遊 旅人の 旅日記

2003年7月24日(木)雨

酒田から鶴岡へ戻る
AM 6:00 雨の中を出発。風が無く、最上川の橋の上も順調に歩く。三川町に入ると道路工事をやっている。先日、この工事現場を歩いた時は、交通整理をしていた人が、先導をしてくれた。今日は全面通行禁止である。田圃の中の迂回路を歩く。風の通り道になっているのか、急に雨と風が強くなる。
1kmほど歩くと三川の町並に入る。町は町議会議員選挙の真っ最中だ。選挙カーで呼びかける声が、あちこちから聞こえてくる。
消防学校の前にある小さな公園の東屋で小休止。近くに<道の駅>があるはずだと思い、地図で確かめる。すぐ近くだ。一旦R7に出て、道の駅に向かい歩く。雨が猛烈に降ってきて、瞬く間に道路は川のようになってしまった。道の駅の駐車場も水浸しだ。


道の駅のテラスにリュックを降ろし服装を整えていると、少し離れた所に座っていた、バイク用のレインスーツを着た男性が、ヘルメットを持って近づいて来る。そして隣のテーブルに腰を下ろし、話しかけてくる。
びしょぬれになりながら、リュックを背負って、とぼとぼと歩いてきた私に興味を持ったようだ。
「奥の細道」を辿って歩いていると話すと、その人は、歩いて、そんな長い旅をする体力は自分にはないという。その人の体格はと言うと、身長およそ180cm、スポーツ選手のようながっしりした体格の持ち主なのである。
福岡で運送業に従事しているという。毎年、会社から、この時期に年一回3週間の長期休暇をもらいバイクでのツーリングを楽しんでいるという。年一回といっても3週間もの長期休暇をよく取らせてくれるものだと感心をする。
今年は、北海道に行き、今、福岡に帰る途中だという。行きに一週間、道内で一週間、帰りに一週間と言うスケジュールで走っているという。バイクを見ると1,100ccの大型のスポーツバイクである。よく手入れがされ、大きなサイドバックとトランクをきっちりとつけている。中にはテント、鍋、釜、コンロ、米などの食料、着替えなどが入っているという。
一昔前まではバイクでのツーリング族といえば、汚れたバイクに荷物を紐でくくりつけて走っていた。時代が変わればスタイルも変わるものだと思う。バイクに乗る人のマナーがよくなり、また裕福になってきたのだ。
今では、<大型バイクでツーリングをする>などとは贅沢な趣味になっている。


この時期の北海道は、色々な人達がバイクで走っているという。
原付(49cc)のカブタイプで走っている若者、毎年同じコースを走り地元の人に有名になっている人、昆布漁のバイトをして旅費を稼ぎながら走っている若者、一日5〜6百円の予算で走っている人、様々であるという。
北海道を走ってきて感じたのは、会社のリストラにあったライダーが多かったという。自分の人生を振り返り、また将来を考えるために走りに来たという人が多かったという。

世間では、リストラだ、就職難だといっているが、北海道各地を回ってみて、アルバイトに限って云えば、昆布漁の盛んな浜などでは、人手が足りなくて、いくらでも仕事が有り、バイトをする人を探していると言っている。

リストラされても北海道を旅し、人生を考えることの出来る人は、金銭的にも、精神的にも、まだ余裕があり、幸せな人達だ。
自分の人生を振り返り、悩み、考え、生き方を模索し、チャレンジ精神を育むなど、己の精神力を鍛える良い機会ではないか。
この人も、旅に出て色々な人に出会え、楽しくまた勉強になるといっている。

今、息子さんが高校生になり、バイクの免許を取れる年になった。早く免許を取らせ、一緒にツーリングをしたいと目を輝かせて話している。息子さんも、お父さんと一緒にツーリングに出かけるのが楽しみだと言っているという。
バイクで海外にも出かけたいが、長期の休みを取って一緒に走ることの出来る人が見つからないという。息子さんが成長すれば一緒に行くことが出来るのではというと、それが楽しみだと言う。
ちなみに奥さんは何時も留守番らしい。サイドカーをつけ、奥さんを乗せて走ったらどうですかと言うがそれはいやだと言っている。
親子三人でキャンプをしながらツーリング、素晴らしいではないですかと話すと、遠くを見つめながら考えている。
二時間近く話しただろうか、雨が小止みになったところで、お互いにエールを送り分かれる。大排気量の良い響きとともに走り去ってゆく。


雨に濡れた体が、冷えてきた。食堂に入り、暖かい蕎麦を食べる。
周りの人は皆長袖のシャツを着ている。中には厚手の上着を着ている人もいる。半袖は私くらいなものである。
三時前に宿に到着。このホテルでも顔を覚えていてくれた。着替えをして、ホテルにあるコインランドリーで洗濯をする。
先ほどあったバイクの人も、洗濯はもっぱら、休憩もできるコインランドリーを利用しているといっていた。


芭蕉は酒田から海辺近くの道を歩き、鶴岡の町中には、入らず、
<大山>という所の<丸や義左衛門>宅に泊まっている。明日は、<大山>経由<温海>まで歩く。
ここ一週間ほどは、距離と体力と宿泊場所の有無の関係で小刻みに歩いてきた。明日は少し距離が長く30km程になる。早めに休む。
奥の細道
酒田の余波(ナゴリ) 日を重て 北陸道(ホクロクドウ)の雲に望 遥遥の おもひ 胸を いたましめて 加賀の府まて 百三十里と聞
曾良日記
一 二十五日 吉。酒田立。船橋迄送被。袖ノ浦向也。不玉父子・徳左・四良右・不白・近江や三郎兵・かゞや藤右・宮部弥三郎等也。
未ノ剋、大山ニ着。状添テ丸や義左衛門方に宿。夜雨降。
俳聖 松尾芭蕉・芭蕉庵ドッドコム

酒田市公式ホームページ

鶴岡市公式ホームページ

※今日の画像は、本文と関連ありません。最初の画像は、群馬県西端、長野県との県境近くにある<高岩>、次が<浅間山>、最後は<榛名山>です。