第8日:ため息交じりの羨望  2004年9月4日(土)
〜模型屋と市電博物館〜

◆鉄道模型三昧
いよいよ最終日である。
今日は、2軸電車の観光電車に乗り、路面電車の保存館を訪れる予定である。
とはいえ、2軸電車の発車時刻は11:30 なので未だ間がある。(参考ページ )
そこで、昨日H1氏が行った、「クラインバーン」(公式サイト:http://www.kleinbahn.com/ 和訳すると軽便鉄道)へ行こうということになる。

ユースの前から路面電車に乗りショッテンリングへ。
ここから1電停分ringを反時計回りに歩いたベルゼ(Böse)に、クラインバーンの店がある。
ちなみに、ここの製品は直営店以外では売っていない。
クラインバーン●クラインバーンのお店と路面電車

店の廻りのディスプレイに収められた車輌を見てみると、なんとも言えない素朴な雰囲気である。
大型車の場合、これがマイナスに作用している感じだが、小型車の場合は逆。
オーストリアのカワイモデルといったところか。

値段も魅力的で、プラ製の2軸客車が日本円に換算して1000円以下なのである。
結局いろいろ考えた結果、スイス・BBC製のロッド式2軸電機と2軸客車2両を購入した。
この選択は、西武沿線で育ったものとして、BBCの電機は馴染みの車輌ということもある。
結果、70ユーロ(約9450円)でお釣りがくる程度だった。

帰国後、線路を借りて走らせたところ、重いボギー客車を引いてよく走ること。
これなら、NではなくHOが選択されるのも無理はない。
なお、ただ1点注意したいのが、このクラインバーンのモデル、モーターの極性が逆になっていること。
つまり、他の会社の製品と一緒に走らせると、逆走してしまいます・・・。

続いて、フツーの模型屋さんへ。
昨日、王宮から出て来るところを見た小形の都心循環バスで移動。
ちなみに日曜日は殆どの系統が運休してしまい、今日はこの系統だけである。
車内は日本の「チョロQ」タイプであるが、幅は広く、座席レイアウトがよく考えられていて、
その小ささはあまり感じない。

シュテファン寺院近くの模型屋にお邪魔する。
なにに驚いたかといえば、車輌よりもストラクチャーの充実ぶりである。
特にTTゲージ(1:120)用も豊富に取り揃えられているのが印象的であった。
ちなみに、欧州のストラクチュアは値段が高めの印象があるが、それはここオーストリアでも変わらない。

その傍らにあった雑誌は、なんとウィーン市電専門誌。
高知の土佐電鉄が購入したことも掲載されていた。
現状を知った彼らの反応はいかに?

◆無情の観光電車
さて、そろそろ11:30である。始発のカールス広場へ向かう。
既に人が集まっている。
カールス広場には3本の発着線は3線あるが
普段は1線のみ使用、残り2線がこうした時に使用されているようである。

そこへ、件の観光電車がやってきた。
2両編成である。しかし、団体専用車。
その隣に漸く、単行の2軸電車が入線。こちらが、その観光電車である。
所謂「動態保存車」よりもランクは一つ上で、普段から使い倒すことを前程にしている。
したがって、足回りなどは改造を受けているし、車内には、なんとLEDによる案内板まで設置されている。
保存電車
●左が観光電車、右が団体専用電車

「おお、2軸電車の並びが見られるなんてラッキー」と思っていたのはここまでだった。
おばちゃんの集団が乗ってしまい、他の人が乗れなくなってしまったのである。
着席前程ゆえに、立席は無理。次の13:30まで待てという。H1氏が交渉したものの埒があかず、
結局、電車は行ってしまった。

唖然としたものの、まあ、フランクフルトとベルリンで乗っているからいいや・・・ということで、あまり未練はない。
H1氏はなんとも寂しそうだったが。

◆溜息の出る大きさ
仕方がないので、さっさと保存館へ行く。
保存館は中心部から南東に向かったシュラクトハウス小路(Schlachthaus gasse:意味は屠殺場)にある。
地下鉄U3号線も通っているが、ここはやはり路面電車で向かいたい。
カールス広場の隣、シュヴァルツェンブルク広場(Schwarzenburg Platz)から71系統の電車に乗り、
セントマークス(St.Marx)で直交する18系統に乗り換えた。
その終点がシュラハトハウス小路で、スーパーなどのある1街区をぐるっと回るかたちで
線路が引かれている。
シュラハトハウス小路

ここから営業線以外の線路を辿ると、ウィーン市電博物館(公式サイト)が見えて来た。
使われなくなった車庫を転用したもので、土日のみ開館している。

さて、ここに保存されている車輌の数であるが、なんと94輌。
これだけで日本の路面電車の規模なら2つくらいは開業できそうである。
保存車数の面でも日本の鉄道系博物館・保存館の類が全て束になっても勝てないほど。
とにかく、こういった環境を支える市民、財政、技術の存在は正直羨ましい。
路面電車博物館
●博物館の車庫は6線が2棟、4線が1棟あり、そのほか未公開の建物が計5線分ある。

さて、これまで何度も工事現場を見させられてきた。
それは、こことて例外ではなかった。
実は、第2次世界大戦後、枢軸国により被害を蒙った地域に対し米国の中古電車が輸出されたことがある。
ここウィーンには、 ニューヨークの電車がやってきて、それが保存されている。

ところが、そこにはブリルの台車があるのみ。
なんと「改修中」とあるではないか。
この車輌がお目当ての一つだったH1氏が、激しくうなだれた。

それでは、保存車輌の画像を幾つか・・・
路面電車博物館

244244 (D型)

1901年 グラーツ車輌製の単車。

20512051(G2型)

1906年 グラーツ車輌製の単車。
1929年に密閉式に改造された。

20512101(G2型)

上の車輌と同型に分類されるも、こちらは特別仕様。
標準塗装の2003も収納されている。

2525(A型)

1944年 フクス車輌(ドイツ・ハイデルベルク)製
いわゆる、KSW(戦時標準車)で
色違いの車両がもう1両いる。

401401(T1型)

1910年製の単車を1954年にローナー社で更新したもの。
アメリカ型電車の影響を受ける

502502(L型)

SGP製の単車
高知に来たのと同型。

43014301(D型)

1957年 Graf & Stift製
ドイツでは沢山の車輌が活躍した籠かき電車
ウィーンでは少数派


2862861(N型)

1925〜27年製造
シュタットバーンの旧型電車。
現在のU2・U6号線には、
このような総括制御の単車が何両も連なって走っていた。

29922992(N1型)

1961年SGP製。
やはりシュタットバーンの電車。

60076007

事業用車輌も多数が保存・展示されている。



・・・これでもほんの一部。
正直、全てを紹介する気力は私にはありません・・・・
この他、馬車鉄道時代の車両、スティームトラム、そしてバス5台が保存されている。

とにかく、保存車輌数を見て回るだけで、あっと言う間に時間が流れてしまった。
最後に、入口近くの売店でディスプレイモデルを購入した。
種類が豊富にあるが、結局デュワグの大型車と2軸の木造単車を購入、動力化ユニットは買わなかった。

ところで、この時になにか横からちょっかいを出してくる兄ちゃんが。
そのヌボーっとした雰囲気といいなんといい、こっちの鉄道マニアであることは間違いない。
ああ、所詮ヲタはどこにいっても変わらないのか・・・・

◆ウィーンの電車

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