脳脊髄液の漏出、生産低下、吸収亢進などを原因として、脳脊髄液が減少する疾患の総称です。 脳脊髄液漏出症診療指針(2019年出版)によると、「脳脊髄液腔から脳脊髄液(髄液)が持続的ないし断続的に漏出することにより減少し、頭痛、頚部痛、めまい、耳鳴、倦怠感などさまざまな症状を呈する疾患である」と定義されています。
脳脊髄液の漏出には、明確な脳脊髄液の漏出画像がある脳脊髄液漏出症と、脳脊髄液圧の低下がみられる低髄液圧症候群があります。 また、脳脊髄液の漏れが微量であるため、漏れを示す画像が明確ではない脳脊髄液減少症があると言われています。 これらには脳脊髄液の漏出を止めるための治療法「硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)」が有効であるということが分かっており、このうち脳脊髄液漏出症と低髄液圧症は客観的な事実があるため、平成28年4月より硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)が健康保険適用になりました。 これに対して、脳脊髄液の漏れが微量であるため漏れを示す画像が明確ではない脳脊髄液減少症は、症状が似ていて同じ治療法で治癒改善するのにも関わらず、硬膜外自家血注入療法が保険適用となっていません。 (令和6年6月1日現在) この違いを理解していないと、診断基準に該当しない脳脊髄液減少症までもが保険治療できると誤解を受けてしまう恐れがあるため、「絆会」では脳脊髄液漏出症・低髄液圧症候群と、脳脊髄液の漏れが微細な脳脊髄液減少症を、それぞれ分けて呼称しています。
脳脊髄液減少症は、未だに解明されていないところの多い疾患です。 そのため、診断基準が発表になった後も、脳脊髄液減少症の研究が続けられています。 |
硬膜外自家血注入法(ブラッドパッチ)について |
■ 硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ療法)とは ※自家血→患者本人の血液 自家血を20〜30cc採血し、造影剤を加えてレントゲン透視下で脊椎硬膜外腔に注入する治療法のことです。 ■平成23年、厚生労働省の「脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究班」が診断基準を発表しました。 ■ 平成28年4月より、下図の通り診断基準に該当するもの(脳脊髄液漏出症・低髄液圧症候群)に対して、 硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)に保険が適用されるようになりました。
■ 漏出症・低髄と「微細漏れ」の治療費は異なります 漏出症・低髄 →保険治療が可能 微細漏れ →自由診療 ■ 保険治療は病院基準を満たした病院に限られます(令和6年6月1日現在) 施設基準(3例以上の治療経験がある医師、入院、当直、緊急手術)を満たし、かつ保険申請されていること.。 患者が診断基準に該当する漏出症であっても、病院や医院が施設基準を満たしていないと保険治療は不可。 |
発症原因と症状 |
●発症原因 交通事故やスポーツ外傷などの体や頭への強い衝撃、発熱、熱中症、極度のダイエット、出産時等のいきみ、 原因不明など。漏出症では穿刺や手術などの医原性が原因となることがある。 ●症状
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診断・検査・治療法 |
症状、問診だけで脳脊髄液減少症と診断されることはありません。 脳脊髄液減少症と診断を受けるには検査が必須です。 診断基準における漏出症の確定を得るには、CTミエログラフィーまたはRI脳槽シンチグラフィーいずれかの所見が必要です。 なお、発熱した後など「脱水」が原因と思われる場合は、まずは保存的治療をお試しください。 それでも症状が改善しなかった時は必ず受診してください。
【保存的療法(臥床安静と水分補給)】
【各種パッチ(注射器使用)による治療方法】
【外科手術】 ブラッドパッチで効果がない難治の場合に硬膜縫合手術 硬膜下血腫を合併し手術が必要と判断された場合に穿頭血腫除去術 |
硬膜外自家血注入法(ブラッドパッチ)後の安静 |
ブラッドパッチ後は安静を保つ必要があります。 安静期間は3ヶ月が一般的ですが、個人差があり、予定よりも早く回復することがあります。 3ヶ月経過しても変化が見られないときは医師にご相談ください。 ここでは一般的な安静の仕方をご紹介します。
近年、発症後3ヶ月〜6ヶ月くらいで治療に至る方、仕事を続けながら治療を受けたいという方が増えています。 早期治療の方は、まずは保存療法や生食パッチを試すことをお勧めします。 それでも回復しなかった時はブラッドパッチに臨むことになるのですが、安静期間のことを考え、お仕事を続けられる方は 最低でも3ヶ月はお休みを取る必要があります。 状況によっては、さらに療養期間が長引くことがあります。 周囲の協力が不可欠ですので、ご家族などにご相談の上、治療に臨まれることをお勧めします。 |
経過観察と社会復帰 |
ブラッドパッチ後、3ヶ月経過した時点で症状と画像(脊髄MRI/MRミエロなど)で効果を判断し、治療を完了、もしくは2回目のブラッドパッチの検討をします。 しかし、たとえ硬膜の損傷が修復しても、諸症状が消失していることは少ないのが現状です。 硬膜の修復と、症状の消失にタイムラグがあるため、治療を受けた方は混乱してしまうのです。 完治後も残る症状については対症療法となります。 例えば、片頭痛が残っているのであれば片頭痛用の薬が処方される、という具合です。 ただし自然に症状が消えるのを待つしかない症状も多く、そのため療養期間が長くなる傾向にあります。 治療後の社会復帰は一般的に「治療に至るまでの経過年数に比例する」と言われています。 治療前の状態によっても回復の仕方が変わってきますので、必ずしも正比例するとは言い切れないのですが、早くに治療に至れば早く回復し、治療に至るまでの経過年数が長ければ回復は緩やかになる傾向にある、ということは言えるようです。 それゆえに個人差が大きく、治療後6ヶ月前後で社会復帰される方もおられれば、回復に何年もかかることもあるのです。 |
社会保障について |
診断基準が発表になってから、各々の社会保障に変化が生じています。
それぞれの専門家にご相談をされることをお薦めします。
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治療可能な病院について |
各自治体で相談・診療、治療が可能な医療機関の調査を行っています。 詳しくは各自治体のホームページ等をご参照ください。
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令和 1年 6月13日 令和 6年 6月 1日 改訂 |
HP管理者 小川千晴 |