日本消化器内視鏡学会甲信越支部

61.カプセル内視鏡検査が診断に有用であった血便発症の小腸悪性リンパ腫の1例

山梨県立中央病院 消化器内科
岡 怜史、深澤 佳満、小嶋 裕一郎、倉富 夏彦、久野 徹、細田 健司、鈴木 洋司、望月 仁、小俣 政男
山梨県立中央病院 外科
高橋 和徳、中山 裕子、長堀 薫
山梨県立中央病院 血液内科
進藤 弘雄
山梨県立中央病院 病理
小山 敏雄

症例:70歳代、男性。主訴:血便。既往歴:C型慢性肝炎、心房細動(ワーファリン内服中)、脳梗塞、狭心症、大動脈弁・僧帽弁置換術。現病歴:2009年1月人間ドックで肝S3に突出する腫瘤を指摘され、当院紹介受診となった。肝細胞癌と診断とされ、2009年3月に当院外科にて肝部分切除術施行した。2011年1月肝S3に肝細胞癌の再発を認めRFAを施行し、以後再発なく通院中であった。2013年4月血便、貧血にて入院。大腸鏡検査では終末回腸にびらんを認めクリップを施行している。ほか上行結腸に憩室を認める以外、特記所見を認めなかった。上部消化管内視鏡検査ではRC sign陰性の食道静脈瘤を認めた。入院後血便はなく、以後外来経過通院中であった。2013年6月血便、貧血にて再入院。大腸鏡検査では前回と同様に上行結腸憩室、終末回腸のびらんを認めたが、出血源は認められなかった。カプセル内視鏡検査では、小腸に潰瘍性病変が多発しており、同部が出血源と考えられた。2013年7月経口ダブルバルーン小腸内視鏡検査の予定であったが、検査施行前日に突然の腹痛あり、CTでは小腸壁の断裂とfree airを認め小腸穿孔と診断し、当院外科で緊急開腹術を施行した。手術所見では、回盲部より80cmの部位に壁肥厚像とピンホール状の穿孔部位を認め、同部を含め小腸部分切除を実施した。肉眼所見では腫瘍の中心部の壁の菲薄化した部位に壊死を認め、組織学的にはDiffuse large B-cell lymphomaの診断であった。現在当院血液内科にてR-CHOP療法施行中である。

診断にカプセル内視鏡が有用であり小腸穿孔を呈した悪性リンパ腫の1例を経験したので、若干の文献敵考察を加えて報告する。