その13 水墨画の世界が広がる世界遺産「武夷山」で天游峰に登る
世界遺産 中国仙境・山水画街道を行く
|
旅13日目、世界遺産「武夷山」天游峰
中国入りして今日で13日目、中国南部台 ホテル前に待機する三輪自転車タクシー
湾海峡に面した福建省「武夷山市」のリゾート地区のホテルで朝をむかえ、旅も残すところあと3日となってしまった。
昨夜はツアーを主催企画したY旅行社の添乗員のY女史の心のこもった気遣いで日本食の「ソーメン」をたっぷりご馳走になり、久しぶりに満腹感をもって就寝に着いたのであった。 私達はこの武夷山市のリゾートホテルに2日間滞在し中国最高の奇観と称される世界遺産の「武夷山」を観光して歩くのである。 今日のホテル出発は遅めの9時となっており、早朝覚醒症の私には時間がありあまりすぎる。
バス出発時間まで市街地を散策することにし 武夷山の土産物店ばかりのショッピングモール
てホテルの敷地を出ると、ゲート前の路上
に待機していた三輪自転車タクシーの運ちゃんが一斉に「俺の車の乗れ!安くしてやる」と声をかけてくる。 相手にせずリゾートホテル街を抜けていくと土産物店ばかりが集まったショッピングモールが現れた。
洋風建築のおしゃれな何十軒もの店が密集し、どの店の店頭にも武夷山の山の幸である乾燥キノコ類や名産の岩茶が並んでいる。 まだ朝が早いせいかどの店も掃除の真っ最中だ。
幹線道が交差する市街地までくると、彼方に朝靄がかかった武夷山の山並みが見えだした。 今日は終日あの山並みを歩き回るのだと思うと、気持ちが高ぶってくる。 ホテル近くから望む武夷山の山並み
ホテルに戻り出発準備を整えバスの出発までロビーで待機していると、武夷山旅游社の若い女性ガイドの干さんが私に「佐藤さん今日はよろしくお願いします」と声をかけて来た! 何が、「よろしくお願いします」かというと!この現地ガイドの干さんとは、昨夜レストランでの夕食時にちょっと会話をしたのだがその話が凄いのだ。 彼女の話では、旅行社に勤務しながら9ヶ月間独力で日本語を学び、日本語の初歩をやっと話せるレベルになった途端、突然会社から日本語ガイドとしてのデビューを命ぜられ、何とその第1回目の初デビューが私達のグループだと言うのである。
昨夜夕食の席で彼女が私達にむかい、日本語で武夷山ガイドとしての自己紹介したのだが、その日本語はまだまだ片言で、何とか言ってる意味が理解できるという程度であった。単語を羅列するだけで日本語を話すというレベルにはまだ程遠いのである。
緊張して片言単語をあやつりながら自己紹介する彼女を見るに見かねて、私がいくつか日本語の間違いを中国語で指摘してあげたところ、どうもすっかり頼りにされたようだ。 日本語ガイドとしての初デビューで不安と緊張でいたところ、今朝のロビーで私を見かけ第一番に声をかけて来たのだ。 しかし旅行社も罪なことをする。 20歳を幾つか過ぎたばかりにしか見えぬうら若い彼女を、わずか9ヶ月あまりの日本語学習途中のところで、ぶっつけ本番で日本語ガイドとしてデビューさせたのである。
私は思った! 戦力にはならないがこの2日間できるだけ彼女の傍にいてあげようと。 日本語の単語の使い方間違いぐらいは中国語で指摘してやれる。
私達が2日間かけて観光する「武夷山」は 武夷山観光のメインエリア武夷山風景区
1999年に中国で4番目のユネスコ世界遺産に登録された。その武夷山観光のメインエリアとなるのが「武夷山風景区」で奇秀甲於東南(奇観にして秀逸な風景は中国東南で武夷山が一番)と称される。
武夷山には36峰、72洞、99岩があるとされ、碧水丹山(青い水と赤い山)とたとえられる水墨画そのままの世界が広がっている。風景区は、九曲渓景区、天游峰景区、桃源洞景区、水簾洞景区などのエリアに分けられており、今日の私達の観光スケジュールは天游峰景区と水簾洞景区を歩き回ることになっている。
天気は快晴ですでに気温が上がり始めている。干ガイドの言うことには日中最高気温
は30度を超えるだろうということである、 まず最初に目に飛び込んでくる大王峰
暑い1日になりそうだ。
バスは今日最初の観光である武夷山風景区の「天游峰」にむかってホテルを出発した。 10分ほど走ったところで市街地にかかる九曲渓という川に架かる武夷山大橋を渡った途端、さっそく車窓から「大王峰」(右画像)と呼ばれる奇峰が目に飛び込んできた。
歓声とともに全員が車内から一斉にカメラを構えシャッターを切り出す。 まだ朝靄が残っており、撮影にはあまり適さないがデジカメである! 何枚でも撮影してダメなら破棄すればよい。
渓谷沿いの道を走っているとバスの窓下には九曲渓の川下りのイカダが列をなして下っ 九曲渓を下って行く竹のイカダ
ていくのが見える。 私達も明日この川下りの予定になっている。 やがて九曲渓の第五曲に架かる橋を渡ったところでバスを下車し、ここからは竹林の中の遊歩道を歩いて行くことになった。 橋の下を流れる川には竹を組み合わせたイカダが続々と連なって下っていく、さすが中国でも有数の観光地だけあるものすごい数だ。
遊歩道の前方には、これから私達が登ることになる天游峰と、その頂上へ向かって絶壁を登る蟻の様な人々が見える。 やがて巨大な屏風のように切り立った「隠屏峰」といわれる岩山に行く手を阻まれた。 ここからが今日のメイン観光「天游峰景区」で、武夷山風景区の中で最も美しいと称されるところだ。 天游峰景区の巨大な岩山隠屏峰
隠屏峰を見上げながら進むと、天に向かって入り口の開いた「茶洞」とよばれる洞窟が現れる。 この洞窟には仙人が住み、仁でもって医療に尽くした医者に茶樹(昔お茶は薬品だった)を与えたという伝説があるらしい。
やがて周りを天游峰や隠屏峰などの奇峰に囲まれ、いかにも仙人が出てきそうな雰囲気の漂う場所に出た。 狭い広場になっており先には天游峰に登っていくための石段が見える。 広場はすでに身動きがとれないほどの登山客でごった返している。 私達はここで呼吸を整え、水分補給し、杖を取り出しいよいよ石段に取り掛かった。
頂上にある天游閣に向かって石段を登って 前後左右を挟まれ押されるようにして登る
いくのだが、この石段数が何と約1000段あるというのである! 半端な石段数でない。 まして私達はシニアでしかも今日は快晴の炎天下である。 途中でへばってしまい動けなくなるのではないかと不安もよぎるが、その場合は駕籠かきのお世話になることにして全員一歩一歩石段を踏み出した。
狭い石段の登山道は身動きがとれないぐらいの観光客で、前後左右を人々に挟まれ押されながら登る。 ちょっと登ってはすぐ動きが止まる、また動き出すとすぐ動き止まるということの繰り返しで遅々として進まない。 流れが進まない原因は日本では考えられない中国ならではの事情がある。
狭い登山道でカップルが景観を背景に写真 まさに蟻の行列状態だ
をとるべく、流れに逆らって立ち停まってしまうのだ! そしてすぐシャッターを切るならまだしも、カメラを構えたまま延々とポーズつくりに専念するのである。 後ろに立ちどまっている人達がイライラしていても一向に意に介さないのである。
中国旅行をした人ならよく目にしたと思うのだが、カップルやグループ同士の写真撮影は、まるでモデル気取りでポーズが決まるまでシャッターを押さないのである。 そのポーズが決まるまでの時間がまたメチャ長い! 足を上げたり手を挙げてみたり、腰をひねったり、イライラする時間が流れるのだ。
日本人にとっては見ていてもアホらしくなり、蹴っ飛ばしてやりたい気持ちを押さえる 天游峰に登る途中からの九曲渓の景観
のに苦労するほどなのだ。
そのどうにもならない連中がカメラを構え立ちどまる毎に、先に進むことができないことの繰り返しをしながらも、なんとか序々に登って行く! 登山道はまさに蟻の行列である。ゆっったりとした動きの私達に晴天の炎天下、30度の日差しがじりじりと照りつける、汗が吹き出てきた。
やがて中腹まで登りふり返ると絶景が広がりだした。 眼下には明日川下りする予定の「九曲渓」の6曲、7曲の景観が広がり、エメラルドグリーンの川をイカダで下って行く人達が豆粒のように見える。
とにかく暑い!汗が吹き出る! 持参したペットボトルの水が底をついた。 流れに身を任せゾロゾロ登っていくと、やがて頂上の展望台がある天游閣に着いた。 観光客で混み合っていた為、ゆったり休み休み登れたせいで、なんとか途中でへばることもなく頂上まで着たが、全身からは1年分の汗が流れ出た感じだ。
世界遺産「武夷山天游峰」からの絶景
天游閣展望台からは、1000段の階段を登ってきた苦労を補って有り余るほどの絶景が疲れを癒してくれる。 さすが中国で4番目に世界遺産に登録されるだけのことはある。 しばし景観を楽しむと今度はツヅラ折れの下り坂で麓まで下って行く。 下り道に入った途端、やたら駕籠と交差するようになった。 頂上までは登ったがへばってしまい駕籠で下山する者、私達が下っている下山道を逆に駕籠で登ってくる者(この道のほうが斜面がゆるやか)などが、次々と私達を追い越していく。 乗っている連中は皆一様に私同様肥満気味の体型だ! やっぱり肥満は高くつく。 これを二人の駕籠かきが担いで斜面を上り下りするのである。 仕事としてはこれほど重労働のものはない。 ちなみに天游峰の駕籠かき賃は230元(3450円)で、二人の駕籠かきで割ると一人当たり1725円の手間賃だ。
眼下に広がる九曲渓の景観と下り石段の足元を交互に見ながら下っていくと、頭上か 天游峰を下山すると芝生公園がある
ら目の前の石段にペチャと水滴らしきものが降ってきた! ギョッとしてよくみると何と!痰ではないか!。 驚愕して頭上を見上げるとツヅラ坂を大勢の中国人客が連なって下ってくる。 そのうちの誰かが下に向かってペッと吐き出した痰が私の目の前に降ってきたのだ! 冗談ではないのである!これは本当の話なのだ。 中国5000年の歴史のなかで中華民族にしみ付いてしまった、世界に名だたる中国人の悲しい習性(所かまわず唾、痰を吐く)なのである。
どこにいようが、場所柄も考えることなく、習性で思わずペッと吐き出してしまうのだ。テェシュペーパーなど必要がないのだ。
(こんなこと書いたら中国政府から二度と中国に来るな!と抗議が来るかも知れぬが、あまりにひどい!書いてやる!)
腹が立つがいかんともしがたい思いで、今度は前方だけ見て歩かず上を向いて歩くことにした。 上ばかり向いて歩いてはせっかく眼下に広がる景観が楽しめぬが、頭に痰が降りかかるのだけは避けねばならぬ!。 まったく毎度のことだが中国に来ると高めの血圧が益々高くなる。(そんな思いを繰り返しながら中国旅行もゆうに30回を超えた)
世界遺産「武夷山天游峰」からの景観 (画像をクリックすると拡大画像になります。)
天游峰を登る人の群れ |
蟻の行列で登っていく |
天游峰からの景観 |
|
|
|
巨大な岩山の隠屏峰 |
天游峰から望む九曲渓 |
天游峰からの景観 |
|
|
|
武夷山「水簾洞景区」〜武夷山茶葉研究所
いったん武夷山市内に戻り昼食を済ませる 何百mも続く土産物店
と、午後からは最も武夷山らしい風景が見られる水簾洞景区の観光にむかう。
再びバスに乗り碧石岩景区まで走り観光売店が連なる一角の路上で下車する。 何百メートルも続く売店の軒先をひやかしながら渓谷の遊歩道を奥へ進んで行く。
武夷山といえば世界遺産の景観以外にも有名にしている物がある。「武夷岩茶」(ウーロン茶に加工される)の産地として全国に知られたところでもあり、私達が日頃飲んでいるウーロン茶もここ福建省産が多い。
渓谷沿いの遊歩道の脇には茶畑がどこまでも続いている。
しばらく歩くと前方に巨大な岩山が現れ、 絶壁に挟まれた遊歩道を進んで行く
遊歩道はその岩山のそそり立つ絶壁に挟まれた渓谷に入り込んでいく。 あたりは龍峰岩、碧石岩、蓮花峰などの名が付けられた奇岩、奇峰が現れ目を楽しませてくれる。
やがて武夷山最大の高さ、幅ともに100mという巨大な洞窟である「水簾洞」に着いた。
洞窟の上には泉が湧き出ており、その水は100mの滝となり、洞窟の前を流れ落ちているとガイドの説明だったが、晴天続きで雨不足のせいなのか水滴がしたたり落ちている程度のものだった。
洞窟もこれだけ巨大だと凹凸のある崖のようにしか見えぬ。(右下画像)
ちょっと一服後、再び来た道を戻り、本日最後の見学 巨大な洞窟水簾洞
である「武夷山茶葉研究所」にむかうのだが、さすがにこの時間になると、午前の疲れが出てきて歩きが緩慢になってきた! だらだら歩きで渓谷の遊歩道に長く分散してしまったが、何とか全員バスの待機場所まで戻る。
「武夷山茶葉研究所」に入館すると研究所とは名ばかりで、さまざまな武夷山茶(ウーロン茶)が陳列されいる、ただの販売所だ。
売店の小姐が入れてくれる武夷岩茶を試飲させられ、あとはお決まりの今日だけ特別価格という小姐の熱心な売り込みが始まるパターンとなった。
今までの経験から試飲で飲んだ香りのよい美味しいお茶と、買って持ち帰るお茶は中身が全然違うのだ!何度となく騙されているので絶対買わぬ。 化粧箱入りのお茶を持って迫ってくる小姐から逃げるようにバスに戻る。
炎天下で汗を吹き出しながらの武夷山観光の1日目が終った。 明日はもっとも楽しみにしている武夷山九曲渓の川下りだ!
武夷山「水簾洞景区」〜武夷山茶葉研究所の景観(画像をクリックすると拡大画像になります。)
水簾洞景区の武夷岩茶畑 |
水簾洞景区の巨岩 |
水簾洞景区からの奇峰 |
|
|
|
旅その14「世界遺産「武夷山」竹の筏で九曲渓川下り、美しい港町アモイ 」へ つづく
( 旅 13日目の出費)
ミネラルウォーター 2元 × 2本 = 4元 (60円)
ミネラルウォーター 1.5元 ×1本 = 1.5元 (22円)
昼食ビール 15元 × 1本 =15 元 (225円)
夕食ビール 15元 × 1本 =15元 (225円)
________________________________________________
合計 35.5元 (532 円)
(13日間の小遣い累計出費 887.4元 (13.311円))
|
|