症例は70歳代男性。2013年5月心窩部痛を認め、前医を受診し、精査にて肝門部胆管狭窄を認め、経乳頭的に胆管生検を施行されたが明らかな腺癌を認めず、内視鏡的胆道ステント留置術(EBS)後、精査加療目的に当科紹介となった。血液検査では肝胆道系酵素の軽度上昇およびCEA5.1ng/ml、CA19-9 99 U/mlと腫瘍マーカーの上昇を認めた。なお、IgG4<3mg/dlと低値であった。腹部造影CT・MRIでは肝門部胆管狭窄およびその肝側胆管拡張を認めた。また左右肝管、総肝管にわたり胆管壁は遅延濃染を呈し肥厚していた。ERCでは肝門部に左右対称な平滑な狭窄およびその肝側胆管拡張を認めた。IDUSでは狭窄部は外側高エコーの断裂を認めた。狭窄部からの生検結果は明らかな腫瘍性異型を認めず、強拡大1視野あたり50個のIgG4陽性形質細胞を認め、IgG4/IgG陽性細胞比は79%であった。そのため、IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)を鑑別に挙げ、IgG4関連疾患(IgG4-RD)胆管外病変の検索目的にGa-67シンチグラフィーを施行したが病的な異常集積を認めなかった。胆管像および胆管生検組織所見よりIgG4-SCを否定できなかったが、胆管以外にIgG4-RDがなく、IDUS所見から胆管癌を強く疑い再度胆管生検を施行した結果、腺癌を認めた。以上より肝門部胆管癌と診断し、肝拡大右葉切除術を施行した。切除標本の組織所見はT2b、N1、M0、G2、stageIIIBであり、IgG4陽性形質細胞は癌周囲に少量認めるのみであった。本症例は複数の胆管生検を行うも上皮に腫瘍性異型なく、IgG4陽性形質細胞浸潤を認めたことより、IgG4-SCとの鑑別を要した。しかし、IDUS所見および全身にIgG4-RD病変を認めないことから、胆管癌を強く疑い胆管生検を繰り返したことにより診断することができた。IgG4陽性細胞は腫瘍や炎症に対し反応性に浸潤することがあり、注意を要する。