日本消化器内視鏡学会甲信越支部

72.大腸SM癌転移・再発例の検討

新潟県厚生連長岡中央綜合病院 消化器病センター 外科
川原 聖佳子、西村 淳、新国 恵也、田島 陽介
新潟県厚生連長岡中央綜合病院 消化器病センター 内科
富所 隆、佐藤 明人

【はじめに】大腸SM癌はSM浸潤度1000μm以上でリンパ節転移を12.5%に認め、また、まれに遠隔転移を来すこともあり、大腸癌治療ガイドラインで推奨された手術適応基準に従って治療が行われているが、患者側因子によっては外科切除をするべきかどうか迷う場合もある。【目的】大腸SM癌の転移・再発例をretrospectiveに検討し、現在の治療が適切であるかどうかを明らかにする。【対象】2003年1月~2011年12月に内視鏡的・外科的切除された大腸SM癌214例(内視鏡治療のみ63例、内視鏡治療後追加外科切除54例、最初から外科切除97例)とSM癌とされ内視鏡治療後追加切除したうちpSMでなかった症例。【結果】1. 外科切除された151例中リンパ節転移は17例(11.3%)に認めた。その内訳はSM浸潤度1000μm以上12例(70.6%)、ly陽性6例(35.3%)、v陽性5例(29.4%)、muc 2例(11.8%)で、全て手術適応基準のものであった。SM浸潤度1000μm以上のみの場合のリンパ節転移は7例(4.6%)であった。再発例はpN0だった2例(1.3%、肺転移1例、肝転移1例、いずれも切除し生存)であり、原病死は無かった。2. 内視鏡治療のみでガイドラインに従って経過観察されたのは42例(66.7%)で再発や原病死は無かった。手術適応基準だったが経過観察されたのは21例(33.3%)でそのうち4例(19.0%、断端陽性が3例)に再発を認めた。外科切除されたが、1例(4.8%)は原病死した。3. SM癌とされ内視鏡治療後追加切除したがpSMでなかった症例は3例(いずれも断端陽性か遺残あり)で、そのうち1例は手術後5ヶ月で腹膜播種を来たし10ヶ月後に原病死した。<まとめ>ガイドラインに従って外科切除された大腸SM癌の成績は良好であるが、内視鏡治療再発後の外科切除例では死亡例があり、断端陽性や遺残例では強く外科手術を勧めるべきである。また断端陽性や遺残例は深達度が不明確であるため、進行癌の可能性を考慮する必要がある。SM浸潤度1000μm以上のみの場合のリンパ節転移率は低く、患者側の因子によっては、経過観察も考慮されうるが、遠隔転移が0ではないことを念頭においたフォローアップが必要である。