三国志街道を行く




漢中市内のさまざまな史跡

 バスは漢中市内の小学校の校門前に横付けされた。私達は校門を入り校庭の隅にある三国志の武将、「鳳徳」と「馬超」関連の史跡「東塔」を見学し、ついでに校舎のトイレを使用させてもらったが、案の定、学校のトイレといえども掃除がされていなくて不衛きまわりないものだった。いったい便所当番制度は無いのか!

 次にバスは市内中心部の繁華街デパート横に停車した.。このデパートの玄関わきが、三国志武将の「魏延」が同じ武将「馬袋」に刺し殺された場所で史跡になっており、記念の石碑があるのである。
 中国はどこに行っても史跡だらけだ、庶民の日常生活に溶け込んでおり、住宅街・学校の校庭・繁華街の道端・工場の敷地など案内されて「エッこんな所に!」とビックリする場面が多い。


 午後の観光は郊外の渓谷に二千数百年前に造られたという古桟道があり、近年巨大な「石門ダム」が完成し水没してしまったのだが、史跡として残すため復元されたということでそこえ向った。 
 バスは断崖の細い道を走りこれ以上進めないという所で停まった、我々はそこから2キロほど断崖絶壁の道を歩き、いくつもの荒掘りした真っ暗なトンネルをぬけ巨大な石門ダムに着いた。
 日本最大の黒部ダムなど赤ちゃんに思えるほど巨大で、その石門ダムの上に立って渓谷を見下ろすと、はるか下方の崖っぷちに復元された桟道が延々とつづいている。
 我々はしばし絶景を眺めながら休息し、今日の観光を終え早めの午後3時にはホテルに戻った。

日本の電化製品の衰退と
韓国製品の隆盛

 ホテル到着後夕食まで自由行動の時間となったので、O・M両氏と連れだって人口50万ほどの漢中市内の散策に出かけることにした。 
ぶらぶらと歩きながら繁華街のデパートに入ると、今日は日曜日のせいか店内は人込みでごったがえし、特に携帯電話コーナーは若者で異常な熱気である。
 陳列されている携帯ブランドは「ノキア・モトローラ・サムソン・エリクソン」で日本製のブランドは一品もない。特に韓国製のサムソン製品が幅を利かし、デパート以外の街角でもサムソン製品の販売店をよく見かけた。
 かって中国のデパートの家電売り場では、日本製が圧倒的な人気と強みを発揮し、あこがれの的であり、売り場は日本製のものであふれかえっていたが、ここ最近はどこのデパートでも家電売り場では中国製と韓国のサムソンとLGブランドばかりで、残念ながら日本ブランドは見かけなくなった
 唯一日本製品が陳列されてるコーナーがあった、それはビデオカメラでソニーとパナソニック・ビクターが家電売り場の隅にひっそりと陳列されていた。それにしても、いま中国では韓国企業が猛烈な勢いで進出しているのをあちこちで見かける、乗用車にしてもホンダのHマークに似た商標の、韓国製ヒュンダイ(現代)が着実にシェ アーを広げており、この街でもよく走っている。

相変わらずの温いビール

 散策を終え夕食会場のレストランに行くと、またしてもビールが温くてまずい!ビールの話にこだわっているが、何しろ連日の気温が30度を越えているのである。
 皆日中の観光で歩き回りかなり汗をかき喉が渇き、酒が飲める旅仲間は昼と夜の食事には、水分補給のミネラルウォーターがわりの冷たいビールを渇望しているのである。今夜も全員がコップに注がれたビールを一口飲んだだけで、温い味にそれ以上飲もうとせず会話も盛り上がらない、しらけたムードになってきた!(ダム観光での歩き疲れと連日の飲み疲れもあるが)

 私はホテルの部屋を出る時、日本から持ってきたペットボトルに入れ替えたウイスキーボトルと、街角の小さな売店で買った凍らせたミネラルウォーターを、このレストランに持参してきていた。
 一人ウイスキー水割りを作って飲み始めると、酒好きな旅仲間が羨ましそうにジーと見ている。これを見てさすがに中国人ガイドが申し訳ないと思ったのか、あわてて携帯電話を取り出した! 冷やしたビールを売ってないかと、あちこちに電話をかけているではないか! すると急ぎ足でレストランから出て行くと、しばらくして冷えたビールを抱えて戻って来た。 私達に誇らしげに言った!「今日は私のおごりですビール代を無料にします、好きなだけ飲んでください!」

 夕食後、ビールをおごってくれた中国人現地ガイドが、ビール代金の元手を稼ぐために、バックマージン稼ぎのアルバイトを始めた。
 私達にむかって、「皆さんお疲れでしょう真面目なマッサージに行きませんか?」「私が本当のマッサージ店に案内します」 「一人150元(2000円)です」「安いですよ、いかがですか!」「希望者は手を上げて下さい!」ボラれた高い料金であるにもかかわらず6名が手を上げた。
 O、M両氏と私は先に宿泊した綿陽市の経験から本当のマッサージ料金の相場を知っていた!一人40元(550円)が相場である!一人当たりちょうど100元(1350円)のピンハネではないか!

 私達3人は皆と別れ、ホテルから歩いて300mほど先に「漢中駅」があるので見に行こうということになった。
 ぶらぶらと駅の待合室に入っていくと、はるか福建省(台湾の対岸)の福州行きの寝台列車が出発するところだった!しばし緑色の夜行列車の発車の模様をながめ、改札の上の列車ダイヤの掲示板を見ると、漢中・北京間(距離約2500キロ)の料金表があり普通82元(1100円)快速96元(1300円)と書かれていた。
 薄暗い漢中の駅前広場では、またしてもラジカセの音楽に合わせ中国人女性が集団で踊っている!夜の9時をすぎているのに熱心なことだ! どこに行っても踊っている!中国人は踊りが好きな民族らしい!                          


その11へつづく