日本消化器内視鏡学会甲信越支部

16.胃瘻カテーテル抜去後の瘻孔閉鎖不全に対してOver the scope clippingsystem(OTSC)が有効であった1例

新潟大学医歯学総合病院 消化器内科
荒生 祥尚、佐藤 祐一、本田 博樹、影向 一美、高村 昌昭
新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部
橋本 哲、水野 研一、小林 正明

症例は50歳台女性。31年前より全身性エリテマトーデスのためプレドニゾロン12mg/日を内服中であった。2012年に中咽頭癌にて舌亜全摘+両頸部郭清術を施行、栄養管理目的に胃瘻を造設し、ボタンバンパー型胃瘻カテーテル(カンガルーボタンII、24Fr×4.5cm)を留置した。2013年8月頃より経口摂取が可能となったため2014年1月に胃瘻カテーテルを抜去した。この時、瘻孔部には発赤があり瘻孔炎を認めた。抜去直後から瘻孔部より栄養剤の漏れが認められ、2日後も改善しないため当院へ入院となった。内視鏡像では3mm程の瘻孔を認め、クリップ(Olympus、HX-610-135、HX-610-135L)を用いて胃内から閉鎖を試みたが粘膜を把持することは困難で閉鎖するに至らなかった。PPI投与や胃管留置を行ったが瘻孔からの排液を認め続け、消化器外科にコンサルトし排液が継続するようなら手術の方針となった。しかしプレドニゾロン長期投与例でもあり、術後合併症の危険性も考慮し31病日にOTSC(Ovesco Endoscopy AG、Germany)を用いて内視鏡的閉鎖を試みることとした。最初は把持鉗子やアンカー(開き幅9mm)での把持を試みたが軸が合わず粘膜を把持できなかったため、瘻孔部全体を吸引し、アプリケーターキャップ内に引き込んだ。キャップ先端に装填されたクリップを鉗子口に装着したハンドホイールを回転させてクリップをリリースし瘻孔部を閉鎖した。術直後に瘻孔部を水洗しても漏れは認めず、体表から瘻孔部への細径チューブの挿入も不可能になった。33病日(術後2日目)のEGDでも瘻孔からの水の漏れは認めず、44病日(術後13日目)のEGDではデバイスを覆うように再生上皮の出現を認めた。OTSCは、従来内視鏡では縫縮が困難であった瘻孔も閉鎖可能な全層縫合器である。ステロイド内服下で瘻孔炎も認められた胃瘻カテーテル抜去後の瘻孔閉鎖不全患者に対して、OTSCにより内視鏡的に瘻孔を閉鎖出来、手術を回避することができた一例を経験したため文献的考察を含めて報告する。