日本消化器内視鏡学会甲信越支部

20.診断・治療に苦慮している難治性下痢の一例

山梨大学 医学部 第一内科
小宮山 泰之、鈴木 雄一朗、岩本 史光、津久井 雄也、小林 祥司、吉田 貴史、浅川 幸子、山口 達也、植竹 智義、大高 雅彦、佐藤 公、榎本 信幸

症例は52歳男性。2012年7月より1日5行以上の持続性水様下痢を認め、近医より整腸剤等処方されるも軽快せず。その後、下部消化管内視鏡検査、カプセル内視鏡、ダブルバルーン内視鏡施行後、2013年6月当科に精査加療目的で紹介された。既往歴は、29歳よりC型肝炎、30歳頃IFN治療によりSVR、40歳に悪性濾胞リンパ腫病期IVで4年間化学療法、自家造血幹細胞移植を行い寛解維持継続している。バンコマイシンで発熱発疹のアレルギーを認めるが、食物アレルギーは認めず。検査所見では、カプセル内視鏡:空腸で著明、遠位回腸でわずかな、絨毛構造の脱落および細顆粒状を確認。ダブルバルーン内視鏡検査:深部の粘膜面は萎縮している部位が散見、炎症性ポリープも認めた。小腸病理組織診断:軽度から中等度の炎症細胞浸潤を認め、絨毛構造は正常の小腸粘膜に比して平坦化し、不明瞭であった。蛋白漏出シンチグラフィー:3、6時間後では、左側腹部に淡く不明瞭な集積を認め、下行結腸寄りの集積を疑った。FDGPET:骨盤内を中心とした腸管への集積が目立ち、生理的な小腸の集積としては高い集積であった。HLAタイピング:DQ8陽性、抗TTG抗体:陰性、抗グリアジン抗体:陰性。ツベルクリン検査:6mm陰性。低γグロブリン血症:IgG227mg/dlであった。入院後、慢性下痢症の鑑別を進めながら、小腸病変の精査を進めた。小腸内視鏡所見、小腸病理所見からセリアック病を疑い、低グルテン食を開始した。排便回数は開始翌日より1日2回程度に減少し、食事指導後退院となった。一時軽快するも水様下痢が再出現、1日5行以上となり再入院となった。慢性下痢、小腸粘膜萎縮をきたす病態としてはセリアック病、クローン病、小腸リンパ腫、好酸球性胃腸炎、寄生虫感染、腸結核、薬剤性腸炎などがあげられる。本症例における経時的な内視鏡所見、血液所見などからこれらを鑑別し、診断および治療について議論したい。