三国志街道を行く




宝鶏の飲食店で好奇の視線

昨夜は人口360万の宝鶏市駅前のホテルにチェックイン後、O・M両氏と連れだって夜の繁華街に飲みにくり出した。
 中国は日本と違ってバーやキャバレーは存在しないので、清潔な食堂かレストランを探して夜の街をぶらつき、これならという一軒の小ぎれいな飲食店を見つけ入りこむことにした。店内の従業員とお客連中が一斉に私たちに視線を浴びせてくる! 変な奴が入ってきたという目つきだ! 中国人から見れば私達はどうみても中国人には見えない格好をしている。 O氏は朝起きてから寝るまで愛用のゴルフ帽をかぶりっぱなしで、夜でも食事の時でも帽子をかぶったままだ。私といえば同年代の中国人なら絶対着ないような派手な服装をしている。

 店内客全員の好奇の視線を浴びながら席に着くと、小姐(ウエートレス)が緊張の表情でメニューを持って席に来た。
 私は半分あきらめつつ小姐に開口一番聞いてみた! 私「キチンと冷えたビールあるかい」?すると小姐、外国人と思い緊張して席に来たら、突然中国語が飛び出したのでキョトンした顔をしている!
 小姐ちょっと間をおくと大きな声で「有ります」と答えた!ウソだろうと思いつつ2本注文したら本当に冷えたのを持って来た、いったいどうしたことだろう?この街には冷えたビールを飲む中国人がいるのだろうか?

 ビールだけでは店に悪いので「つまみ」になるものをと思いメニューを見るが、どんな料理か想像がつかない!仕方ないので小姐にこの店の一番の自慢料理を2品持って来てと注文した。 料理が出来てきた!牛肉をスライスして香辛料で炒めたもので、食べてみると結構うまい! すると何と!店の厨房から数名のコックが店内に出てきて、店内の小姐やボーイ達と一緒になり、私達の会話と飲み食いをジッーと見ているではないか。よほど日本人がめずらしいらしい!おそらくこの店に日本人が客として来たのは初めてなのだろう!
熱い視線を浴びながら緊張しつつ飲食を終え、勘定をすると38元(520円)だった。

早朝の宝鶏駅周辺散策

 こんな一夜が明けたが、宿泊はさすがに4ツ星ホテルだけあって、按摩嬢出没を心配することもなく快適に睡眠ができた。
 部屋の窓からは真ん前に駅前広場が見え、まだ早朝の6時なのにぞくぞくと人が集まりだしている!?
 今日の出発時間は遅めの9時なので、7時に朝食を終らせると、ひまつぶしにホテルの周辺を散歩することにした。まず駅前広場に行くことにした。
 ラジカセの音楽に合わせて踊る女性グループ、太極拳・剣舞・社交ダンス・武術など、さまざまなグループが、広場いっぱいに展開して自分達の世界に没頭している。圧巻は何といっても踊るおばちゃんグループだ!いくつものグループ(1グループ30〜40名ぐらい)が、グループ同士はり合って中国音楽を大きく鳴らし、数名のリーダーを先頭に恥ずかしげもなく気取って腰を振り気分を出し踊ってるのだ! 見ているほうが恥ずかしくなってくる、グループの中を通り抜け駅舎に近づくと、駅前の駐車場は大きな荷物・リュック・バッグを持った老若男女が黒山のようにたむろしている。軽く1000名は超えている、大半が豊かさを求め田舎から出てきて仕事を求める人達だ!

 広場を一周して駅前からホテル横の商店街の方に行くと、大きなショッピングセンターが2店ある。営業開始前の8時頃なのに、何と!両店ともすでに買い物客が道路にまであふれかえって開店を待っているではないか!
 人ごみに近づくと大半の人が特売チラシを手にしてる、今日は特売の初日のようだ!すると突然、黒山の買い物客が入り口に向かってワァーと動き出した!
 8時を少しすぎたところで店側があまりの客の多さに開店を早めたのだ!

 人ごみの流れに乗って私も一緒に店内に入ると、客の大半がある1ヶ所の売り場に走り込んで行く、そこには「冬瓜」が山積みされており皆が奪い合うように買い物かごに入れている!レジで特売チラシをもらい店外に出ると、そろそろバスの出発時間が迫ってきた。
 ホテルに戻りながら特売チラシを見てみると、婦人用自転車199元(2680円)の価格が飛び込んできた!何という安さ!大瓶ビール2元(27円)・ 豚もも肉100g 1.3元(17円)・ 紹興酒(料理用)500mリットル1.9元(26円)などの売価が並んでいた。

つかの間の日中友好ができた!

 
定刻9時バスはホテルを出発した。 今日最初の観光である宝鶏市内にある中華民族の祖先とされている「炎帝」を祀っている「神農祠」に向かうと、巨大な建物の中にある巨大な塑像を見学した。
 神農祠の見学を終えバスを停めている公園広場に戻ると、バスを停めた駐車場広場で老人のグループが書道の練習をしている。
 空き缶に入れた水を墨代わりに三尺ぐらいの長さの筆で、広場の石畳の上に大きな字で漢字を書いている。すごい達筆だ!墨が水なので2・3分もするとすぐ乾いてしまい、広場を汚さずにすみ何度でも同じ場所に書くことが出来る仕組みだ!

 私達が近寄って覗き込むと日本人と分かったのか舗装の上に「歓迎日本朋友到中国来!」と書いてくれるではないか!これを読んだ私達全員から拍手が起きる!
 すると老人達が私達に向かって、こんどはお前達も何か書いてみろと筆を渡そうとするではないか。幸い私達の中に書道の先生が一人いた、彼が日本人を代表してお返しに、「謝謝、祈念永久日中友好」と書いた!これも達筆だ!今度は中国人達から拍手が起きる。これが契機となり何度かお互いに漢字で書道を披露し合った。
 この頃には私達の周りは、地元中国人で黒山の人だかりで字を書くたびに大きな歓声と拍手が起きる!つかの間の日中友好の場面だった。

 次の観光は世界唯一の「青銅器博物館」で、紀元前に造られたさまざまな国宝の青銅器を見学したが、静まりかえった館内は我々日本人以外誰もいなかった。
 宝鶏市内の観光を終え、バスは今日のハイライト観光地である三国志の「五丈原」の古戦場に向けて、刈入れ間近のトウモロコシ畑が延々と続く、細い田舎道を走りだした。

その13へつづく