日本消化器内視鏡学会甲信越支部

6.胆管内乳頭状腫瘍の1例

新潟市民病院 消化器内科
中本 洋平、五十嵐 健太郎、杉村 一仁、古川 浩一、和栗 暢生、米山 靖、相場 恒男、佐藤 宗広、五十嵐 俊三、倉岡 直亮、小川 光平
新潟市民病院 消化器外科
大谷 哲也、横山 直行、八木 寛
新潟市民病院 病理科
渋谷 宏行、橋立 英樹、三尾 圭司

症例は65歳、女性。X-1年8月に心窩部痛、嘔吐、発熱を主訴に近医受診。肝機能障害を指摘され、胆管炎、胆石症、慢性胆嚢炎と診断。精査目的にERCPを施行。肝門部に陰影欠損像を認め、同部位からの擦過細胞診と胆汁細胞診ではいずれもClass2で経過観察となる。X年4月、慢性胆嚢炎、胆石症に対する胆嚢摘出術を希望され、当院消化器外科を紹介受診。術前精査目的のCTにて右肝管内に嚢胞性病変、胆道拡張所見を認め、精査目的に当科受診。EUSでは、前後枝分岐部とB6に隣接して多房性で大小不同の嚢胞が描出されたが、明らかな結節や充実性の部分は認めなかった。IDUSでは、胆嚢管分岐部付近から右肝管にかけて薄い隔壁様の所見が認められ、2層性の鏡面形成が疑われた。右区域分岐部には胆管外にも大小不同の嚢胞が観察されたが、明らかな結節や壁肥厚所見は認めなかった。各種画像診断からは嚢胞拡張と胆管との連続性が疑われた。右肝管からの生検ではp53の過剰発現は認めないもののKi-67が高度陽性の異型細胞が確認され、いずれも粘液産生肝内胆管癌(IPNB)に矛盾しない所見と考えられた。dynamicMRIでT2WI低信号、DWI高信号と嚢胞性腫瘍を疑う所見も確認されたことからIPNB T2 N0 M0Stage2と診断し、肝右葉切除、肝外胆管切除、胆道再建を施行。病理検査所見ではCDX2(-)であるもののMUC2(+)、MUC5AC(+) と既知のIPNBに粘液形質は合致し、Well diff erentiated mucinous adenocarcinoma(muc-w)、derived from intraductal papillary neoplasmと診断した。近年、IPMNのカウンターパートとして類似の特徴と形態を持つIPNBという疾患概念が提唱されている。臨床的特徴に不明な点が多く今後も蓄積が必要な希少な症例と考えられ報告する。