第7日:維納脱力観光案内  2004年9月3日(金)
〜ウィーン市内観光〜

◆カツシカシュトラーセ
 言わずと知れた山田洋二監督,渥美清主演のシリーズ映画「男はつらいよ」。通称"寅さん"。
日本全国津々浦々を旅するこのシリーズ、実は、1度だけ海を越えたことがある。
その目的地が、ここウィーン。第41作「寅次郎 心の旅路」(1989年)での話しである。
時のウィーン市長、ツィルク氏が熱烈な寅さんファンだったのがその理由で、本人が出演しているほどである。
余談だが、この時のマドンナは三択の女王。
旅先のどこかで素敵な出逢いが必ずある寅さんは羨ましい。

さて、H1氏曰く、その寅さんの舞台である「葛飾」の名を持つ道が、このウィーンのどこかにあるとのこと。
昨晩のゴタゴタで買った地図で探すと、なんとユースホステルから路面電車で1本で行ける。
これは行かねばなるまい。

どんより、雨の降りそうな曇り空の下、路面電車に乗る。
ドナウ川は川幅が広く、中州にも停留所がある。
やがて、対岸のフロリスドルフ(Floridsdorf:ウィーン市21区) の町へ。ウィーンの北東端にあたるが、街並みは意外に古い感じである。
路面電車が4方向から乗り入れ、ターミナルを形成している。
フロリスドルフ駅前 フロリスドルフ

3電停ほど更に進むと、日本とたいして変わりないような、郊外の道幅の広い幹線道路。
その中央に一段高くなった軌道敷があり、電車が走っていた。
なんとも殺風景な感じである。

そこで電車を降りると、目の前の道路標識には「カツシカシュトラーセ」とあった。
鉄道線の陸橋になっていて、その新しい道路名として振られたらしい。
カツシカシュトラーセ カツシカシュトラーセ

カツシカシュトラーセ

早速、カツシカシュトラーセを歩いてみる。すると・・・

陸橋の下には広大なオーストリア国鉄の電車区と工場が広がっていた。
見渡す限り、ウィーンのSバーンで埋め尽くされている。
そして小さなDLが台車を牽引したり・・見慣れない特急電車もいる。
ウィーンの葛飾は、なんとも鉄ちゃん向けのスポットだったのだ。
フロリスドルフ電車区 フロリスドルフ電車区 フロリスドルフ電車区

陸橋を渡りきると、別の幹線道路との交差点。
残念ながら、この通り名を住所に持つ住居・施設は未だ存在しないようである。
(欧州では、通常玄関口の面している通り名を住所にする)。

なお、ウィーン市21区(フロリスドルフ区)と葛飾区は1987年から、首都の東北部に位置する区同士として姉妹都市提携を結んでいるとのこと。
そして、この通り名は2001年に名づけられた。

◆王宮の高架鉄道
途中、市電の車庫や、1ユーロショップを覗いたりしながら
フロリズドルフ駅に戻ってきた。

ここからは地下鉄U6系統に乗る。
これが、ガイドブックにも載っている「ワーグナーのシュタットバーン」という奴である。
オットー・ワーグナーは19世紀末に活躍した建築家で、ウィーン市内に数々の名建築を遺した。
その一つが、この都市鉄道のインフラなのである。
もともと非電化・蒸気列車で開業したが、低床式のまま電車化され、路面電車スタイルの車輌が何両も連なって走っていた。

現在、そのうち、北西部を走っていた路線は、国鉄に編入され、現在はS45系統の電車が走る。
城南〜城東のドナウ運河沿いの半地下路線は大型の地下鉄規格に改築され、現在はU2系統。
余った城北〜城西の高架区間は、そのままの規格でそれぞれ別の終端へ延長されU6系統になっている。
従って、U6が、最も昔日の面影を残しているといえる。

途中駅で降りてみると、あまりに立派な駅舎や高架に圧倒される。
それでも、施設の多くは単一パターンの繰り返しで、部品点数は多いながら規格化されているようである。
駅 駅 駅
●U6号線 Nussdorf Strasse駅

一方で電車のほうは・・・というと
デュワグカー2車体連接などの5重連というシロモノ。
新型の部分低床車でそろえられている編成は未だしも、
旧型は真中のユニットだけが新車となっている。
制御方式も連接構造も異なり、一種異様な編成だが、これでもきちんと走っている。

従って、交差点ではこんな風景が見られるわけである。
上も下も同じ電車
電車

◆脱力のウィーン観光(1)
一旦ここで解散し、各自の自由行動となった。
とりあえず、観光しないとお話にならないだろう・・・。
ということで、リングへ向かう。

今回の旅、隠れた一つの目標を持っていた。
「欧州でケーキを食べる」
なんとも男らしくない目標であるが、甘党なんだから仕方ない。
それは置いておくとして、ICEの食堂車のザッハトルテは美味いということを聞いていたものの、それができなかったのは1日目に書いた通り。
「ドイツの敵をウィーンで討つ」というわけである。

だからといって、どこが美味い店なのかリサーチしていない。
しかたがないので、中心地にあったケーキ屋(チェーン店?)でチョコレートケーキとコーヒーを飲んで、終りとした。
まあ、日本と大した差はないが、これで目的達成である。

しかし、店を出た時点で、はたと考えてしまった。
今回の旅、私にとって主要目的地はベルリンだった。逆にウィーンは予備知識ゼロの状態。
ウィーンといえば王宮そしてオペラ座なのは知っているが、華やか過ぎるものは拒絶反応を示してしまう、なんとも貧乏性な自分。

結局、有名どころの教会へ行くことにした。
Ringの路面電車に乗って向かったのは、カールス教会。
1737年に完成した、最も有名なバロック式教会である。
ところで、カールス教会の中を見るには4ユーロ(約540円)取られる。ちょっと意外な気もしたが、日本でも大浦天主堂などは300円ほどの拝観料を取られるから、まあ妥当なのかもしれない。
カールス教会 ●カールス教会

ところが、中に入って愕然。
現在、天井のフラスコ画が修復中なのである。
もう何ユーロかお金を払えば、その近くまで登れるそうだが、あんまり高いところが得意ではないのでパス・・。

結局、展示物その他を含めて一回りして終了、である。
さあ、次行ってみよー。
カールス教会 カールス教会
●フラスコ画はダメでしたが、立派な中央の祭壇は感激でした。

◆脱力のウィーン観光(2)
じゃー、今度はどうするんだ?
ということで選んだのが、ウィーンのど真ん中にそびえるシュテファン寺院、定番中の定番である。
オペラ座の前からリングの中へ。もう完全なお上りさんである。
ところで、オペラ座もよく見ると、前面の一部が工事中である。これはいやな予感。
そして寺院の前につく。モーツァルト?の格好をしたお兄ちゃんが日本語で声をかけて来るが、あまりに恥ずかしいの徹底無視。
そこで、寺院を見上げると・・・・・
シュテファン寺院
Noooooooooooo・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二度あることは三度あるの諺の通り、ここも一部工事中である。
これでは、独墺四都市工事現場紀行である。

気を取りなおして中に入る。
特別なところを見ない限り、拝観料は無料である。
中は、とにかく広い。日本の小さな教会ばかりを見なれた目には、それだけでも圧巻である。
そしてステンドグラスの大きさ・・・。それだけでよかった。
中は沢山の人でごった返している。

この時、私はふと感じた。
欧州の歴史ある街で、どんなにモータリゼーションが進んでも依然として中心市街が存在しつづけるのは、
この教会があり広場があるという構造と関係があるのではないか?
つまり、人々が自然と集まる仕組みができているからではないか・・・と。
日本の地方都市では、旧市街の商業地崩壊がもはや誰にも留められない状況になっているが、
その背景に、こういうった宗教の問題があるとすれば、もはや参考にすらならないのではないか・・。

聖母像に近づこうと思ったが、真中より前側は拝観料が必要となる。
まあ、既にお腹一杯なので退散した。

さて、先ほどフラスコ画を見損ねた私としては、その代替を探していた。
ガイドブックを見ると、国立図書館の天井に立派な絵があるということで、そこに向かうことにした。
しかし、入口がどこなのかわからない。適当なドアから入ったものの、中は迷路である。
そこで出会った職員に聞くと「今日は閉館」と情け容赦ない回答が・・・・どっと疲れが出た。
こうなると運とかツキもない・・・

図書館の隣はもう旧王宮である。正直、素直にこっちへ行ったほうが費用対効果が高かったかな・・・と思いつつ、その中庭に出た。
すると、なんと建物をつきぬけてバスが走ってくるではないか。
中心地専用の小さいバスだが、大型車の断面のまま、長さを極端に縮めた、所謂「チョロQ」スタイルの車輌なのが面白い。
旧王宮の隣は新王宮、ようするにここは皇居外苑なんだなあ・・と、中心地を後にした。
バス

◆一日早い打ち上げ?
待ち合わせ時刻の夕方6時。ウィーン西駅にH2氏は立っていた。
1日分余っているユーレイルパスを使ってウィーンから南に離れたローカルバーンを見て来たとのこと。
一方、H1氏は案の定、遅刻である。10分ほど遅れてやってきた。彼が見てきたものも、工事中だったそうな。
明かに呪われている。

さて、今日の夕食は、昨日食べそびれたウィーンナーシュニッツェルである。
昨夜、地図で調べた事もあり、ものの数分で辿りつくことができた。
駅の南側の裏通り、オーストリア人の奥さんと、アメリカ人の旦那さんで切り盛りしている店である。
店の中は満員なので、外のテーブルを使うことに相成った。

ウィーンナーシュニツェル ウィーンナーシュニツェル
そこで、H1氏が買って来た鉄道模型を取り出した。ウィーンでしか買えない「クラインバーン」の2軸客車(1:87)である。
すると、別のテーブルで食べていたお兄ちゃんが、「オー、クラインバーン?」と尋ねてきた。
流石はゲルマン民族、鉄道趣味に対する理解が深い。

料理自体も美味しい。なによりキャベツのサラダがあるのが嬉しい。
そして、旅談義、鉄談義、街談義・・・。あと一日でこの旅が終わるのが、何か寂しい。

夜●ショッテンリングにて

◆ウィーンの電車

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