日本消化器内視鏡学会甲信越支部

1.粘膜中下層を側方進展した0-I+IIb型胃型腺腫の1例

佐久総合病院 佐久医療センター 消化器内科
山田 崇裕、高橋 亜紀子
佐久総合病院 佐久医療センター 内視鏡内科
小山 恒男

患者は70歳代男性。人間ドックEGDにて、体中部前壁大彎側に境界明瞭な褪色隆起を認めた。インジゴカルミン散布像では境界はさらに明瞭となり、その表面は平滑であった。NBI拡大観察にて病変周囲は不整に乏しいvillous patternで、Light blue crest(LBC)を認めたことから、背景粘膜は腸上皮化生と診断した。病変部のNBI拡大観察にて、表面構造が不明瞭化しており、不整に乏しいnon-network血管を認めたことからgastric adenocarcinoma、0-Iと診断し、生検を施行した。病理標本では、核がやや腫大していたが、異型は軽度で、構造異型も軽度であることから胃型腺腫と診断した。5ヵ月後にESDを施行した際には、0-I病変の口側に境界不明瞭な褪色領域を認めた。NBI拡大観察にて0-I病変は癒合したvillouspatternを呈しており、内部にnetwork血管を伴うpit様構造を認めた。また、その口側の褪色領域には大小不同を伴うvillous patternが認められたが、WZは保たれ不整は軽度であった。同部も含め、ESDにて一括切除を施行した。切除標本肉眼所見ではくびれのある0-I病変の口側に境界不明瞭な褪色領域を認めた。組織学的にはMuc 5ac陽性、Muc 6陽性で、胃型形質を有するtubular adenomaであった。口側の褪色領域には、異型のさらに低いtubular adenomaが粘膜中~深層を側方進展し、最表層は非腫瘍の腺窩上皮であった。また、近傍に存在したHeterotopiaを置換性に発育し、病変は一部粘膜下層にも存在した。最終診断Gastric tubular adenoma (Gastric phenotype)、0-I + IIb型、6x4 mm、HM0、VM0であった。胃型腺腫は希な疾患であり、その発育様式は不明な点が多い。本例は6mm大の小病変であり、本疾患の発育進展を考える上で、提示に富む症例と思われ報告する。