遊 旅人の 旅日記

2003年7月22日(火)晴れ

象潟から吹浦へ
象潟の海岸にある<唐戸石>朝から良い天気になった。
朝食を済ませ、フロントで「奥の細道」の話をすると、象潟の観光地図を持ってきて、詳しく説明をしてくれる。芭蕉の泊まったところ、世話になった家、熊野神社、塩越城の跡などの説明を聞く。
また、海岸には象潟が隆起した証拠となる岩があるから見ていってはどうかと進められる。
様々な話に花を咲かせ、出発はAM800になる。地元の人の話を聞くのは、新しい発見があり、また楽しい。
象潟 宿<能登屋>跡今日は、象潟の芭蕉の足跡を訪ね、吹浦に戻るだけである。のんびり行こう。


宿の後ろは海である。真っ青な海の遠く飛島、右手はるか彼方には男鹿半島の山が見える。防潮堤の上を歩いてゆくと大きな岩が海側の石ころの磯に一つ転がっている。防潮堤を下りて近づいてみると、高さ3m、幅4m程の大きな石である。一つだけ転がっているのも面白い。
<唐戸石>と言う。象潟が潟であった当時は、岩の頭の部分だけ水面から出ていた。それが象潟の地震で土地が隆起し象潟 宿<向屋>跡、岩全体が地上に出てしまったのだという。そして、この岩が、土地が隆起した証拠になっているという。


唐戸石を後にして芭蕉の宿泊した宿を探しに向かう。三軒ほどの民家の庭先のよ象潟 庄屋<今野又左衛門>宅跡うなところを歩かせてもらい、一般の道に出る。地図を頼りに歩いて行くとすぐに見つかる。
芭蕉が象潟に到着して泊まろうとしたが、当日祭り見物に来た女性客がいたため泊まれなかった宿
<能登屋>、泊まった先の宿<向屋>、滞在中 接待をしてくれた<今野嘉兵衛の家>、嘉兵衛の実兄で名主の<今野又左衛門の家>の跡、皆近所にある。
また近くにある公園の入り口には、芭蕉が滞在したときの様子を描いた絵が掲げられている。


象潟 <今野嘉兵衛>宅跡次に
<塩越城>の跡に行く。やはり民家の庭先のような狭い坂道を登ってゆくと、開けたお花畑のような所に出る。塩越城跡の案内板が立っている。城としての機能は、あまり長く続かなかったようである。下りも民家の庭先のような道を通る。
夏の日の午前中、まだやわらかい光の中、のどかな町並みを歩き、
<熊野神社>に行く。鳥居をくぐり、木々に覆われた石段を登ってゆく。こじんまりとした社がひっそりと佇んでいる。気分が落ち着く境内の空気である。


象潟 芭蕉が滞在したときの様子を描いてある看板熊野神社を後にして、再度、象潟駅に向かう。宿でもらった地図と、駅の観光地図を照らし合わせ、見落としがないかチェックをする。
10分程の間に、旅行者らしき、若者が二人駅舎に入ってきて、一通りパンフレットなどを見て出てゆく。
旅行者は皆同じような行動をするものだと彼等を見て改めて思う。駅の売店の女性としばらく世間話をして、駅を出る。郵便局に寄り、象潟の図柄の切手を買う。


R7を<関>あたり迄戻って来ると、歩道と車道の間に街路樹があり、花が咲いている。その花を熱心に見ながら写真を撮っている70才前後のご夫婦がいる。象潟 <塩越城>跡
ご夫婦に「何の花ですか?」と聞くと、奥さんの方が「この花は芭蕉が、
<象潟や 雨に西施が ねぶの花>と読んだ、<ねむの花>ですよ」と教えてくれる。急いでカメラを取り出し<ねむの花>を撮る。このご夫婦がいなければ、芭蕉の句にある<ねむの花>を知らず通り過ぎてしまうところであった。芭蕉の詠んだ句を全く知らないにもかかわらず、感激をする。ものすごく得をした気分になる。感謝感激である。お礼を言って分かれる。
昨日は雨が降っていたためか全く気がつかなかった。


象潟 熊野神社爽快な気分になり、吹浦に向かい歩く、三崎公園の木陰にあるベンチで小休止。爽やかな緑のそよ風の中 つい うとうととしてしまう。

波一つ無い 静かな海を眺めながら海岸伝いに歩く。海の反対側 左手奥の鳥海山は今日も厚い雲に覆われている。

十六羅漢の海岸まで戻ってくると、三連休明けの日にもかかわらず、家族連れが磯で遊んでいる。象潟町関のR7沿い<ねむの木>
吹浦の町に戻り、町中にある
<大物忌(おおものいみ)神社>と言う神社に行く。
鳥居をくぐり境内に入ると、正面に長い石段があり、登りきると拝殿がある。拝殿の奥には、月山神と大物忌神を祀ってある二つの本殿があるようだ。本社は鳥海山の山頂にあるという。


宿に戻ると女将が、暑かっただろうといって風呂を早めに沸かしてくれる。
きれいに掃除された部屋の片隅に、置いていったリュックがある。リュックを見た瞬間、懐かしい気分になる。二日間置いていっただけなのに、随分長い間 背負わなかったような気がする。<明日からまたよろしく>と心の中で語りかける。
明日は酒田に戻る。

曾良日記
十七日 朝、小雨。昼ヨリ止テ日照。朝飯後、皇宮山かん弥寺(かん満時)ヘ行。道々眺望ス。帰テ所ノ祭渡ル。過テ、熊野権現ノ社ヘ行、躍等ヲ見ル。夕飯過テ、潟ヘ船ニテ出ル。加兵衛、茶・酒・菓子等持参ス。帰テ夜ニ入、今野又左衛門入来。象潟縁起等ノ絶タルヲ歎ク。翁諾ス。弥三良低耳、十六日ニ跡ヨリ追来テ、所々ヘ随身ス。
俳聖 松尾芭蕉・芭蕉庵ドッドコム

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にかほ市公式ホームページ(象潟町)
      象潟や これが合歓と 老夫婦  (遊 旅人)