日本消化器内視鏡学会甲信越支部

10.14年間にわたりバレット食道の形態変化を観察しえたバレット食道癌の1例

長野市民病院 消化器内科
岩谷 勇吾、多田井 敏治、伊藤 哲也、関 亜矢子、越知 泰英、原 悦雄、長谷部 修

症例は80歳代男性。1999年8月に検診の上部消化管造影検査にて胃角部の異常を指摘され当院に紹介となった。当院で施行した上部消化管内視鏡検査では胃角に異常はなく、胃内もRAC陽性でH.pylori陰性胃と考えられたが、食道裂孔ヘルニア、逆流性食道炎、バレット食道(SSBE)を認めたため、以降当院にて年1回の内視鏡フォローを行う方針となった。また、初回内視鏡後よりファモチジン4mg/日が、翌年よりランソプラゾール15mg/日が近医より内服継続されていた。毎年の内視鏡観察にて徐々にではあるがバレット粘膜が伸展していく様子が観察され、2008年にはバレット食道癌が指摘されたためESDが施行された。深達度はT1a-LPMであった。その後も毎年バレット食道の形態変化の観察が可能であり、現時点で計14年の内視鏡的経過観察が可能であった。本症例のバレット食道の伸展経過の特徴として、(1)バレットの長さは毎年均等に伸びているわけではなく、ある年に急激に伸展し、変化のない年もある、(2)バレットの伸びた部位の前年度の画像ではmucosal breakを伴っていることが多い、(3)PPIを内服継続していたにもかかわらず、mucosal breakが発生し、バレットが伸展している、という3点が明らかとなった。日常診療においてバレット食道の経過観察中に癌が発生することはまれであり、またバレット食道の長期的な形態変化を詳細に検討しえた貴重な症例と考えられたため、バレット食道の伸展と癌発生、逆流性食道炎の関与という点に焦点を当てて文献学的な考察を加え報告する。