その14 世界遺産「武夷山」で九曲渓筏下り、美しい港町アモイへ       

世界遺産 中国仙境・山水画街道を行く



旅14日目 世界遺産「武夷山」竹の筏で九曲渓川下り


 旅も間もなく終ろうとする中国入り14日目、武夷山市入りして2日目の朝も市街地のリゾートホテルでむかえた。 今日のスケジュールは武夷山観光で最大の楽しみにしていた九曲渓の川下りを楽しんだあと、夕方航空機で経済特区として発展した福建省の港湾都市「厦門(アモイ)」への移動となっている。                      
 例によって出発時間まで時間がもたずロビーでウロチョロしていたら、隅のソファーで元気なさそうに座っている現地女性ガイドの干さんを見かけた。 
 彼女は独力で日本語を僅か9ヶ月あまり学び、昨日初めて私達グループに日本語ガイドとしてデビューしたのだったのだが、見るのも気の毒なくらいガイドとして厳しい1日を経験することになったのである。 
 
 なんとなら日本人添乗員Y女子より、私達みんなの目の前でびしびし叱責されたのだ。 曰く!「私の了解を得ず勝手にバスを出発させるな!」、「常に後ろを振り返り人数チェックしながら歩け!」 「説明が雑だ!もっと詳しく!」など、いじめを見ているくらい叱られ続きだったのである。
 日本人添乗員のY女子、自分より美しい女性ガイドに対抗心が芽生えたのだろうか? Y旅行社特有の責任感丸出しの厳しい添乗員に戻った1日で、干ガイド叱られながら半べそ状態で必死になっての初ガイドだったのだ。  それで今日も叱られるのではないかと気落ちしながら、私達が集合するのをソファーで待っていたのである。
 私が「干さん、昨日は初ガイドとしては立派だったよ! 私達皆とても感謝しているよ!」と言ってやると、「佐藤さん、ありがとうございます、今日もよろしくお願いします」と嬉しそうに笑顔でかえしてきた! 素直でかわいい娘なのだ。
                                 九曲渓を下って行くイカダ

 手持ちの中国元が底をつきそうなので、フロントに行き一万円札を出し両替を頼むと、このホテルでは両替をしてないという。 どこのホテルに行けば両替してもらえるか問答していると、隣りでチェックアウトしていた中国人が突然声をかけて来た、何と!流暢な日本語で「私が両替してあげますか!」と言うではないか。 私が吃驚して「日本円ですよ!いいのですか?」と聞き返すと何と!香港の日本企業(T電気)に勤務していて、時おり出張で日本に行くからかまわないと言うのである。 こんなやりとりをロビーでしているとやがてバス出発時間の8時半となった。         

               
 バスは今日最初の観光である九曲渓川下    ピストン輸送で孟宗竹を筏に組み立てる
の「遊覧竹筏乗り場」へむけ出発した。  武夷山風景区の中を九曲渓という全長60キロmほどの川が西から東へ流れている。 
 この九曲渓を竹のイカダで下るのが、武夷山観光最大の目玉となっているのだ。 九曲から一曲まで曲がりくねった渓谷を5〜6名乗りのイカダで下るのだが、出発点から終点まで約10kmの距離を清流に触れ、両岸の奇峰を眺めながらの渓流下りなのである。
 バスは風景区の西端にある星村鎮の遊覧竹イカダ乗り場に着いた。 ここを起点として九曲から順次一曲まで下り、終点の武夷宮で下船するのだ。


 例によってすでに乗り場は乗船を待つ黒山      床が水びしゃの竹の筏で出発する。
の乗船客でごった返している。 私達のグループはあくまでも日本人らしくマナーを守り2列縦隊に整列して順番が来るの待つ。あまりにも整然としているので乗船待ちの観光客のなかで異彩を放っている。 荷台に孟宗竹の柱を積んだトラックが次々と乗り場に入ってくる。 川岸で竹柱を積み降ろすやイカダの組立作業を手際よく始め、組み立て終わると次々に並んでいる順番に6名が乗り込み出発していく。 竹柱を積んだトラックはイカダ下りの終点一曲で、イカダを解体しトラックに積み込み、ここ出発点の乗り場までとの間をピストン輸送をしているのだ。
 
 私達の番が来た! イカダは15〜6本の     渓谷の流れに沿って下って行く
孟宗竹をロープで繋いだだけの実にシンプルな作りで、その上に竹椅子が6脚置かれているだけだ。 船頭は2名おりイカダの舳先と後尾に1本の竹竿を持って突っ立っている。 床は川水が浸透してビチャビチャだ。 
 救命胴衣を着た私達は前から順番に乗ろうとしたら、船頭が「ちょっと待て!勝手に座るな!」と言うではないか! 何だと思って振り返ると、船頭が私達一人ひとりの体格(体重)を見計らって、お前はこの場所、お前はあそこの場所と、私達一人ひとり座る場所の指図をするのである。イカダのバランスをとっているのだ。


 次から次へとイカダが渓流に漕ぎ出されて    360度どこを見ても奇峰、怪石がつづく
いく。 長く連なった船団のような状態で私達6名が乗ったイカダも渓流に漕ぎ出した。 
 二人の船頭がたくみに1本の竹竿でイカダをあやつり、同時に舳先の船頭がガイドとなって説明をしながら、流れに沿って下っていく。 まず最初の見どころの九曲にさしかかると船頭がある峰を指差し説明を始めた! もちろん中国語でだ。 私達のイカダ6名には添乗員も現地ガイドも乗っていない。
 船頭の説明を通訳するのは必然的に私の役目となってしまった。 船頭の話す中国語は本来「福建語」なのだが私が理解できるようにと北京語で話してくれる、ところがなまりが強く何と!半分も意味が理解できない。


 旅仲間5名は通訳を待って、ひたすら私を    九曲渓下りの絶景ポイント「玉女峰」
見つめているではないか!しかたない! 適当に想像をおりまぜ通訳してやることに決めた。 観光地図を見ながら、いかにも船頭が説明する言葉を理解したふりをして、旅仲間に通訳してやると、皆が首を振って「なるほど」とか言っている。 通訳料はタダである!嘘も方便だ!これくらい我慢してしてもらおう。
 九曲での見所「白雲峰」〜八曲「双乳峰」〜七曲「響声岩」と下って行くのだが、それぞれの曲ごとに景観ポイントがあり、近くに連なるイカダからは中国人特有の賑やかな歓声とともに、私達のイカダを指差し「あのイカダは日本人だ!」という声も聞こえてくる。女性の船頭がいるイカダもある。            終点では武夷山を代表する「大王峰」が見える
 
私達の船頭は愛想がことのほかよい!景観ポイントに来ると、私達が持っているカメラを一人ひとりから取り上げ舳先からシャッターを押してくれるのである。 これまで外国人乗客からチップを弾まれ私達にも期待しているのだろうか? 

 今まで三十数回の中国旅行で、さまざまな観光地を訪れたが、この九曲渓下りは気分爽快で今まで味わったことの無い最高に満足のいくものだ。 もう一度親しい仲間達と来てみたいと頭をよぎる。
 イカダであるため遮る物がなく360度のパノラマ景観を楽しむことができるのだ。 とくに六曲から望む天游峰、さらには三曲から二曲にかけて望む「玉女峰」は、さすがに武夷山のシンボルといわれるだけあって見事である。 きさくな愛想のよい船頭と私のかなり出鱈目な通訳案内での、約2時間弱のイカダ下りも終り、下船場の武夷宮に着いた。 イカダから降り立つとそこは芝生公園になっており、目の前には大王峰の奇峰がそそり立っている。
    
        世界遺産「武夷山」九曲渓の景観(画像をクリックすると拡大画像になります)

八曲あたりの景観 六曲あたりの景観 昨日登頂した天游峰
三曲あたりの景観  二曲から玉女峰の景観  終点の武夷宮からの大王峰

「大紅袍茶樹」の見学〜航空機で厦門(アモイ)へ移動


 いったんホテルに戻り昼食を済ませると、  大紅袍茶樹を見るため大紅袍景区の渓谷を進む
今日の最後で武夷山締めくくりの観光は「大紅袍景区」にある「大紅袍茶樹」の見学である。 武夷山周辺は武夷岩茶の産地として非情に有名だ。岩茶とは岩に生えている茶樹から採った茶葉で作ったウーロン茶で、なかでもこれから見学する大紅袍景区の一天岩の麓にある「大紅袍茶樹」はお茶の王様と呼ばれ、歴代皇帝に献上された貴重なお茶であった。 何と樹齢400年もある茶樹なのだ。
 渓谷の手前でバスを降りると、私達は天をつくように切り立った絶壁に挟まれた遊歩道を進みだした。 船の舳先に見える峰(タイタニック)を始め、鷹が翼を広げているような「鷹嘴岩」、燕の尾のように尖った「燕子峰」  船の舳先に見える峰(タイタニック)を見上げて
などさまざまな名前が付けられた奇峰、奇岩が現れてくる。 
 
 また激動の中国史をかざる歴史の一舞台にもなった「太平天国の乱」の折に人々が篭城した砦跡なども崖の上に見えてくる。
 とにかくどこを見ても岩山と絶壁の連続で凄い景観だ! さすが福建省は岩山ばかりでここで採石される石材は大半が日本の墓石として輸出されていると聞いたが本当のようだ。 遊歩道沿いには狭い茶畑が続く、やがて切り立った渓谷の行き止まりにある猫の額のような茶畑に出ると、目的の樹齢400年の「大紅袍茶樹」は、茶畑を取り囲む絶壁の中腹に張り付くように栽培されていた。 これがグラム100万円を超え、中国最高の品質と薬効が得られるという茶樹だった。 目的の茶樹よりもここに至るまでの景観が凄い。これで二日間にわたる武夷山の観光を終えた。 このあとは武夷山空港18時15分発の航空機で港町「厦門(アモイ)」への移動である。 


         武夷山「大紅袍景区」の景観(画像をクリックすると拡大画像になります)

絶壁にある大紅袍茶樹  大紅袍景区の景観 大紅袍景区の渓谷を歩む

 まだ15時を過ぎたばかりである、空港に   武夷山市の街頭で武夷岩茶を選別している
向かうのは早すぎる。 時間調整をかねて武夷山市の繁華街で1時間の自由行動となった。  明日はいよいよ旅の最終日でアモイから直行便で日本へ帰国である。 
 旅仲間が今日まで荷物になるため買い控えてきた日本への土産物を求めて街中に散っていく。 私は妻から間違っても中国の土産だけは買ってこないで!と言われている!(あまりにも評判が悪く苦い経験を何度もしている。) どうしても私に何か買って来たいのなら羽田空港の売店で日本の銘菓でも買ってきてと言われている。 することもないので街頭の縁石に腰を掛け武夷岩茶の選別作業を眺めながら時間つぶしする。


 自由行動を終え武夷山空港ロビーのベンチ     港湾都市アモイ、ビルの夜景
で出発待機していると、私達の向かいに座った年配(70歳代)の4人の中国人グループが流暢な日本語で話しかけてきた。 台湾からきた観光客ということで4人とも台湾の旧制中学で日本語を学んだという。
 4人が揃って流暢な日本語を話し、入れ替わり立ち代り嬉しそうに私達に日本統治時代の思い出を話し、おまけに日本の童謡まで歌ってくれるではないか。そういえばこの武夷山がある福建省は台湾海峡を挟んで対岸が台湾なのである。
 日本による植民地統治時代について、多くの年配の台湾人は当時を懐かしく語り、年配の韓国人の大半は当時を恨みを持って語る。 この違いは何なのだろう? 
 
 17時20分私達の乗せた上海航空アモイ行き便は定刻に離陸し、あっという間の50分後にはアモイ空港に着いてしまった。 私達は空港からそのまま市中心部の夕食会場のレストランに直行することになっている。              アモイでの夕食、ネオンが輝く海鮮レストラン
 アモイは中国でも有数の経済発展著しい港湾都市だ、市中心部に近づくと林立するビルが美しくライトアップされている。
 私達を乗せたバスは、ビル郡の一角にあるレストランの玄関前に横付けされた。 カラフルな南国風ネオンが輝く海鮮レストラン「天天漁港大酒楼」という香港資本のレストランチェーン店だ。 中国の主要な都市に進出し、海鮮レストランといえばこの店の名前が一番最初に挙げられるほど超有名な店なのである。 明るく清潔な店内にはさまざまな魚介類の水槽が並び、客の好みに合わせ調理をしてくれるようになっている。  
 今日は中国最後の夜で明日の午後には日本へむけ帰国である。 旅仲間とのお別れパーティもかねた夕食となった。 ビール代は旅行会社のサービスで無料である。 洗練された広東風さっぱり味の海鮮料理が次々と運ばれ、2週間の旅の思い出話に夕食は盛り上がる。
 明日は午前中いっぱいアモイ市内での自由行動になっている。ホテルにチェックインしたら市内観光地図を買いに行こうと思いがよぎる。


 旅その15 「旅の終り、欧州風のエキゾチックな街並みの港町・厦門(アモイ)」 つづく
                                    



( 旅 14日目の出費)
        
      ミネラルウォーター 1元× 2本   = 2元   (30円)
      ミネラルウォーター 1.5元 ×1本 = 1.5元  (22円)
      昼食ビール     15元 × 1本  =15元   (225円)
      アモイ市内地図              5元   (73円)
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                   合計      23.5元 (350円)  
   

          (14日間の小遣い累計出費.910.9元 (13.661円))