日本消化器内視鏡学会甲信越支部

13.肺癌切除後に無症候性骨髄腫が同時発症した進行胃癌の一例

新潟県立がんセンター 新潟病院 消化器外科
會澤 雅樹、松木 淳、丸山 聡、野村 達也、中川 悟、瀧井 康公、藪崎 裕、土屋 嘉昭、梨本 篤
新潟県立がんセンター 新潟病院 内科
加藤 俊幸
新潟県立がんセンター 新潟病院 病理部
川崎 隆

【症例】73歳、女性。既往歴として高血圧、高脂血症の併存と子宮筋腫、右肺癌に対する手術歴があり、3年前に異時性肝転移に対してSRTを施行CRが得られ、本年に肝転移再々発に対しRFAが施行し完全焼灼が得られていた。RFA後の評価CTで胃癌が疑われ、上部消化管内視鏡を施行し胃の腫瘍性病変を認めた。主病変は前庭部小弯前壁のType 2病変で、粘膜下進展を主体とし、当初生検がGroup 1であったため、転移性胃腫瘍が疑われた。再検時では低分化腺癌が認められ、同時に免疫染色にて肺癌のマーカーが陰性であり、原発性胃癌と診断した。PET-CTでは原発巣、#6、#8aリンパ節にFDGの異常集積を認め、リンパ節転移と診断した。術前評価では貧血、高蛋白、低アルブミン血症を認め、血清蛋白分画にてM蛋白が疑われた。血清Ca値は正常値で尿蛋白を認めなかった。血液疾患の併存が疑われたが、当院血液内科と相談の上で胃癌治療を先行しつつ血液疾患の精査を行う方針となった。輸血施行後、幽門側胃切除、D2+郭清、B-IIa再建を施行した。開腹所見では主病変の漿膜浸潤を認め、所属リンパ節腫大を多数認めたが、遠隔転移はなくR0切除であった。術後は胃内容排泄遅延があり、肺癌術後による混合性換気障害が併存していたが、回復し術後第20病日に退院した。術後採血でIgG-λ型の血清M蛋白が存在し、骨髄穿刺で異型性Plasma cellの増生が認められたため無症候性骨髄腫と診断された。しかし、化学療法介入の適応ではないとのことで経過観察となった。病理組織学的所見はAdenocarcinoma、por1>>tub2、L、Ant、Type2、55×40mm、pT3(SS)、med、ly1、v2、pN2(4/33)、H0P0CY0M0、pStage IIIAであった。摘出した所属リンパ節の多数に異型を伴う形質細胞様細胞を認め、免疫染色では形質細胞骨髄腫の髄外腫瘤と診断された。胃癌に対する術後補助化学療法として現在S1内服中である。【おわりに】肺癌術後の異時性転移治療歴と骨髄腫の併存があったため、術前診断及び病期評価が困難であった進行胃癌症例を報告した。