遊 旅人の 旅日記

2003年8月24日(日)曇りのち晴れ

敦賀滞在(色の浜へ)
今日は、「奥の細道」に「侘しき法華寺有」と書いている、<種の浜(色の浜)><本隆寺>を尋ねる。
旅の手引書「奥の細道」、ノート、デジカメを持ち、リュックはホテルに置いて、AM6時ホテルを出発。
片道およそ12〜3kmである。


ホテルを出て敦賀湾に向かい歩いてゆくと松林にぶつかる。大きな松林
<気比の松原>である。
日本三大松原の一つと言う。(ちなみに、三保の松原<静岡市清水>、虹の松原<佐賀県唐津市>を合わせて日本三大松原と言うようである。)
その松原を右に見て歩き、松原が終わったところのコンビニで朝食をとる。
松原の浜辺は海水浴場になっている。今日は日曜日である。コンビニの店内、駐車場は海水浴に来た客であふれている。早々にコンビニを引き上げ歩き出す。海水浴場の駐車場も道路も車で一杯だ。
海岸沿いの道から、後ろを振り返ると松原が広がっている。ずーと海岸に沿って歩く。所々に海水浴場がある。水がきれいだ。天気が良く波も穏やかで海水浴日和りである。敦賀市色の浜<本隆寺・開山堂>


AM9:00
<色の浜>に到着。この<色の浜>、今では、周りに海水浴場やダイビングスクール、観光船乗り場などがあり、マリンレジャーの一大基地である。沖合いには水島が浮かんでいる。
主要道路から浜に下りてゆくと、右手に民宿があり、その前にポツンと<色の浜・本隆寺開山堂>が建っている。(本隆寺はこの先、白山神社の横奥にある。私は、この開山堂を本隆寺と思い込み帰路に着いてしまう。)
横に
「寂しさや 須磨にかちたる 濱の秋」の句碑と<寂塚>の碑がある。
<何一つ 目を引く物のない 此の 色の濱の寂しさは、古来から 名高い須磨の秋景色よりも勝っている>と詠っているのである。
漁師のみすぼらしい小屋と、寂しそうに佇む法華寺があるだけの浜辺で、夕暮れの海に浮かぶ水島を眺め、寂しさの感に浸りながら、茶を飲み、酒を酌み交わすのである。芭蕉の姿が目に浮かぶ。しみじみと酒を飲むには極めつけの雰囲気だったのではないかと想う。

今日は、臨海学校の子供達、また海水浴のあふれんばかりの人達で賑わっている。<寂塚>ではなく<賑塚>としたほうがよさそうだ。
敦賀市色の浜・本隆寺の句碑(右)と寂塚の碑(左)海水浴シーズンが終わると、
「寂しき法華寺」の、静かな佇まいになるのであろう。


にぎやかな子供達の歓声を背に、本隆寺を後にする。帰りはゆっくりと海の景色を楽しみながら歩く。
市内に入る手前で
<西福寺>の案内を見るが、そのまま通りすぎてしまう。

ホテルに戻りコインランドリーに出かける。洗濯物が出来上がるまで、わが手引書「奥の細道」を開く。
先ほど道路標識にあった<西福寺>に、曾良は参拝したと曾良日記に書いている。一方、芭蕉は「奥の細道」の中で西福寺に参拝したとは書いてない。
西福寺の案内を見ながらも、通り過してしまったことを自分に納得させる。

敦賀市・色の浜より水島を見る(真中左の小島)
「奥の細道」の次の文は、最終地<大垣>である。いよいよ最終段階に来たと気を引き締める。
ここからは「曾良日記」に従って<木の本><長浜><彦根><関が原>そして最終地<大垣>と歩く。
女房に電話をする。今月中に大垣着きそうだ、終わったらすぐ帰る、というと、<あまり早く帰ってきても困る>、と言うようなニュアンスの返事が返ってくる。
毎日メールを入れ、時には電話で、その日の現在地、状況を連絡している。
しかし出発前、大垣に着いた後、状況によって<伊勢>または<京都>まで歩くかもしれないと話している。
また180日程を予定しており、帰るのは11月頃、とも話していたのである。今の体調、気分を持ってすれば、伊勢また京都まで歩くことは全く問題ないが、歩いているうちに、<「奥の細道一人旅」は大垣を最終地にして、一度整理をしておこう>と心に決めたのである。
女房にすれば、予想に反して早すぎると思ったのであろう。途中寄り道をしても、9月の初めには帰ると話す。
おくのほそ道
十六日 空晴たれは ますほの小貝 ひろはんと 種の浜(いろのはま)に舟を走ス 海上七里あり 天屋何某と云もの 破籠(わりご) さゝへ なと こまやかに したゝめさせ 僕あまた舟に とりのせて 追風 時の間に吹付ぬ 浜は わつかなる あまの小屋にて 侘しき法華寺有 ここに ちやをのみ 酒をあたゝめて 夕暮の さひしさ感に堪たり
   
さひしさや すまに勝たる 浜の秋
   波の間や 小貝にましる 萩の塵

其日の日記 等栽に筆をとらせて寺に残ス
曾良日記
カウノヘノ船カリテ、色浜ヘ趣。海上四リ、戌刻、出船(クガ<陸>ハナン<難>所)。夜半ニ色ヘ着。塩焼男導テ本隆寺ヘ行テ宿。
十日 快晴。朝、浜出、詠ム。日蓮ノ御影堂ヲ見ル。巳刻、便船有テ、上宮趣、ニリ。コレヨリツルガヘモ二リ。ナン所。帰ニ西福寺ヘ寄、見ル。申ノ中刻ツルガヘ帰ル。夜前、出船前、出雲や弥市良ヘ尋。隣也。金子壱両、翁ヘ渡可之旨申頼、預置也。夕方ヨリ小雨ス。頓テ止。
一 十一日 快晴。天や五郎右衛門尋テ、翁ヘ手紙認、預置。五郎右衛門ニハ逢不。。
俳聖 松尾芭蕉・芭蕉庵ドットコム

敦賀市公式ホームページ