遊 旅人の 旅日記
村上から新発田へ | |
AM5:20ホテルを出発。天気が良く、爽やかな朝の空気の中を歩き始める。 R345に入り、JR羽越本線の跨線橋を渡り、<瀬波温泉>に向かう。少し歩くと温泉街に入る。朝早い温泉街はひっそりとしている。 <夕日の見える温泉>である。夕日に染まった日本海の茜空を眺め、温泉に入るのも良いかもしれない。 温泉街を抜け、砂浜の見える通りに出る。まだ誰もいない海水浴場に波が静かに打ち寄せている。 はるか海のかなた、うっすらと佐渡が見える。夏、この時期に佐渡が見えるのは珍しい。 しばらく海沿いを歩き、左側の、こんもりと緑の木の茂った小山に沿って、左カーブの下り坂をゆくと、左手に<石船(いわふね)神社>がある。 鳥居をくぐり、石段を登り、本殿で参拝をする。 ここには二つの句碑があるはずだ。境内を見渡すがそれらしいものは見当たらない。さいわい草刈をしている若い男の人がいる。その人に芭蕉の句碑のことを訊ねると親切に教えてくれる。 一つは参道入り口の赤い鳥居の近く、もう一つは駐車場の後ろの白い鳥居の近くにある。 花咲いて 七日鶴見る 麓かな (文政四年 岩船の法斎秋水<斉藤氏>の建立) 文月や 六日も常の 夜には似ず (嘉永二年夏 岩船の鳳鳴舎巫雪<村山氏>の建立) の句が、それぞれ刻まれている。 石船神社を後にして、R345を歩いてゆくと<神林村>に入る。右手下の方に松の木が植えられ、緑の芝生を敷き詰めたような、きれいな親水公園のようなところがある。<お幕場>と案内がされている。しばらく名前の意味を考えながら歩く。 考え事をしながら歩いてゆくと、にぎやかな話し声が聞こえてくる。 数台の車が止まっているコンビニの駐車場からだ。家族連れが楽しそうに話をしている。夏休みを利用して車で旅行を楽しんでいるのだ。車には大宮、品川、群馬などのナンバーが付いている。 金屋から町村道を歩く。田圃や畑のあちこちで水がこんこんと湧き出している。 <中条町の乙(きのと)>の集落に入る。通りすがりの人に<乙宝寺(おっぽうじ)>を訊ねると、はるか田圃のかなたのこんもりと木の茂った所を指差して教えてくれる。 |
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乙宝寺の正面の道に入ると、。赤い橋の手前で道路工事をやっている。工事をやっている右側に、芭蕉が訪れたという案内板と石碑が建っている。 山門の前では、子供達が元気に遊んでいる。 山門をくぐると右手に古色蒼然とした<三重の塔>がある。1614年起工、6年の歳月を費やし建てられた塔で、今では国から重要文化財の指定を受けている。 本殿に参拝をして、境内を歩いていると、<どっこんすい>と言う水場を見つける。弘法大師がここに独鈷(どっこ)杖を突いたところ水が湧き出したという謂れのある水場である。 先ほどの、田圃や畑の中の湧き水といい、この<どっこんすい>と言い、この辺りは水の豊富な所である。東に連なる<飯豊(いいで)連峰>の雪解け水が伏流水となって湧き出しているのであろう。やわらかく、美味い水である。 しばし休息をとった後、再び、えんえんと続く田圃の中の道を歩く。 <中条町築地>の町並みに入る。道路の向こう側から声を掛けてきた人がいる。芭蕉の話をしてみたが、あまり興味の無い様子だ。 食料品店の軒先で、スポーツドリンクを飲みながら腰を下ろして休んでいると、ワンボックスで食料品を配達に来た50才位の元気の良い女性が話しかけてくる。私を一目見て、歩いて旅行をしている人間だと判かったそうだ。自分も旅行やハイキング、山登りが好きだといっている。芭蕉の泊まった宿のことを話すと、中条の人間ではないからわからないという。新発田市から食料品の配達に来ているという。 猛烈に暑くなってくる。中条町役場に向かう。役場に入り荷物を下ろし休ませてもらう。庁舎内は静かで涼しく快適だ。たまたま<案内>のところにいた50がらみの男性職員に芭蕉の宿泊場所のことを話してみると、公民館に詳しい人がいるからといって、その人の名前と電話番号を教えてくれる。ただ午前中しか連絡がつかないという。残念ながら今日はもう連絡がつかない。明日電話することにする。 明日は新発田から新潟に向かうため芭蕉の宿泊場所がわかっても引き返してくるのは大変だと思うが、明日、途中で連絡をとり、話を聞いてからスケジュールを決めようと、R7を新発田に向かって歩く。 新潟県に入ってから、疲れ方が激しくなっている。今日は距離も長い。昔、車で走って、ある程度地理が解かっているため、頭が車での距離、時間を計算してしまい、よけい疲れてしまうのかもしれない。再度、歩いて旅をしていると頭を切り替えなければいけない。 五時少し前、宿に到着。今日は村上から11時間もかかって新発田に到着した。くたくたに疲れてしまった。 明日は、新潟まで歩くだけである。途中で紹介してもらった中条町公民館の人に電話をしよう。 |
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曾良日記 | |
巳ノ剋、村上ヲ立。午ノ下剋、乙村ニ至ル。次作ヲ尋、甚持賞ス。乙宝寺ヘ同道、帰テつゐ地村、息次市良方ヘ状添遣ス。乙宝寺参詣前大雨ス。即刻止。申ノ上剋、雨降出。暮及、つゐ地村次市良ヘ着、宿。夜、甚強雨ス。朝、止、曇。 | |
おやすみ処 | |
山形県東根市には<どんこ水>と言う名水がある。新潟県中条町の水は<どっこん水>である。どちらの水も名水に違いない。山形県にしても新潟県にしても良い水があり、良い米が取れる。酒米もよいものが造られ、そして良い酒が出来るのだ。 <お幕場> 江戸時代、村上藩当時、藩主や奥方、奥女中など城中の人々が遊園や行楽の場所として使かっていた所である。遊園・行楽の際、幕をめぐらせて行った事から、このような呼び方をされているという。 赤松の趣と、敷き詰められた苔の緑が憩いの場として今でも親しまれている。また毎年茶会も盛大に行われており、<日本の白砂青松100選>としても知られている。 <飯豊(いいで)連峰> 主峰 飯豊山を中心に、新潟、山形、福島の三県にまたがる連峰。磐梯朝日国立公園に属する。 |
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俳聖 松尾芭蕉・芭蕉庵ドッドコム 村上市公式ホームページ 胎内市(中条町)公式ホームページ |
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夕焼けに 島影浮かぶ 瀬波の湯 (遊 旅人) |