日本消化器内視鏡学会甲信越支部

2.胃MALTリンパ腫に対するHelicobacter pylori除菌療法と特異例

山梨大学 医学部 第一内科
吉村 大、小林 祥司、岩本 史光、津久井 雄也、吉田 貴史、浅川 幸子、山口 達也、植竹 智義、佐藤 公、榎本 信幸
JA山梨厚生連健康管理センター
大高 雅彦

【背景】 胃限局期MALTリンパ腫に対して、Helicobacter pylori(HP)除菌療法は第一選択とされている。除菌療法に関しては、HP感染の有無やAPI2/MALT1遺伝子転座を含む遺伝子異常の有無、腫瘍の局在など種々の条件により、その治療抵抗例の特徴が報告されている。当院で治療を行った51例を対象とした検討でも、HP感染の有無(P<0.01)と遺伝子異常の有無(P=0.05)が多変量解析でも治療抵抗性に対する独立した因子として抽出され、これまでも報告を行ってきた。しかし、除菌療法に抵抗を示すと考えられた症例群(HP陰性かつ遺伝子異常あり)の中にも、除菌によりCRが得られた症例が1例だけ存在していた。【症例】 症例は、40歳代男性。体下部前壁に褪色陥凹を呈する病変を認めており、免疫染色を加えた組織診でMALTリンパ腫と診断された。深達度は細径プローブを用いた超音波内視鏡検査で粘膜内に留まると判断した。CTで有意なリンパ節腫大は確認されず、病期はLugano分類でI期と診断した。API2/MALT1遺伝子転座を確認し、HP感染についてはHPIgG抗体および培養検査、組織診を行いHP陰性を確認した。PPI/AMPC/CAMの3剤併用で除菌を行い、除菌治療後8カ月でCRが得られた。現在2年の経過で再発は認めていない。【考察】 除菌治療に対する反応としては非常に特異な1例であったため、同様の症例群で治療抵抗性を示した6例と、その内視鏡所見や局在、年齢を含む背景因子を比較検討し報告する。尚、当院ではMALTリンパ腫の肉眼型をその病変の構成成分からびらんや潰瘍を呈するびらん群、顆粒状粘膜を呈する顆粒状粘膜群、主に隆起を形成する腫瘤形成群、粘膜の褪色を特徴とする褪色粘膜群の4群に分けて検討を行っている。内視鏡所見と治療反応性との関連性も含め、結果を報告する。