日本消化器内視鏡学会甲信越支部

12.十二指腸下行部のoozingを契機に発見された十二指腸原発DLBCLの一例

長野市民病院 消化器内科
多田井 敏治、山崎 智生、渡辺 貴之、岩谷 勇吾、関 亜矢子、越知 泰英、原 悦雄、
同病理診断科
長谷部 修
同放射線科
保坂 典子

症例は80歳代男性。既往歴・家族歴は特記事項なし。2012年5月近医にて上部消化管内視鏡検査(以後EGD)行ったところ、胃角部前壁10mmの白色扁平隆起を認め、生検にてgroup3、腺腫と診断され、当科紹介となった。当科のEGD再検でも腺腫であり、Helicobacter pylori 除菌療法にて経過観察の方針となった。2013年4月のEGDでは腺腫は縮小傾向を認めた。十二指腸下行部傍乳頭憩室辺縁より暗赤色の出血を認めた。出血源の確認が困難であったため、側視鏡に変更し観察したところ、傍乳頭憩室辺縁後壁側にoozingを伴う約2cmの潰瘍性病変を認めた。発生部位、形態より腫瘍性病変を考え、生検を施行したがGroup1であった。PPI内服の1カ月後のEGDでは、潰瘍底は改善し平皿様を呈しており、リンパ腫を疑い再度生検をしたがGroup1であった。さらにその約2カ月後にEGDを再検したところ同病変は深い不整な潰瘍性病変となっており、生検を施行したところ、8個中1個に異型細胞を認め、L26陽性よりDLBCLと診断された。PET-CTでは鎖骨上リンパ節、腹部動脈周囲リンパ節、十二指腸下行部に集積を認め、骨髄浸潤はなくstage3Aであった。なおIPI国際予後指標では2個で低中危険群であった。R-THPCOP3クール終了後のEGDでは潰瘍底は著明に縮小しており、同部位からの生検ではgroup1であった。6クール終了後のEGDではさらに潰瘍部は縮小しており、瘢痕化していた。またPET-CTでは異常集積は認めなかった。消化管原発悪性リンパ腫の発生部位別発生頻度は胃、小腸、大腸の順に多く、十二指腸では5.85%と比較的まれとされている。また組織型分類では濾胞性リンパ腫が多く、DLBCLは稀とされている。発生経過を追えた十二指腸原発DLBCLは比較的稀であり、文献的考察を加えここに報告する。