遊 旅人の 旅日記

2003年7月5日(土)晴のち曇り

岩出山町から鳴子へ
朝起きて部屋を出ると、雨は上がり、空は、嘘のように、すがすがしく晴れ渡っている。東方、遙かかなたには、太平洋が見えるのではないかと思う程遠くまで見渡せる。西の彼方には、山形の山々が青い空にくっきりと浮かんでいる。


5:50宿を出発。昨日あれほど痛んだ右足の脛は、今日はそれほどでもない。
岩出山町の町並みをぬけ江合川を渡り、R47に出る。山々の木、稲の緑が、生き生きとしている。江合川は昨日の雨でかなり増水している。小黒崎山と小黒崎ドライブイン
AM7・30 コンビニで朝の食料を仕入れ、隣にある
「あ・ら・伊達な道の駅」と言う道の駅で休憩。天気は良いが少し肌寒い。日当りの良いベンチにリュックを下ろし朝食をとる。まだ店は開いていないが、行楽客が車で次々に入ってくる。今日は土曜日だ。


R47を鳴子に向け歩く。右手は山、左手は田圃、その向こうに江合川、さらにその先遠くに山並みが見える、しばらくはそのような景色の中を歩く。
曾良が日記で書いている<中新田><一ツ栗><小蔵(小僧)>などの地名が見られ、また地図に記されている。地名の表示がない場合はバス停の名前を見ると、その地区の名前になっている事が多い。


岩出山町に別れを告げ、鳴子町に入り
<小黒崎ドライブイン>で小休止。<「奥の細道」小黒ケ崎>の標柱が立っている。芭蕉の像もある。ドライブインの前の、こちらに迫ってきている山が小黒ケ崎山と言う。
ドライブインを出て
<美豆の小島>を地図で確認すると、すぐ近くのようだ。R47からはずれ、左方向 江合川に向かい、田圃の畦美豆の小島の標柱と案内道を歩く。農家の庭先のようなところを通り、土手を下ってゆくと、少し先に標柱が見える。横に看板も立っている。近づいてみると、<美豆の小島>の案内板である。川に近づいてみると、河原のような中に、それらしき木の生えた岩がある。
芭蕉は古今和歌集や続古今和歌集に多く詠まれている歌枕の名勝を、やはりここに訪ねたのである。
一方、曾良は日記の中に
「名生貞ノ前、川中ニ岩島ニ松三本、其外小木生テ有。水ノ小島也。今ハ川原、向付タル也。古ヘハ川中也。」と書いている。
案内板には、数々の歌に詠まれた<美豆の小島>、その場所を確定したのはこの<曾良日記>が始めてである、と書かれている。
芭蕉が訪れたとき、この<美豆の小島>は島ではなく川原続きの岩だったと言う。また その昔は中州だったとも案内に書かれている。今でも、増水すれば島になるような場所である。
そのような特殊な事情のなかで、300年以上たっても、まだその姿を保っているとはすばらしいことだと勝手に感心をする。美豆の小島(画像中央・軽トラの右のこんもりした所)
俳句、和歌、歌人について全く知識のない頭で、勝手にあれこれ想像をして楽しみ、<美豆の小島>を後にする。
案内板のあるところから、轍のある小道を歩く。途中から舗装されており、R47に戻る。そこには<美豆の小島・入り口>の案内が建っている。


しばらく歩いてゆくとR47のバイパスを通す工事を行っている。鳴子町名生定の標識がある。ここでも
<名生定><かぢは沢(鍛冶谷沢>など曾良日記にある地名を見ながら歩く。
次第に雲が多くなってくるが、まだ雨を降らすような雲行きではない。気温もリュックを背負って歩いている間はちょうど良い。


東鳴子温泉を過ぎ、鳴子温泉に到着。一時半と云う早い時間にもかかわらず、チェックインさせてくれる。館内には数人の湯冶客と思われるひと達が休んでいる。
案内された二階の部屋に行き、リュックを下ろし荷物を整理し始めると、また右足の脛に激痛が走る。昨日も同じだが、リュックを下ろすと痛くなる。原因は解らない。
ここは温泉場である。湯冶客が泊まっているということは、良い温泉に違いない。幸い一泊二食つきの料金も安い。また何処かに飛んでしまった二週間分の日記を打ち込み直す時間を作らなければいけない。行程的にも体力的にも良い機会だ、休息にもなる、、そんな理由をこじつけ、しばらく留まることに決める。
フロントにお願いに行こうと階段を折り始めると、痛みが増し、手摺にしがみつきながら、やっとフロントにたどり着く。幸い三泊分の部屋が取れる。美豆の小島の案内
湯冶客を決め込み、早々と温泉に入りに行く。風呂場が地下一階のため二階分階段を下りなくてはならない。これががきつい。痛みをこらえ、冷や汗をかきながら風呂場にたどり着き、温泉に入る。ホッとする。
一口に鳴子温泉と言っても、源泉により、それぞれ泉質が違うのだろうけれども、この宿は良い温泉だ。


備え付けのコインランドリーを見つけ、昨日濡れた衣類を洗濯する。営業用の大きなランドリーでないため時間がかかる。特にジーンズのパンツは綿で厚手のため乾燥させるのに時間を要し大変だ。洗濯するたびに痛感している。


夕食までの間に、デジカメの画像をパソコンに取り込む。女房に、日課になっているメールを打ち、久しぶりに姪っ子たちにもメールを打つ。
(おくの細道)  小黒崎水の小島を過て
曾良日記
  中新田町  小野田(仙台ヨリ最上ヘノ道ニ出合)  原ノ町  門沢(関所有)  ○沢  軽井沢  上ノ畑  野辺沢  尾羽根沢  大石田船乗  岩手山ヨリ門沢迄、 すぐ道も有也。
十五日  小雨ス。右ノ道遠ク、難所之有由故、道ヲカヘテ、ニリ、宮。○壱リ半、かぢは沢。此辺ハ真坂ヨリ小蔵ト云カゝリテ、此宿ヘ出タル、各別近シ。
  ○此間、小黒崎・水ノ小島有。名生貞ト云村ヲ黒崎ト所ノ者云也。其ノ南ノ山ヲ黒崎山ト云。名生貞ノ前、川中ニ岩島ニ松三本、其外小木生テ有。水ノ小島也。今ハ川原、向付タル也。古ハハ川中也。宮・一ツ栗ノ間、古ヘハ入江シテ、玉造江成ト云。今、田畑成也。   
俳聖 松尾芭蕉。芭蕉庵ドッドコム

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