日本消化器内視鏡学会甲信越支部

PL5.留置9か月後に十二指腸ステントの破損を認めた膵鉤部癌の1例

信州大学 消化器内科
松野 淳洋、金井 圭太、小口 貴也、浅野 純平、丸山 真弘、渡邉 貴之、村木 崇、田中 榮司
信州大学 内視鏡センター
新倉 則和

症例:60 歳代女性。2012年9月中旬より悪心・嘔吐が出現したため前医を受診した。腹部CTで十二指腸水平部に狭窄を指摘され、上部消化管内視鏡検査でも同部位に狭窄を認めた。狭窄部からの生検病理組織はadenocarcinomaであった。9月下旬に当院を紹介受診し、施行したCT・MRI所見と前医生検結果から膵鈎部癌・十二指腸浸潤と診断した。画像上、上腸間膜動脈への浸潤が疑われたため、化学療法をおこなう方針とした。10月上旬よりGEM 1 g/m²で治療を開始したが、2回目投与後にGrade4の血液毒性を認めたため投与を中止した。経過で十二指腸通過障害も増悪したことから、10月下旬に十二指腸ステント(Nitis社製:120×22 mm)を十二指腸狭窄部に対して留置し、11月よりTS-1 60 mg/日で治療を再開した。2013年4月に施行したCTで、腫瘍は増大傾向にあったためTS-1を80 mg/日に増量した。7月に施行した腹部レントゲンで、十二指腸ステントの破損を認めた。通過障害を示唆する症状や発熱、腹痛なども認めなかったことから十二指腸ステントを追加で留置する方針とした。ステント留置前の上部消化管造影では、トライツ靭帯口側に膵癌の浸潤と考える狭窄を認め、その肛門側で十二指腸ステントは破損していた。stent in stentの形で十二指腸ステント(Nitis社製:120×22 mm)を追加留置したが、留置後に明らかな偶発症や通過障害は認めずTS-1 80mg/日内服を継続し経過観察中である。十二指腸ステント破損は稀な偶発症であり貴重な症例と考えられたため報告する。