日本消化器内視鏡学会甲信越支部

15.衣類誤食による消化管異物の内視鏡的除去の1症例

安曇野赤十字病院消化器内科
樋口 和男、須藤 貴森、張 淑美、望月 太郎、一條 哲也

【症例】29歳男性【既往歴・生活歴】複数回の異物誤食症、開腹手術歴あり、イレウス管管理歴あり【現病歴・経過】自閉症で重度の発達障害があり、施設入所して精神科通院中であった。X月Y日午前2時半ごろ、ぼろぼろになった長袖Tシャツとランニングシャツを持って施設職員を訪れ、飲み込んだと意思表示をした。当院救急搬送され、来院直後の鎮静下の腹部CTでは胃内に異物らしきものが充満しており、小腸内の2か所にも異物らしきものを認めた。明らかなイレウス症状は認めなかった。上部消化管内視鏡検査では胃内に細く切り裂いたトレーナーやランニングシャツが充満しているのを認めた。スネア、把持鉗子など用い、6回の操作で胃内の異物を全て除去した。小腸内の異物はそのまま経過観察したが、イレウス症状などは出なかった。衣類誤食は精神疾患など特殊な病態例でなければ報告なく、比較的まれな異物である。過去4年間に当院で経験した31例の消化管異物症例のまとめと合わせて考察する。