第1日:成り行き任せに乾杯 2004年8月28日(土)
〜フランクフルト市内一周〜

  フランクフルト アム マイン市(Frankfurt Am Main)について

  <所属州>ヘッセン州
  <人口> 65万人
  <面積> 248平方キロ

日本からの直行便が乗り入れる「ライン−マイン空港」が所在し、ドイツの玄関口である。
株式市場、欧州中央銀行などがおかれる金融の都であり、詩人ゲーテが生まれた街でもある。
アム マインとは「マイン川の近く」という意味で、フランクフルト(アン デア・オーデル)などと
区別するために用いられる。いうなれば大和高田市と陸前高田市みたいなものである。略すときはFFMとなる。

市単独のスペックは岡山・熊本あたりを連想するが、
近隣のマインツ、ダルムシュタット、ハーナウなどと人口380万人のライン−マイン都市圏を形成している。
ただし、日本の都市圏は中心都市に依存し、その市街地がスプロールした結果であるのに対し、
ドイツのそれは独立都市の相互依存的な連合体であり、一つの都市の面積もそう大きくは無い点
(岡山は63万人・513平方キロ)に、注意を要する。

交通網の視点では、ドイツ鉄道の通勤電車(Sバーン)9系統と近郊列車、
フランクフルト市交通営団(VGF:Stadtwerke Verkehrsgesellschaft Frankfurt am Main)が運営する
地下鉄(Uバーン)3路線7系統と路面電車・路線バスが存在する。

フランクフルトの地図・路線図(フランクフルト交通の公式サイトより・英語)

◆ドイツ的合理主義な市内交通
外はあいにくの雨である。
予定では、ICEでケルンへ向かい、かの有名な大聖堂を見て、
欧州唯一の高速インタアーバンとして知られたケルンボン鉄道に乗るつもりである。
マンハイム−ハイデルベルクのオーベルライン電鉄も魅力がある。

しかし昨日のゴタゴタで、異国にいるという感動がまるっきりない。
そこで、先ずは手短にフランクフルトを見てから・・・ということになった。

ユースの前のマイン川を見ると、近くの橋を路面電車が渡っていった。
先ずは、それでフランクフルト南駅(Süd banhof)に行き、Sバーンで中央駅へ向かうことに。
最寄の電停名はフランケンシュタイナー広場(FrankenSteiner Platz)・・・怪物くんが出てきそうだ。
マイン川を渡る路面電車

さて、ドイツの市内交通(Sバーン=国電・Uバーン=地下鉄・路面電車・路線バス)の大半は
駅(停留所)の巨大な券売機で切符を買い、日付をホームまたは車内の機械で印字(切符の有効化)を行う。
ドアも車輌についているボタンに触れて乗客自らが開ける。
こうした徹底したセルフサービスがとられていて、特徴の一つになっている。
また乗車の際には、改札もなければ、運転士・車掌によるチェックもないが、抜き打ちの検察があり、
もし正規の乗車券がなければ、「とんでもない」額の罰金が待ち受けている。
日本の正規料金3倍程度で権力云々とほざいている連中は甘ちゃんなのである。

券売機 ここフランクフルトも例外ではない。電停の片隅に大きな券売機が鎮座している。
(但し、フランクフルトは切符の発行時に既に日付が印字される)

購入画面には英国やフランスの旗が並び、6ヶ国の言葉に対応できるようになっている。
が、画面の国旗に触れたところでウンともスンとも言わない。するとH1氏が操作した。
タッチパネル式ではなく、横のボタンで自分が欲しい言語が現れるまで押しつづけるという方式で 少々面倒くさい。

この機種の製造年代がいつかわからないが、マン・アンド・マシン・インターフェイスや、
機械の小型化という点では、日本は文句なしの世界トップだろう。

しかし、切符そのものは、ドイツの方がはるかに上である。
ここで購入したのは24時間有効の市内乗車券(Tageskarte)で、値段は4.70ユーロ(約635円)である。
しかし、日本と異なり、市内の一般公共交通(RMV=ライン−マイン交通連合に加盟の事業者)なら何でも乗れる。
企業体や交通モードが異なろうと、共通運賃・ゾーン制を採用するのは、この国では普通のことで、別段驚くことではない。
つまり停留所1つ分だけバスか路面電車に乗って、地下鉄に数駅乗り、国電に乗り換えても
運賃はずっと通しで、1枚のきっぷで行ける。改札がないから途中下車も自由である。

乗車券
●ライン-マイン運輸連合の乗車券 ほぼ原寸大

◆本場の路面電車
路面電車がやってきた。デュワグ製の高床式3車体連接である。
ドイツの路面電車は全長25m以上の編成が多く、路線バスより大きな輸送力を持つ交通機関と認識されている。

路面電車
床の一部が下がるという、なかなか豪快な作りのステップを上り、
いよいよ、本場の路面電車初体験である。

車内は小型のクロスシートなのだが、これが極東の近郊電車より、全然すわり心地がいい。
走り出せば、加速が鋭い。聞いてはいたが、阪神ジェットカー以上だろう。
その割には揺れが全く無い。これは、鋳物のポイントを使用し、寸分の狂いなくレールを敷いている為である。
日本は、この点で米国に範をとり、わざとガタを持たしている。寒暖差や多湿を考えれば仕方ないことではある。

南駅は路面電車のちょっとしたターミナルで、数系統が乗り入れている。
乗り場は、駅舎の真ん前に置かれ、最短距離で乗りかえることができる。
フランクフルトの路面電車は、バスのような片運転台・片側面ドアが多いドイツにしては珍しく、
日本人にもなじみのある両運転台・両側面ドアである。
また、超低床化をキッカケに単一車種への急速な統一が進むドイツの中で、系統別に複数の形式が使われているのも貴重である。
南駅

素直にSバーンのホームに行けばいいものの、Uバーンのホームを見てみた。
階段を下りれば直ぐホーム、改札はないから、停留所感覚である。
フランクフルトのUバーンが地下鉄なのは都心だけで、郊外では専用軌道中心の路面電車になる、
プレメトロ(ドイツではシュタットバーン ※)と呼ばれる方式である。
まもなく、先ほど地上を走っていたの同じような電車がホームに滑り込んできた。
これは面白い・・・のちのち、予定が狂う一歩となる
地下駅

◆傷だらけの車窓から
本題のSバーンに乗る。こちらも、改札は存在しない。
日本でいうなら、地下道・地下街から直接ホームへの階段が伸びているようなもので、
川崎駅東口などのバスターミナルを思い出して頂ければ近いと思う。

ホームにあがると、ちょっと間をおいて電車はやってきた
DB(ドイツ鉄道)420型で、西武101みたいな前面に20m級4扉という、なんとも馴染みやすい格好の電車である。
DB420型

但し、車内はオールクロスシート、車輌間の貫通路は存在しない。
地下鉄で有事があった時を思うと、少々ゾットする。怖いのは韓国だけじゃないのである。
逆に言えば、日本は安全に対して相当に神経質であることは確かだ。

また、電車には自転車が搭載でき、新型車には自転車置き場もある。
これはドイツでは普通のコトで、路面電車でも載せることができる。
だからといって、Sバーンのバリアフリー化が進んでいるわけではなく、えっちらおっちら、自転車を抱えて階段を上り下りしている。
いずれにしても図体の小さい自転車だからできるのであって、ママチャリでは大変だろう。

この電車に限らず、窓ガラスは傷だらけである。落書きの一種で、欧州や米国の事業者を悩ませている。
フランクフルトのSバーンは、一時期、車体へのスプレー落書きも深刻だった。
この電車が急速に塗装変更が進んだが、その救済の意味もあるのだろう。
それでも1編成、落書きの被害にあった電車を見た。

電車は直ぐに地下線に入る。いたって普通の地下鉄である。
但し、駅は日本のそれよりずっと薄暗く、煤けた感じである。(逆に言うと、日本は能天気なほど明るく清潔である)

フランクフルトのDB網は中央駅が都心の西にある頭端駅で、ここから市街の南を回り込んで、東と南への鉄道網が伸びている。
だから中央駅から都心を横断する地下線を建設して東と南の鉄道を短絡し、Sバーンを走らせているわけである。
また、Sバーンは9系統あるが、うち都心に入らない1系統を除き、皆おなじ地下線を走る。つまり1本の路線が両側で枝分かれしている形である。
このあたりの事情は、シュツットガルトやミュンヘンと同じで、電車も同じ物が使われている。

それにしても、柱が少ない。地震の有無は建築物に与える影響が大きいことを改めて思う。

◆工事ですかそうですか。
で、フランクフルト中央駅である。
ここはレンガづくりの荘厳な駅舎に、高いドーム天井屋根のホームを持つ、欧州の中央駅という雰囲気である。
と聞いていたが・・・・・、屋根が工事中で見る影もない。がっかり。
フランクフルト中央駅構内 フランクフルト中央駅舎
●中央駅のホームの屋根は工事中。駅舎は通常営業

というわけで、中心地に行くことにした。
フランクフルトの旧市庁舎はレーマー(Römer)と呼ばれ、
その北側が、フランクフルトの中心繁華街になっている。

中央駅前から路面電車の11系統に乗ると、ものの5分でレーマーである。
レーマーの渡り廊下の下を電車が走るのは絵になる。
そして広場に面した表側にまわると・・

レーマーまで工事中・・・
げ、またしても工事中。ウンもツキもない。
冷たい雨の中、誰もいない広場を見てヨーロッパだなーと感じるだけであった。

ちなみに、工事現場を覆う布に、その建物の絵を書くのが、ドイツ人は好きなそうである。

レーマーを行く路面電車
●レーマーを行く路面電車

◆趣味に走る
雨がじゃんじゃん降っている。おまけにH1氏は傘を忘れているときた。
そうなると、どこかに観光へ歩くという雰囲気でもく、趣味に走ってしまうわけである。

手始めに、電停の前にあった鉄道模型屋へ・・・。
「模型屋と本屋は魔窟だよ・・・」と旅立つ前に日本でいわれて来たが、
早速、豊富な本を前に、あれも欲しい、これも欲しい・・となってしまう。
欧州では、店に入ってモノを買わないで出てくるのは失礼にあたるというので、
1冊、ベルリンのSバーンに関する本を買った。この先が思いやられる。

そして、朝に南駅で見た路面電車地下鉄に乗ることにした。
ここを走るU4またはU5系統を乗りとおしてもいいのだが、中央駅からあまり遠くない路線がいい・・ということで
次のコンシュタブラーヴァッへ(KonstablerWache)まで一駅乗り、
北西部のへール通り(HeerStr.)へ向かうU6に乗ることにした。

コンシュタブラーヴァッへでは階段を降りるだけで、U6/U7のホーム、
しかもSバーンと方向別だった。
改札がないから、同じ停留所に別のバス会社が来る程度の感覚だろう。
やがてやってきたU6の電車は、広電宮島線のような3車体連接の3重連というシロモノである。

車内では、さっきから麻薬中毒っぽいおっちゃんがわめいている。
とりあえず目を合わせないのが鉄則、2駅で降りていったのはホッとした。

6っつほど駅を過ぎると、U6系統はいよいよ外に出る・・。
そこは打って変わって、緑多き郊外の住宅地。
都心から僅か10分ちょっとで、この環境はうらやましい。
ただ、その緑色は私達日本人に馴染みのある「蒼々とした・・」というものではない。
もっとくすんだ、モスグリーンである。なるほど、ノッホのライケンの色そのものだ。

この先は幹線道路の真中に専用軌道があるセンターリザベーション方式で、
日本でいえば阪堺電車の堺市内・・ということだが、あちらは1両の単車
こっちは宮島線クラスの3重連だから、まあ鶴見緑地線が中央分離帯を走っているようなものである。

電車は、終点の一つ手前でエーベルフェルト(Ebelfeld)で降り返しとなった。
どうやらこの先は工事運休らしい。ここでは、低床ホーム、ステップが降りる。
工事中

◆これは無駄か冗長か
このあたりでケルンなどどーでもよくなってきた
行ったところで詳しく見られるわけでもない、それならフランクフルトで遊んだほうが 面白そうである。

とりあえず地下から地上に出たインドゥシュトリーホーフ/ノイエべルセ(Industriehof/Neue Börse)まで戻った。
ここはU7系統の分岐点でもある。
この駅で暫く電車を観察する。
U6は宮島線サイズだが、U7は江ノ電サイズの2車体連接の3重連で、幅も広い。
そして、U6からU7は物凄い急カーブで分岐している。連接車であることを生かしているようだ。
急カーブ
●U7の電車と分岐点

こんな地下鉄が本当に路面電車になるところを見たい・・
結局、先ほど乗ったU5系統へ行くことにした。
この電停から丁度バス34系統で終点の近くへ行くことができる。

10分間隔で、電車と同じ青緑色のノンステップバスがやってきた。
期待していた連接ではなく、単車だった。
タイヤハウス部分は、日本では失敗に終わったBOX式になっているので、座席数は多い。

地下からの出口
さて、この駅、地下線の入り口の両脇から別の線路が延びている。しかし地図にはそれらしき電車の系統はない。
気になってバスの車窓から追っていると、やがて路面電車になった。
しかし、途中の電停は安全地帯を残して撤去されている。
つまり廃線なのだが、こうやって残してあるのは、いつ情勢が変わっても直ぐに対応できるようにしよう、
あるいは緊急時の手段として残そう、という「ゆとり」の一種かもしれない。※2)

このような区間は途中何箇所かに存在した。

路面電車 トレーラーの八百屋
●34系統のバスから、間違って降りたマルクス病院(St.Markus-Krankenhaus)にて。
  ここは普通の路面電車 16系統がやってくる。電停の幅が広い。

◆地下鉄の駅なのに岐阜市内線
エッケンハイマーランド通り/マルバッハヴェグ(Eckenheimer LandStr./Marbachweg)で降りた。
この交差点にも4方向全てに線路があるが、使っているのは南方向と西方向だけである。
間もなく、U5系統の電車がやってきた。U6と同じタイプだが、こちらは重連である。
路面電車そのものなのに、方向幕には「U5」とあり地下鉄であることを示している。
分岐点の線路
●前方向と左からくる線路は廃線。手前←→右だけが使われている ※2)

交差点の南側・西側ともに電停がある(それぞれ別名)のだが、
信号無視・横断歩道無視で渡ってくる人も多い。
ドイツ人は律儀なんてーのは幻想である。
むしろルール違反を犯す輩が多い(それを法で縛っている)ような気がする。
カーブを曲がる電車

そこから若干南に行ったカーブした並木道で電車の撮影をしていた。
しかし、何故か、電車が必ず止まってくれるのである。
不思議に思っていると、道端にはUの看板のある待合室がある・・・。
つまり、そこは電停(名前はファルソルグンクスアムト:Versorgungsamt =年金局)だった。
ドイツの電停といえば、日本の倍程度の幅の安全地帯が完備されていると思っていたが、
中には、こんな岐阜市内線みたいな所もあるのだ。
ちなみ、路上に白線が引いてないので、路面に停留所を示すものは何もない。

電車がやってきた 安全地帯はありません
日本のガイドブックでは、ここにフツーの「地下鉄」が走っていることになっている。
それを信じて都心からやってきた人は、さぞかしビックリするだろう。
実は、先ほど、この路面電車から和服の女性が降りてきたのだが、彼女の心中やいかに。

この路線の終点に行ってみた。やはり緑多き郊外の住宅地を進む。
途中から専用軌道になり、やがて高架道路の脇に3線を持つプロインゲスハイム(Preungesheim)に
たどり着いた。
駅前からは中型バスが、更に郊外へと連絡している。
駅に入線 中型バス
●プロインゲスハイムを出発する電車(左)。連絡するバスは中型ノンステップ車。

◆アンブレラは肉のこと?
駅前にあったスーパーマーケットに入ってみる。
スーパーはその国の生活事情を如実に表していて面白い。
野菜の種類は少なく、魚に至っては殆ど見かけない。
かわりに肉と乳製品が多い。ドイツは殆ど海に面していない為だが、
川魚も食べないのだろうか。

ここでH1氏は傘を買おうとした。
しかし、雑貨がずらずらならんでいるわけでもなかった。
どこかわからず「ウェアー イズ アンブレラ?」と聞いたら、
何故か肉製品売り場に連れて行かれてしまう有様。何かの商品名らしい。

結局、ヨーグルトドリンクを購入して出てきた。
スーパーは、あくまで食品を買うところなのかもしれない。
また、日本みたいにビニール袋はない。
自分で袋を持ってくるのが常識で、袋が欲しい場合は、その場で買うことになる。

再びU5の電車に乗り、都心に戻る。道はさぞかし広いのだろう・・と思っていたが、
実際には、路面電車の複線に片側1車線+歩道のところが圧倒的に多い。
それに呼応して、クルマの量もそんなに多くない。
都市のキャパシティーそのものに余裕があるのかもしれない。

安全地帯のない電停は何箇所かあるようで、
歩道に待っていた客が一斉に乗り込むところを数回見た。
やがて、公園のようなところから地下線へ入ると、ごく普通の地下鉄になり、
フランクフルト中央駅に戻ってきた

都心では地下鉄がいいけれど、郊外は路面電車のほうがいい。
これが、日本なら、どちらかのシステムに統一されてしまうところだが、
それなら両方をつなげてしまえばいい、というのがドイツ流なのだろう。
この地では、利用者が地下鉄や路面電車、ましてやLRTなどとカテゴライズすることに
あまり意味はないのである。

◆リンゴ酒電車で乾杯
フランクフルト中央駅に戻ってきた。
そして駅構内にあった本屋にフラーっと立ち寄ってしまった。
今度は路面電車の雑誌を購入・・・さあ、この先どうなってしまうんでしょうか?

さて、今日は土曜日、つまり週末である。H1氏曰く
 「それなら今日は路面電車保存館が開いているし、名物のリンゴ酒電車も走っている」
というのである。
 早速駅にある「i」(案内書)に入り、リンゴ酒電車の中央駅電停通過時刻を聞いたが、わからんとのこと。
観光地図と絵葉書を買ったのみである。
その、絵葉書の種類は過去から現在まで実に沢山の景色が取り揃えられている。
戦争の爆撃で破壊された中心市街地を俯瞰したものまで存在する(結局、それを買った)。

駅前に行くと、タイミングよく2両編成のリンゴ酒電車が滑り込んできた。
しかし、乗り方が解らず、料金を差し出しても無反応。そのうちに発車してしまった。

残念。それならば、保存館に行こうとするが、これまたどこかわからず。
車内の広告を探し、路線図で確認したら、よりによって逆方向へ向かう電車だったので
慌てて飛び降りた。

そこも安全地帯はなく、狭い道を電車とクルマが共存して走っている。
実は、旧市街地では日本の路面電車よりも狭いところは多く、
ここも軌道敷にクルマが入らないと通行できない。
その代わり、隣接して幹線道路が整備されているため、クルマの量自体は少なく、
たとえばトランジットモールなど思い切ったことができるのだろう。
路面電車
●ドイツだって路駐は多いし、道幅も狭い。

また、電車も完全ノンステップどころかツーステップ車である。それでもみんな乳母車を
開いたままで載せている。乗り降りの時には、乗客の誰かが手伝ってあげるのだ。
私もこの電停で、たまたまそのお手伝いをしたが、ハードウェアのバリアフリー以上に
ココロのバリアフリーは重要なのかもしれない。

さて、反対方向への電車に乗ろうとすると、接近表示には「リンゴ酒電車」と
あるではないか。「え?さっき行ったばかりなのに???」と思っていると、
今度は3両編成のそれがやってきた。どうやら2編成が走っているのである。

先頭車に乗り込むと、今度は拒否されなかった。座席は満杯なので後ろ側のデッキに立つ。
5ユーロ(約675円)を払うと、やがてビン入りのリンゴ酒とプレッツェルを配られた。
リンゴ酒 リンゴ酒電車の切符

このリンゴ酒電車は、古い2軸電車を改装したものである。
もとは、KSWと呼ばれる西ドイツ各地で見られた標準車。
ハノーファーから広島市に贈られた広島電鉄238号車でご存知の方も多いだそう。

中央駅から、その北側 メッセ前のループを一回りして、再び中央駅を通過し、
マイン川を渡り南側の市街地を走る。
緑多き古い町並みの向うに、高層ビルが並ぶ、そんな景色をみつめながら
2軸電車はつりかけ音も高らかに、快調に走って行く。
そして手許には酒。・・・・ああ、なんて幸せなんだろう・・・・・。
暫らくは日本での日々を考えないで済むのが、何より嬉しい。
車窓

それにしても、トレーラー2両を引っ張っているのに、よく走る。
最新型に負けないくらいだ。こっちの電車は力がある。

市街東側のツォー(Zoo:動物園)についたら、みんな降ろされてしまった。
リンゴ酒電車は、別の客を乗せ花壇のあるループ線を一周して、市街地へ戻っていった。
車窓 ループ線の電車

◆屈折した東洋を見る(笑)。
結局、路面電車保存館に行く時間はなくなった。
それより、折角フランクフルトにいるのに、フランクフルトを食べていない。
これは可笑しい。再びレーマーに戻る。

雨もあがり、朝の静けさが嘘のように、広場は人で埋め尽くされていた。
その片隅にあるスタンドで、牛肉ソーセージを1本買った。
他にもあったようだが、乏しい語学力では、これが精一杯・・。
ソーセージ レーマー広場

早速口にする。歯ごたえ、そしてしっかりした味付けがなんとも言えない。
マスタードも辛すぎず、美味しい。
まあ、美味しい・・と思っていられるうちが、実は幸せなのである。

レーマー周辺を散策すると。
何やら東洋のものを扱う骨董品屋がある。
よくみると大黒様に「ブッダ」と書いてあるではないか・・・。おいおい。
そして、スシ屋があるのだが、中にはラーメンの提灯がぶら下がっていて、そして
テーブルにはパイナップル・・・。店の名前は「Sushi am main」・・思わず苦笑。

レーマーの下を走るリンゴ酒電車を撮影して、中央駅へ戻った。
すしあむまいん 平安京サウナ
●寿司あむマイン。
  右は路面電車を走っていた平安京サウナ号。あの、サウナの字が上下逆さなんですが。
欧州中央銀行をバックに走る
●欧州中央銀行(ユーロの総本山)をバックに走る路面電車

◆ドイツ鉄道の旅
 今日の宿泊地、カールスルーエへ向かう。
先ずは日本で購入したユーレイルパスにバリデード(切符の有効化)をしてもらった。
これを行わないと、不正乗車で無効となる。

やってきた列車は初代ICE。両端に機関車のついたタイプである。
この列車、嬉しいことに食堂車つきである。
ユーレイルパスなので1等車に乗れる。解放室とコンパートメント(個室)があるが
ここは、欧州らしくコンパートメントに乗った。

巨大なフランクフルト中央駅(20番線程度ある+機関庫や操車場もあるんだから、ポイント操作は大変だろう)を抜けると、
列車は南へ進路を変える。しかし、どこを走っているのか地図を見てもよくわからない。
日本の都市配列は街道沿いに同一線上にあり、鉄道もそれに従って敷設されているから、地図を見ても解り易い。
しかしドイツは、独立した都市が散在していて、一つの都市からそれぞれに向けて鉄道が敷かれている。
勢い対角線の引かれた図形のように、複雑な路線網になっている。

列車は旧西独の主要幹線なので160〜200Km/hを出しているはずだが、景色が緩やかなので、全くといっていいほど速度を感じない。
北海道を旅しているような気分である。
サマータイムで遅くまで明るいドイツの平原も、漸く暮れて行く。

欧州では駅に改札がないので、車内での検札が必ずある。それを受けてから、食堂車へ向けて席を立った。
・・しかし、丁度夕食時ということもあり席は満席。しかも、みなゆっくり食事をするから、
そうそう簡単に席が開くはずもない。カールスルーエまではあと40分程度なので、諦めることにした。残念。

また、同じコンパートメントに戻ってきた。
すると、何か新聞のようなものを投げ入れていった。アテネ五輪の速報である。
LEDなどで知らせることはできないからだろうが、随分立派なものである。
カールスルーエ中央駅のICE
●カールスルーエ中央駅 夜8:00近くでこの明るさ

◆あい をんと すてい・・・・・
カールスーエ中央駅についたのは20:00近く。ここは頭端式ではなく日本の主要駅と同じ通過式である。
従って日本と同じように地下に通路があるが、改札がないのでそのまま自由通路、
そして駅舎を出れば、すぐに4線の路面電車ターミナルがある。広島よりも便利、高知なみである。

カールスルーエ中央駅は、街の南端にある。
一方、目指すユースホステルは、街の中心地から程近い学生街にある
そこで、路面電車に乗り、中心地のオイロパ広場(EuropaPlatz:欧州広場)へ向い、そこから歩く。

意外に距離があり、10分ほどかかった。
しかし、無常にも空きベットなし!
さあ、どうするべ・・・。とりあえず、某歩き方に掲載されているホテルを探し、再び路面電車で
駅前まで戻ってきたものの、そこも満室、いよいよ困った。

その時、さきほど通った駅の通路にホテルの案内板があったことを思い出した。
行ってみると、地図の上にホテルの位置が書いてあって、
地図の外にはそれぞれのホテルの写真と、宿泊料金が書いてある。
しかも、緑と赤で満室・空室をあらわしているようだ。便利!
ホテルの案内板

そのなかから、中心地にある、安いホテルを選んだ。
連絡方法は・・・と思っていると、地図のわきに電話がついている。
これで、地図上のホテルの番号を押すと、直通で電話が掛かるのである。

さあ、相手が出た。
若い女の人である。
 「あ、あいむすてーしょんなう・・・」
う。。。英語が出てこない(注:旧西ドイツでは大概英語が通じる)。
 「ぴ、ぴんばんいっすむにか・・・・」おいそりゃ韓国語だ!
 「あい をんと すてい ゆあほてる」
もう、頭の中はパニックなんてもんじゃない。
相手の言っていることが、さっぱり理解できない。

あ、二人いることを伝えなきゃならない・・・・
「つーぱーそん、わんるーむ、ぷりーず」
もう、中学生にさえ笑われるような英語の乱発。
それでも、なんとか思いは伝わった様で。
「OK」という返事が帰って来た。

しかし、「『つーぱーそん、わんるーむ』じゃダブルベットかもしれんぞ」と脅すH1氏・・・。
まあ、こういう時、火事場の馬鹿力的に頭の回路がメチャメチャ回る人と、
全館非常停電になってしまう人の2種類がいるようだが、私は、どちらかといえば後者のようである・・・。

ということで、再び路面電車にのり、オイロパ広場へ戻る。
しかし、ここでまたしても問題が。肝心のホテルが見当たらないのである。
これがトランジットモールか・・・と感動する暇もなく、再び襲う不安。
道端に市街地図があったので見てみると、どうも1本裏道である様子。
そちらの方に足を向けると、オープンカフェのような場所で、皆陽気に酒を飲んでいる。
21時半なののに実に騒がしい道である。

その道沿いのビルに目指すホテルはあった。といっても小さな5階建ての建物である。
おそるおそる2Fに上がると、きれいな娘さんと、そのお母さんがフロント
(といっても、エレベータホールに机と電話があるだけ)に座っていて、笑顔で迎えてくれた。
さっきの電話の主だったのだろう。訳の解らん英語を喋る怪しい東洋人であることは、
すぐにわかってもらえたので話は(筆談で)なんとか進み、3Fの一室の鍵を渡された。

部屋にはいると・・・・
   そこには、デデーンと、ダブルベットがありました。あははははは(撃沈)。

しかし、日本のビジネスホテルの倍近い広さ。しかも小奇麗な感じで居心地はよい。
ベットも、普通のベット2つ分の広さ(というより2つのベットを並べてあった気がする)で、
布団も別々だから、まあいいや・・ということで。

そういえば、未だ夕食を食べてない。店の開店時間が法律できっちり決められていた国である。
果たして、こんな時間に空いている店があるか不安だったが、
ものの30秒のところに、ドミノピザがあって、そこで摂ることにした。
しかもオリンピックピザなるものを注文。日本でもやっていたかどうかは知らない。

店員は陽気なアフリカ系移民。ドイツだからといって白人だけとは限らない。
そんなに大きな街ではないのに、やたら明るい街である。

明日は、この路面電車の都を探訪する。


※)シュタットバーン(StadtBahn:都市鉄道)は、もともとベルリンやウィーンの高架鉄道に対して用いられ、
  Sバーン(国電)の語源の一つとされる(但し、ウィーンのそれは現在 大半の区間が地下鉄系統扱い)。
  一方、1960年代以降、都心部では地下鉄・郊外では専用軌道また路面電車を走る小型電車による
  高速鉄道が誕生した。このシステムに対しても「シュタットバーン」という言葉を用いた。
  現在では、こちらのことを差すのが一般的である。

  この、シュタットバーンと言われる路線は、路面電車よりも高規格・高輸送力の鉄道を目指したものである。
  その為、車体幅2600mm程度・編成長さ70m程度、大半は高床ホーム・専用軌道という設備を持つ。
  従って、日本に当て嵌めれば路面電車というより、東急池上線・阪神西大阪線あたりが実態に近い。

  但し、高床式電車を用いる通勤電車システムが大都市のSバーンと地下鉄程度のドイツにおいて
  それら以外の電車は、日本における路面電車と鉄道線電車に当る区別を行わない点
  (保安基準等は電車・地下鉄、標準軌鉄道、狭軌(軽便)鉄道の3種類に別れる)にも、注意する必要がある。

※2) 2006.4.29 追記。googleのサテライトでドイツ全土が最大限に拡大できるようになったのを機に
  これらの線路を調べてみた。その結果、これらはただの廃線ではなく、いずれも連絡線・回送線として使われている
  ものであることがわかった。
  U6/U7のIndustriehof/Neue Börseから延びていた線路は、路面電車16・19系統のAdalbert-Schloss Str.に接続。
  一方、U5系統のEckenheimer LandStr./Marbachwegで営業線以外の路線のうち、交差点の北方向へ進む路線は、その先に車庫が存在。
  西方向へ進む路線はU1〜U3系統との連絡線となっている。
  現地のファンサイトを見ると、中央駅前など路面電車をシュタットバーンの車輌が走っている画像が
  散見されるが、それらは、この連絡線を使って乗り入れているようである。

◆フランクフルトの電車

▲ 序章 へ ▼ 第2日 へ

▲ 表紙へ