日本消化器内視鏡学会甲信越支部

PL3.発症前からの内視鏡所見を遡及的に追えたCronkhite-Canada Syndromeの1例

佐久総合病院 胃腸科
宜保 憲明、篠原 知明、小山 恒男、山田 崇裕、森主 達夫、若槻 俊之、久保 俊之、岸埜 高明、高橋 亜紀子、友利 彰寿

【症例】患者は60歳代女性で、特筆すべき既往歴、家族歴はない。検診目的に前医で受けた上部消化管内視鏡検査では、胸部中部食道から腹部食道に微細な顆粒状変化が認められた。胃は、びまん性にアレアが発赤腫大し、一部はポリープ様に隆起していた。また、十二指腸に特筆すべき異常は認められず、慢性胃炎と診断された。1ヶ月後より口渇、味覚異常を自覚するようになり、爪甲や手掌をはじめとした皮膚の黒ずみも徐々に出現した。2ヶ月後から1日7-8回の水様便が認められ、脱毛も出現した。3ヶ月後に前医で施行された大腸内視鏡検査で、全大腸に発赤した平坦隆起が非連続性に存在し、一部はポリープ状に隆起していた。全身症状を伴う原因不明の大腸炎として、精査加療目的に紹介された。【経過】入院時の血液検査でTP 5.7g/dL、Alb 3.2g/dLの低蛋白血症を認めたが、貧血はなかった。上部消化管内視鏡検査では、食道はほぼ正常化し、穹隆部から体上部の粘膜発赤は改善傾向が認められた。しかし、体下部から前庭部ではアレアの発赤腫大が増悪し、ポリープ状隆起が大きくなっていた。NBI拡大観察では、腫大したアレアの表面に円形から星芒状の腺管開口部がみられたが、不整な血管は認められなかった。また、十二指腸には褪色調の微細顆粒がびまん性に認められた。計9個の胃生検では、粘膜固有層の浮腫状変化と好酸球浸潤を認めた。これらの病理所見は、隆起部のみならず平坦部の褪色粘膜にも認められた。以上より、Cronkhite-Canada Syndrome(CCS)と診断した。絶食による保存的加療が奏効せず、プレドニゾロン投与を40mgから開始したところ、下痢、味覚異常は速やかに改善した。プレドニゾロン漸減後も症状再発することなく経過し、治療開始3ヶ月後の上部消化管内視鏡、大腸内視鏡検査ではポリポーシスの消退傾向を確認した。【まとめ】Pubmed及び医中誌で検索したところ、これまでに発症前の内視鏡画像を得られたCCSが6例報告されていたが、発症前の上部消化管内視鏡検査にて所見を得られたのは本例が初めてであった。