その15 旅の終わり、欧州風のエキゾチックな街並みが美しい港町アモイ        

世界遺産 中国仙境・山水画街道を行く



旅15日目 旅の終わりはアモイの街で半日の自由行動


 中国入りして15日目の朝をむかえた。中国仙境巡りの旅も今日が最終日となってしまった。  最後の一夜を過ごしたホテルは、中国南東部の台湾海峡に面した福建省アモイの港町で、街の中心部から少々はなれた湖岸にある4ツ星ホテルの金雁大酒店である。
 今回の旅行期間中宿泊したホテルの中では、このホテルが「従業員の接客サービス」、「客室備え付けのアメニティグッズ」、「朝食バイキングの料理内容と品数」等々、全てにおいて最高に満足のいくものだった。
 4ツ星ランクながら、実質5ツ星ランクといっても何の不自然さ感じさせぬほどの快適さだ。
 いつも中国で宿泊して感じるのだが、4ツ星にランクされながら実質2ツ星程度のホテルもあれば、今宿泊しているホテルのように最高ランクの五つ星にしてもよいホテルもある。 中国におけるホテルのランク付け審査は何を基準にして決めているのか?。
 おそらく政府の格付け機関なのであろうが、賄賂金の額で等級が決められているのではと疑いたくなるほど不自然な差がありすぎる。
 
 もとへ本題に戻る、今日はアモイ空港14時発成田行きの直行便で帰国するのだが、それまでの午前中いっぱいが自由行動になっており、旅の仲間各自めいめいが好きな時間を過ごす事になっている。
 私は集合時間まで古くから自由貿易港として栄えたこの港町の中心部を、きままに歩き回るつもりでいる。 朝食を終えるといったん部屋に戻り、昨夜購入したアモイの市内拡大地図を広げ、散策コースを頭に描いた。
 
 アモイの町は、東シナ海に注ぐ九龍江の河口に位置し、アモイ島、コロンス島、九龍江北岸を含めた総人口131万人の比較的小さな町である。 歴史的には明王朝末期、日本でもよく知られる「鄭成功」が台湾を拠点として、このアモイから建国まもない清王朝に対し大陸反抗を試みた地だ。
 明時代から、中国有数の茶葉輸出港として繁栄したが、アヘン戦争の敗北による講和条約の南京条約によって対外的に開港させられ、多くの外国公館や商館がコロンス島に建てられた。
近年は経済開放政策により中国でもいち早く経済特区となり、日本を含めた多くの外資が進出し豊かな町として知られている。

 地図を見ながら先ず、アモイ島の対岸にあるコロンス島を結ぶフェリーの船着場まで出て、そこから繁華街の中山路と思明路を歩くことに決めた。
 チェックアウトを済ませホテルフロントに荷物を預けると、玄関前に待機していたタクシーに乗り込んだ。タクシーの運ちゃんに船着場近くのホテル名を言うや、無言で猛スピードで走りだした。
 
 さすが経済特区として発展した街だけに、林立する高層ビルをぬって6車線の幅広い路がずうっと続く。 街を走っていて気がついた!行きかうタクシーは真新しい黄色いタクシーばかりで、そのほとんどの車種が韓国製のヒュンダイ(現代)ブランドなのだ。
私が今乗車しているタクシーもヒュンダイである。中国どの都市に行っても見かける日本車が、残念なことにこのアモイの町ではほとんど見かけない。アモイと韓国は何か特別なつながりがあるのであろうかと思っていると、やがてタクシーは海岸道路に出るとしばらく走り、目的の船着場近くのホテル前に停車した。料金メーターを見ると17元(250円)になっている。20元を払い釣銭は要らないと言うと、ずっと無言で緊張したような顔つきで運転していた運ちゃんが、始めて笑顔で”謝謝”と口を開いた。


 タクシーから降り潮の香りが漂ってくる海岸道路を横切り岸壁に歩いていくと、大勢の市民が狭い海峡で釣り糸を垂れている。その先の対岸には風光明媚な景観で有名なコロンス島が見え、海峡をアモイ島と結ぶフェリーがひっきりなしに往来しているのが目に入ってきた。
 コロンス島は南京条約によって開港させられた後、1902年に共同租界地に定められ、イギリス、アメリカ、フランス、日本、スペインなどが次々に領事館、商館、学校などを建築した所で、島内には今でも古い洋館が立ち並び昔ながらの生活をしている。
 明王朝の忠臣「鄭成功」の巨大な像もこの島に建っているので、渡って散策したい気持ちも働いたが午前中のみの限られた自由時間なのであきらめ、岸壁を離れアモイ最大の繁華街である中山路方面へ地図を片手に歩き出した。


 さまざまな商店やデパートが軒を連ねる中山路を歩き出したが、まだ9時を過ぎたばかりで人通りが少なく閑散としている。歩き出して気づいたのだが、商店前の歩道がちょっと変わっている。 商店の2階以上を歩道の上まで伸ばし、雨が降っても傘を差さずに歩けるようになっているのだ。 雨が多い福建省から広東省にかけて、南東部特有の建築様式の街並みだ続いている。
 どの店も店員が店頭で、開店前の清掃に忙しく立ち回っているなか、歩道から店内を覗き込むようにしながら歩いていく。
 中山路の中心部近くまで来ると街並みがヨーロッパ風のエキゾチックな建築物が軒を連ねるようになってきた。 アヘン戦争の南京条約により、中国でもいち早く諸外国に開放させられた面影が、このアモイの街には今でも建築物に色濃く残っているのだ。

 
 人通りの少ない大街を気ままに進んでいくと、アーケードになった脇道があり人が密集している。市場のようなので、雑踏の中に足を踏み入れていくと、生鮮食品を中心とした売店が立ち並ぶ一角に路上にせり出した小さなテーブルの上に、さまざまな派手な色合いの中国タバコを並べて売っている店があるのを見て思いだした。 使い残した中国元がまだポケットに400元あまりあるのだ。
 空港で日本円に再両替するのも手続きが面倒だ。 ちょうどよい!今日まで女房の言いつけを守って土産は何一つ買っていない。
 
 タバコを吸う二人の息子にここでタバコをお土産に買って帰ろうと思い、退屈そうに椅子に座って店番しているオバちゃんに声を掛けてみた。 「この上に並べてあるタバコの値段全て教えて!」というと、オバちゃん市場の中では聞きなれない、ぎこちない私の北京語を聞いてキョトンとしてる。(この地は福建語) もう一度、繰り返し言ってやると、あわてて1個々指差しながら値段を言い出した。1個の値段が安いものは2元(30円)から高いものは50元(730円)までさまざまだが、平均すると1個あたり7元〜8元で買えそうである。

 
 息子たちをビックリさせてやろうと思い、私は決断した! オバちゃんに向かって私は言った!「この上に並べてあるタバコ全部1箱づづ買う!」。 オバちゃん座っていた椅子から飛び上がり「全部買うのか?」と大声で聞いてきた。 私「そうだ!」、オバちゃん「本当か?」「全部1個づつか?」としつこく聞いてくる。 今日までこの市場に出店して、このような買い方をされたことがないのであろう。  
 興奮した表情のオバちゃん隣の惣菜店から電卓を借りてくるや、ケースの上に並べられたタバコを1個づつ値段を声に出しながら入力し始めた。ごまかれないようじっと見ていると全部で27種類の値段を打ち終わり、大声で叫んだ!「232元よ!謝謝!」

 再び隣の惣菜店からビニール袋をもらってくるや、袋にタバコを入れながら「どこから来た!」と笑顔で問いかけてきた! 毎度のパターンで隣の惣菜店の店主らしき男性までが割り込み質問攻めが始まった。

 
 市場を通り抜け庶民生活が漂う裏通りに出てしばらく歩くことにした、玄関前に出したミニ椅子に座り往来する人々を所在なげに眺めている老人がいたるところにいる。 1時間ほど裏通りを散策し、思明路の繁華街に出てデパート入りブラブラしていると自由時間も終わりに近づいてきた。
 タクシーを止めホテルに戻ると、すでに旅仲間全員が集合している。私以外の旅仲間は繁華街に出ることもせずホテル周辺を散策して自由時間を過ごしていたようだ。私の到着を待っていたように点呼をとるや、待機していたバスに乗り込んだ。
 市内のレストランで昼食を済ませるとアモイ空港にむけバスは走っていく。

 
 車中では広州空港での入国出迎え以来今日まで15日間、私達と旅を共にしてきた中国側元受旅行会社(西安市)の添乗員「李女史」がマイクを握り、別れの挨拶を始めた。
 アモイ空港で私達の出国手続きを終わらせると、彼女はその足でアモイ駅まで戻り汽車で西安まで帰ると言う。何とアモイから西安まで32時間かけて帰るというのである。
会社の命令で航空機は使用させてくれないと言うではないか! 私達一同聞いていて呆れてしまった。交通費よりも人件費が安い中国ならではの話だ。


 新築間もない真新しいアモイ空港に着いた。 ピカピカに磨かれた搭乗待合室まで続く通路の両側にはみやげ物売店や免税店がづらっと並んでおり、どの店の店員も私達に日本語で売り込みの声を掛けてくる。
 まだ150元ほど中国元が残っているので免税店で中国酒を買うべく品定めをしながら、搭乗時間まで時間つぶしすることにした。
 帰国便は13時45分発日本航空で、成田着は18時30分である。日本航空なので機内では日本銘柄のプレミアムビールが飲み放題だ!
やがて中国語、英語、日本語で搭乗開始アナウンスが流れた。いよいよ中国ともお別れである。

定刻どおりJAL便はアモイ空港を離陸した。機内サービスのビールとワインの酔いでウトウトしていると、間もなく成田空港到着の機内アナウンスが流れだした。
成田空港についてもその足で今日中に札幌まで帰ることができない。私の場合は他の旅仲間と違い、空港内のホテルに一泊して明朝一番で羽田空港にむかい、それから札幌行きの便に乗ることになるのだ。今夜は一人さびしく格安ホテルで眠りにつくことになる。毎度のことだが、札幌から成田発着の国際線は前後泊が必要でコストが高くつく。
もう2度と成田発で中国に行くのはやめよう!間もなく千歳発着で北京線と大連線が就航し便利になるはずだ。

               中国仙境・山水画街道を行く 終わり
             
( 旅 15日目の出費)
        
      ミネラルウォーター 2元× 2本   = 4元    (60円)
      タクシー代                 37元   (540円)
      土産のタバコ               232元  (3370円)
      昼食ビール     15元 × 1本  =15元    (225円)
           自分への土産の中国酒         145元  (2100円)
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                   合計       433元  (6295円)  
   

       (15日間で中国国内で使った小遣い総額.1,339元 (19,600円))