日本消化器内視鏡学会甲信越支部

3.Maff ucci 症候群の消化管血管腫に対して内視鏡治療を行った一例

信州大学医学部附属病院 消化器内科
久保田 大輔、大工原 誠一、菅 智明
信州大学医学部附属病院 内視鏡センター
新倉 則和

症例は30歳代男性。2歳時に Maff ucci 症候群と診断され、当院通院中であった。2009年9月Hb3.5g/dlと高度の貧血を認め、当科で上部・下部消化管内視鏡検査を施行した。咽頭から大腸にかけて血管腫の多発を認めたが活動性出血は認めず、鉄剤にて貧血は改善し、経過観察となった。2013年3月頃から労作時息切れを自覚し、血液検査でHb4.3g/dlと再度貧血を認めた。血便を認めたため、再度消化管の検索を行い、小腸カプセル内視鏡検査にて上部空腸からの出血が疑われた。経口的ダブルバルーン小腸内視鏡検査は咽頭血管腫からの出血を誘発する危険性が高いと判断し、経肛門的ダブルバルーン小腸内視鏡検査を行ったが、出血源まで到達することができなかった。内科的治療は困難と考えられ、術中内視鏡下で出血源を確認し小腸部分切除術を行った。その後は貧血なく経過していたが、2014年1月下旬より貧血、黒色便を認めたため再度当科を受診した。腹部造影CT検査 にて上部空腸からの静脈性出血を認め、残存小腸血管腫からの出血が疑われた。輸血を繰り返したが、貧血の改善なく、2月某日全身麻酔・喉頭展開下に咽喉頭の血管腫に対して内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行し、引き続き経口的ダブルバルーン小腸内視鏡を挿入して小腸血管腫の内視鏡的硬化療法を行った。EMR後創部周囲の浮腫に伴う気道狭窄や出血を認めず、術翌日抜管した。その後貧血の増悪や下血を認めず、術後13日目に退院した。Maff ucci症候群は多発性内軟骨腫に多発性血管腫を伴う稀な疾患である。また消化管出血をきたして内視鏡治療を行った例は極めて稀であり報告する。