の後継として鋼板溶接組立側梁のTR95Aが試作されました。
ともに弓形の側梁を持ち、走行安定性を確保するため左右の側梁をつなぎ梁で結合し、蛇行動を抑えるため大径心皿を採用しました。
左右動を抑えるため、緩衝ゴムを軸箱内の車軸端に設けました。
TR95Aは高速での蛇行動を抑えるため、大径心皿とボルスタアンカを採用しました。
TR95は当時LPガスタンク車に使用していたTR41台車の走行性が問題となっていたため、それを改善する目的で試作されました。
一方、TR95Aはブレーキ装置に問題を抱え改良を続けていたTR63の改良とコストダウンを目的に試作されました。
試作台車の試験結果を元にTR95Aが量産されTR207となり、TR95は試作にとどまり、LPガスタンク車用台車は、TR207の仕様を変更してTR207Bとなりました。


台車形式 側 梁 輪軸
種別
軸受
形式
製造
初年
使用形式 記      事
川車601 鋼板溶接 12t短 平軸受 S35 タキ8400 最高運転速度 75km/h
川車601A 鋼板溶接 12t短 平軸受 S37 タキ8400 最高運転速度 75km/h
川車601B 鋼板溶接 12t短 平軸受 S39 タキ8400 最高運転速度 75km/h
TR95 鋳鋼 12t短 平軸受 S40 タサ5700 試作、
TR95A 鋼板プレス・溶接組立 12t短 平軸受 S41 ホキ2200 試作、大径心皿、ボルスタアンカ付
TR95 川車601
〔画像を表示もしくは保存〕すると大きく表示できます。
TR207 2006/1/28加筆修正
この台車の側枠はプレス鋼板の溶接組立てで、ほかに見ることができない国鉄独特の構造です。
この構造は最新のJR貨物のFT系台車まで引き継がれています。
TR63に比べ部品点数の減少、摺動部分の廃止、片押しブレーキの採用など製作、保守面で大幅な改善を図っています。
この台車のルーツは川崎車両がタキ8400形に使用した川車601形と思われます。
川車601は鋼板溶接組立ての側枠をもち、軸箱、車輪、輪軸、プレーキ装置などがTR41と同じで、保守も共通にしています。
この川車601形にもプロトタイプとなったと思える台車が米国にあります。
1930年代、旅客急行列車に併結する有蓋車と冷蔵車用にASF(American Steel Foundry)社が開発したSimplex Truckです。
この台車は弓形の鋳鋼側枠と枕ばねにコイルばねと板ばねを持った構造をしています。
スリーピース台車に比べ、走行性能は優れていましたが、製造コストが高く、保守の手間がかかったため普及しませんでした。
その後、1940年代にBuckeye Steel Castings社が同じ構造をもったAll Service Truckをつくりました。
TR95の開発と同じ時期に中国でも同じ構造もった台車が現れています。
1960年、中華人民共和国の斉斉哈尓(チチハル)車輌工廠と鉄道科学研究院、四方車輌研究所、大連鉄道学院が共同で設計した60t曲梁転向架(台車)です。
その後転9型転向架(台車)で量産されています。
TR207系は両側梁をつなぎ梁で結合しているところがこれら海外の同じ構造をもった台車と大きく違います。
ただ中国はつなぎ梁がなくとも最高運転速度が100km/hです。標準軌と狭軌の差が現れているのかもしれません

ホキ2200に使用されていたTR207、207Aは保守の簡略化を目的に平軸受を密閉コロ軸受に変更し、TR211に改造されました。

Simplex Truck US Patent No, 2061649より
Buckeye all-service freight car Truck
Car Builders Cyclopedia 1943 より
60t曲梁転向架(台車)
国産鉄路貨車 下巻 中国鉄道出版社 1997より
TR211 2006/1/10加筆修正
TR207の平軸受を保守管理の簡易化を目的にくら受け式の密閉ころ軸受に変更したものです。
TR216 2006/3/20追加
レサ5000向けにTR211を元に開発されました。冷蔵室が2室構造となっているため、前後の荷重が異なることがあり、走行安定性を確保するため、耐摩レジン製の全側受け支持としました。またオイルダンパを斜めに取り付け、上下動だけでなく左右動の抑制を担うようにしました。
その後オイルダンパの取り付け角度と、枕ばねを変更したTR216Aがワキ5000、コキ5500に、高圧液化ガスタンク車用として枕ばねを変更したTR216Bが作られました。
TR220 2006/3/20追加
TR211のブレーキを鋳鉄制輪子にするため、両抱きブレーキにしました。当時レジンシューで問題があったようで鋳鉄制輪子と比較検討するために試作されたようです。85km/hで走行する車輌では鋳鉄制輪子を片押しのままで使用すると、磨耗が激しく保守に問題があるため、両抱きにしたものと思われます。
戦前のワキ1形式のTR24がこれと同じ理由で片押式から、両抱き式に変更しています。
台車形式 輪軸種別 軸受形式 制輪子 製造
初年
主な使用形式 記      事
TR207 12t短平 平軸受 合成 S41 ホキ2200 TR95Aを量産化。オイルダンパ追加
TR207A 12t短平 平軸受 合成 S41 ホキ2200 TR207のオイルダンパ変更
TR207B 12t短平 平軸受 鋳鉄 S41 タキ25000、タキ18600 TR207のまくらばね・オイルダンパ変更
TR211 12t短コロ JT10 合成 S42 ホキ2200 TR207AをJT10化、側梁変更
TR211A 12t短コロ JT10 合成 S44 コキ5500 TR211のまくらばね変更
TR211B 12t短コロ JT10 合成 S46 タキ5450 TR211のまくらばね・オイルダンパ変更
TR211C 12t短コロ JT10 合成 S48 タム9600 TR211のまくらばね・オイルダンパ変更
TR211D 12t短コロ JT10 合成 S48 トキ80000 TR211のまくらばね・オイルダンパ変更
TR211E 12t短コロ JT10 合成 S50 タム9600 TR211のまくらばね・オイルダンパ変更
TR211F 12t短コロ JT10 合成 S50 タキ14700 TR211のまくらばね・オイルダンパ変更
TR216 12t短コロ JT10 合成 S43 レサ5000 TR211を側受支持化、オイルダンパ傾斜取付化。側梁・まくらばり・まくらばね・オイルダンパ変更
TR216A 12t短コロ JT10 合成 S44 ワキ5000、コキ5500 TR216のオイルダンパ取付角度変更、まくらばね変更
TR216B 12t短コロ JT10 合成 S52 タキ5450、タキ25000 TR216のまくらばね変更
TR220 12t短コロ JT10 鋳鉄 S44 ワキ5000 TR211Aの基礎ブレーキを両抱式(鋳鉄制輪子)化。側梁・まくらばり・ブレーキ装置(倍率6→10)変更
TR207B タキ25000形式 TR211 ホキ2200形式
TR211F TR216B
TR220 ワキ5000形式 隅田川
ホームへ ホームへ 次へ 前へ