その10 世界遺産「黄山」・獅子峰〜飛来石〜光明頂〜翡翠池〜丹霞峰へ  

世界遺産 中国仙境・山水画街道を行く


 
(旅の10日目の早朝 世界遺産の黄山山麓ホテル〜獅子峰へ)


 旅の10日目の朝は世界遺産「黄山山頂の西海賓館」でむかえた。 夜中の3時過ぎからホテル廊下を行ったり来たりする宿泊客の雑音であまり眠れずウトウトしていたところ、早朝4時過ぎベット枕もとの電話のモーニングコールにたたき起こされた。
 黄山登山客で山頂のホテルに泊まる宿泊客の主目的の一つは、山頂の「ご来光」を見に行くことである。                         獅子峰から望む朝霧に煙る黄山の峰々
 
 私達がこんな早朝の4時に起床したのは、これからホテルからさほど遠くないところの北海風景区にある「獅子峰」に行き、世界遺産黄山の山頂の峰からの「ご来光」を体験するのだ。 海抜1800mの黄山山頂付近は夏でもひんやりと寒く、ましてこの時期(10月下旬)はかなり寒い。 そのためホテル側では「ご来光」を体験しに出かける宿泊客のために、常に各室内ロッカーに防寒着を入れてあり自由に貸し出している。 
 私もロッカーを開き分厚い綿入れ防寒着を着用してみたが、ハーフコートで歩きづらくおまけに襟元が少々汚れている。 着用をやめ自分のジャンパーを着て出かけることにした。  獅子峰から望む日の出前の黄山峰々
 
 日本から持参した懐中電灯と杖を持ち、指定時間より少し早い5時10分にロビーにむかった。 すでにロビーは立錐の余地もないぐらい「ご来光」を見に出かける宿泊客で埋め尽くされており、次から次えとホテル貸し出しの防寒着を着た中国人グループが出立していく。             

 私達も出発準備が整いホテルロビーから外に出た。 墨を流したような暗闇にガスが立ちこめ1m先も見えな いような状態である。 黄山現地ガイドが懐中電灯と目印の旗を持ち、私達の先頭にたち「獅子峰」に向かって歩き始めた。 私もガイドの後ろを杖を突きつつ懐中電灯で足元を照らしながら恐      霧が晴れ明るくなりだした早朝の黄山
る恐る歩く。
 
 街路灯も民家から漏れてくる灯りも全くない真っ暗な山道をしばらく進み、もう1軒北海風景区山頂にあるホテルの「北海賓館」前の交差路まで来ると、山中各所から獅子峰の「ご来光」にむかって進む登山客で細い山道が蟻の行列のようになってきてしまった。 
 ぞろぞろ押し流されるように歩くこと30分、目的の獅子峰の清涼亭展望台に着いた。 時刻は6時を少々過ぎたばかりである「ご来光」は6時半頃とのことだ。

 展望台は先着の登山客で黒山のような状態である! 少しでも展望台の先へ行こうとする人達がけんか腰で「おしくら饅頭」をして     ひたすら朝日が昇るを待つのだが
いる。
 
 ここで1時間ほどの自由行動となった、私も中国人登山客の「おしくら饅頭」の中に入り込み、展望台の先端へむかって突進した。中国に来たら「郷に入れば郷に従い」だ! 日本のように遠慮がちにマナーを守ってなどいたらこの中国では暮らしていけない。
 幸い私は体格が大きいほうである、先着客を押しのけ掻き分け進む、押された人達が非難の目を向けてくるが無視して展望台の先へ出た。日本ではとてもこんな真似は絶対できぬ!
                                こんな状態で「ご来光」は拝めず!

 あたりは少しずつ明るくなり始めたがまだ朝靄が立ち込めぼんやりとしか峰々が見えない。 朝日が昇る時間が来た!カメラを構えシャッターチャンスを待ったが残念ながら峰には太陽が登らないではないか。             
 刻々と明るくなり朝靄が薄くなっていく。 薄靄がかかった清涼台からの峰々はそれなりに素晴らしいのだが、早朝4時に起床し暗い山道を歩いてわざわざやって来た目的の「ご来光」は結局、仰ぐことができなかった。 
 私達は失望しつつホテルに戻り朝食を取ることにした。 
 昨日は玉屏楼地区の景観は霧でほとんど見えず、今日は主目的の一つ「ご来光」も見ることができない、全くついていない。


(旅10日目午前 黄山西海ホテル〜排雲亭〜飛来石〜光明頂)

                                黄山を代表する怪石の「飛来石」
 朝食を終えると8時半に再びホテルを出発した。 「排雲亭」という黄山西海風景区の景観ポイントに向かって歩き出したが、やはり霧が立ち込めほとんど見えぬ。 しばらく絶壁の展望台に佇み霧が晴れるのを待ったが、時おり風に霧が流された合間に深い渓谷や峰々が見ることができるだけであった。
 尾根伝いに次の景観ポイント「飛来石」まで来るとやっと霧が薄くなり、黄山を代表する奇岩が見えてきた。 
「飛来石」読んで字の如く、絶壁に突き出した岩の上に空から飛来して突き刺さったような異様な形の岩でまさに怪石だ。



 飛来石の絶壁の先端まで行くことのできる石段があり、大勢の登山客が押し合いへし合いしながら登っていく。 高所恐怖症の人には絶対に行くことのできない場所だ! 私達グループも高所に自身のある数人が石段を登り始めた! 私も恐るおそるへっぴり腰でついていく。
 飛来石の突端の狭い展望スペースに立つと、雲と霧に包まれた黄山独特の水墨画のような渓谷や峰々が目の前に広がった。 

 
 黄山は「駕籠かき」が多い!何百人もいるのではないだろうか。 登山道のいたるところで登山客を乗せた「駕籠かき」と交差する。 登山途中でへばった人を乗せるのは勿論だが、最初から駕籠に乗りながら登山する人も大勢いるとのことだ。
 あまり健脚でない人も一生に一度は憧れの伝説の「仙境黄山」の登山体験をしたくて駕籠に乗ってでもやって来るのだ。             山中いたる所にいる「駕籠かき」
私も今回の旅の最初、「張家界」でばててしまい、はずかしい思いして駕籠に乗ってしまった。 ちなみに黄山での駕籠かき運賃は距離にもよるが平均250〜300元(4000円前後)が相場とのことだ。


 さらに尾根路を進んでいると稜線の頂上に広がる広場のような所に出た! 黄山の三主峰の1つで2番目に高い1840mの峰「光明頂」で日の出と雲海の名所だ。 
 何と!広場が登山客で埋め尽くされているではないか! それにしても人が多すぎる。 
 ここは黄山登山の中間ポイントみたいなところで広場の中には売店と気象観測所がある。                                 人で混み合う光明頂の頂上
 黄山の登山客たちは前山の玉屏楼側から登った人も、後山の雲谷寺側から登った人もここで必ず一服することになっているのだ。 旗を持ったガイドを先頭に中国人の団体が次から次へと飛来石の方へむかって通り過ぎていく。


 ここでしばらく自由行動となった、広場の一番高い岩に登って下界の写真を撮ろうとしたが、又しても霧に視界がふさがれほとんど見えぬではないか! 5年ほど前にもこの黄山に来て、この「光明頂」に立ったことがあるが、そのとき目にした絶景が脳裏をよぎる。初めて見る黄山の山岳風景に言葉につくせぬ感動を味わったのだった。                 霧にかすむ光明頂付近の景観
 残念ながら今回の黄山登山では、もう一度あの時の感動を味わうことができぬまま終るかも知れぬ。

 ここでいったん午前の山歩きを終らせ昼食のため再度、西海ホテルに戻ることになった。 ホテルまでは山中の松林を歩いて下っていくのだが、霧が時おり切れる合間からは見ごたえのある松や渓谷が目に飛び込んでくる。
 
 ホテルでは「ご来光」体験で早起きしたこともあり、昼食をはさんで2時間半あまりの休息となった。
 ホテル周辺の北海風景区は霧が晴れており、ホテルのテラスからも黄山の峰々が見えるので、私は部屋で休息をとらずに清涼台方面の景観を見に出かけた。やっと本来の黄山ならではの絶景をカメラに収めホテルに戻ると、丁度午後からの出発時間の14時となっていた。

旅の10日目午前 排雲亭〜飛来石〜光明頂〜北海風景区〜清涼台の景観
画像をクリックすると拡大画像になります。(一部画像は前回来た時に撮影のもの使用)



旅の10日目午後 黄山西海ホテル〜太平ロープウェイ〜翡翠池〜丹霧峰)

                             太平ロープウェイで山麓の翡翠池まで下る
 ホテルから歩くことわずか20分ほどで見晴らしのよい峰の上にある「太平ロープウェイ」に着いた。 ここから見える西海地区の景観もすばらしい。 遠くに午前のコースで立ち寄った「飛来石」が渓谷を挟んでくっきりと見える。
 アジア最長を誇る全長3700m、高度差1000mあまりの太平ロープウェイに乗り込んだ。 黄山裏側の下界にある「松谷風景区」まで、雲の中を抜け峰々の間を飛ぶように降りて行く。 山麓まで下りゴンドラから外に出ると生温い空気が身を包んだ、霧がまるきり晴れて薄日まで射している。 黄山頂上と山麓ではこれほど気温が違うのかというほど暖かい。 
                               竹林の松谷風景区を歩いて翡翠池へ
 私達は黄山裏側渓谷にある観光ポイントの「翡翠池」に行くべく、谷底に向かって遊歩道を歩き出した。 薄暗い森林の中を歩いていると汗が出てくる! 身につけていたジャンパーとセーターまで脱ぎ、しばらく降って行くと谷底の松谷風景区に出た。
 清流と奇岩があたりの深い緑に溶け込みそれなりの景勝になっている。 ここからは翡翠池まで竹林の中の遊歩道になり、まるで日本の京都近郊の竹林を歩いているような気分だ。

 目的の景勝「翡翠池」に着いた! ここも黄山では知られた景勝地なのだが、あれほど見かけた山中の登山道を埋め尽くすような登山客がほとんどいない。               エメラルドグリーンの翡翠池
 
ここには私達日本人グループ以外には中国人学生らしき登山客が数人いるだけで、わざわざロープウェイを使ってここまで降りてくる人はほとんどいないようだ。
 渓流を巨石が流れをせき止め池のように見える場所がある。 水の透明さ、深さ、そして周囲の深緑によってエメラルドグリーンのようになっている所が「翡翠池」だ。
 あたりの渓谷は一部だが紅葉が始まり出し、黄山の紅葉もそれなりに美しい。 閑散とした静寂さの中でひと時を過ごすと、私達は黄山山頂まで戻るべくロープウェイまでの上り坂を歩き始めた。
 再び私達を乗せたアジア最長のロープウェイは再び雲の中を抜け黄山山頂駅にむかって滑るように登っていく。 ゴンドラの窓からは雲の隙間から黄山の峰々が見え、大半の乗客が窓ガラスにカメラを押し付けシャッターを押している。


    旅の10日目午後 太平ロープウェイ〜松谷風景区〜翡翠池の景観

画像をクリックすると拡大画像になります。
西海側から見える飛来石 黄山山麓翡翠池の紅葉 ロープウェイからの黄山の峰

(旅10日目夕方 夕日の名所・丹霞峰)
                             夕日の名所丹霞峰に急峻な崖を登る

 再び太平ロープウェイの頂上駅に降り立った。 ここからは黄山登山最後の観光で夕日の名所「丹霞峰」に登ることになっている。 明日は3日間に渡って観光した黄山を下山し、次の目的地である世界に名だたる陶磁器の故里「景徳鎮」まで移動するのだ。。
 今朝の「獅子峰」での「ご来光」は霧のため見ることができなかったため、私達は最後の望みをかけて「丹霞峰の頂上」へむかって急峻な石段を登り始めた。(右画像) 
 この石段が半端でない足腰が弱りつつあるシニアにはかなりきつい! へっぴり腰で杖に頼りながらなんとか峰の頂上の視界が開けた岩場にたどり着いた。
                                  丹霞峰頂上からのパノラマ
 まさにに360度のパノラマだ! 峰々に薄く霧がかかり山水画に画かれた仙境そのものだ。 しばし我を忘れカメラのシャッターを押し捲った。

 時刻は16時半を過ぎた!そろそろ夕日の時刻なのだが、霧に邪魔され峰々には薄日が射すだけである。 またしても最後のチャンスの日の入りが見ることができぬまま時間ばかりが過ぎ去って行く。
 しかし、夕日が見えぬ失望を補って余りある黄山の絶景に十分な満足感を味わった!
 そろそろ暗くなりだしたのでホテルに帰るべく石段を下るのだが、これが登りの時よりもキツイ! 足元は何もない千尋のような渓谷で足を踏み外したり、よろけたら一巻の終     雲がかかり幻想的な丹霞峰の峰
わりだ。 なんとか無事にホテルに帰りついたときにはすでに暗闇となってしまった。 


 夕食開始時間まで1時間ほどの時間がある、ミネラルウォーターと菓子でも買おうと売店に出かけることにした。 売店はホテルの屋外のロビーからテラスに出て階段を降りたところにあり、ユースホステルと隣り合わせになっている。
 開放されていたユースホステルの玄関から中を覗くと、細長いうなぎの寝床のような廊下に二段ベットが隙間なく並び、ベットに腰をかけ中国人の学生らしき登山客がカップ麺を食べながら談笑している。
 食事は自前の素泊まりだけの激安宿泊施設で1泊30元(450円)程度の料金で、黄山の数箇所にこのような学生向けの施設があるのだ。


                             夕日の名所・丹霞峰の頂上からの景観

画像をクリックすると拡大画像になります。

(まさか!世界は狭い札幌の友人と遭遇してしまった!)
                                 丹霞峰の頂上からの石段

 西海ホテル外の売店の中に入り陳列されている商品をチェックしていると、今回の中国旅行最大のビックリするような、嬉しいハプニングが起きた!。 陳列棚の前で商品を手に取り見ているいると突然!背中から「佐藤さん」と声をかけてくる人がいる。 振り返ると何と!何と!私の友人で同じ札幌に住む「中川M子」さんではないか!
 私は札幌でNPO法人の会員になっているのだが彼女も同じ会員なのである。 お互いにメールのやり取りをしたり、時には会合等で一杯飲んだりする仲なのである。
 その「中川M子」さんに、あろうことか中国の黄山の山中でバッタリ遭遇したのである。 まさに世界は狭いではないか!。 アレーと言ったきり信じれない気持ちでしばらく言葉が出てこない!

 
 中川さんはちょっとアルコールがいける口で、この黄山山頂の西海ホテルで就寝前の睡眠薬がわりの寝酒を買うために売店に下りてきたところで、私を発見し声を掛けてきたのだ。
 狭い売店の店内で堰を切ったように私達は大声で立ち話を始めた! 突然、早口で飛び交う私達の日本語に店主らしき男がビックリして見ている。 
 立ち話でははこうだ!  彼女は中国旅行は今回が初めてであること。 札幌のS旅行社の4泊5日の黄山ツアーに友達と二人で参加して、12名のグループで千歳〜上海経由でこの黄山に入ってきたこと。 私は明日下山して「景徳鎮」に向かうのだが、彼女達は明日もこのホテルに宿泊して山頂を歩き回るとのこと。 こんな会話をして無事に旅を終え、札幌での再会を約して部屋に戻ったのであった。
 
 彼女はSSN登山クラブ会員にもなっており海外ではネパールやマレーシアのキナバル山にも登っている活動家で、初めての中国旅行に黄山登山を選んだのである。 普通初めての中国旅行は北京や西安、桂林などを選ぶのであるが、さすが目のつけどころがちがう。

 それにしても奇遇だ!こんなことが本当にあるのだ!本当に世界は狭い。 売店で山麓の4倍もする1本8元(120円)の高いミネラルウォーターを買い部屋に戻ると丁度夕食の時間となっている。


 19時ごろ旅仲間とレストランの個室で夕食をしていると、「佐藤さんおられますか?」と中年の中国人男性が部屋に入ってきた。 私がハイと手を挙げると、中国人男性の後ろから先ほどの「中川さん」が笑顔を覗かせるではないか!                 レストラン前で
 中国人男性は黄山のツアーガイドで、「中川」さんに頼まれホテル内にいくつか有るレストラン探しながら私を訪ねてきたのだ!。

 ビックリして私が立ち上がると、彼女が手に持っている物を私にプレゼントしてくれるではないか! それは日本のキャラメルとチョコレートだった! わざわざそれを私にプレゼントしたくて、中国人ガイドに頼んで私の会食場所に来てくれたのである。 
 なんと心優しい気遣いで、有難く嬉しいことでないか! 感謝の言葉もない。
 会食場所からロビーに出て、黄山での奇遇場面の記念写真を中国人ガイドに頼んでシャッターを押してもらうことにした。 ホテルのレストラン前で二人仲良くパチリとやった。 カップル写真を見て誤解しないでいただきたい! 私達は「清く正しく美しい」関係の友人なのである。 明日は霧に悩ませられた黄山ともお別れだ!


 旅その11 「黄山から陶磁器の故里「景徳鎮」へ、街中陶磁器だらけだ!」へ つづく


              ( 旅 10日目の出費)
        
        ミネラルウォーター 8元 × 1本   = 8元 (120円)
         夕食ビール    10元 × 1本  =10元 (150円)
    ________________________________
                       合計     18元 (270円)
   

               (10日間の累計出費609.9 元 (9149円))