日本消化器内視鏡学会甲信越支部

60.閉塞性黄疸で発症した十二指腸Burkittリンパ腫の1例

済生会新潟第二病院 消化器内科
熊谷 和樹、井上 良介、阿部 聡司、岩永 明人、本間 照、関 慶一、石川 達、渡邉 雄介、菅野 智之、吉田 俊明
済生会新潟第二病院 病理診断科
石原 法子

近年、十二指腸原発濾胞性リンパ腫が注目され報告例も増えている。一方、十二指腸Burkittリンパ腫の報告は稀である。閉塞性黄疸を来たしたリンパ腫の報告は少なく、閉塞機転の多くは腫大したリンパ節による胆道狭窄であり、十二指腸腫瘤による乳頭部狭窄の報告は少ない。またリンパ腫初発症状としての閉塞性黄疸も稀である。症例は79歳男性。4,5日前から右季肋部痛、発熱が出現した。近医で黄疸を指摘され、腹部超音波検査で急性胆管炎を疑われ当科紹介受診した。CTで十二指腸球部~下行脚は、壁の層構造が消失、肥厚し腫瘤状となり、早期相で低吸収、門脈相~後期相にかけ徐々に造影された。十二指腸乳頭も腫瘤状部分に含まれ、拡張した総胆管~肝内胆管、主膵管は同部で先細り、十二指腸腫瘍による閉塞性黄疸と診断された。肝十二指腸靱帯や十二指腸周囲には5mm前後の小リンパ節が散在していたが、他に有意な腫大リンパ節は認めなかった。EGDでは幽門輪が変形狭窄しスコープが通過せず、球部前壁に白苔の覆った潰瘍底が覗くだけであった。内視鏡的胆道ドレナージをあきらめ、翌日PTCDを行った。十二指腸腫瘍の形態を評価するため低緊張十二指腸造影を行った。幽門~球部は変形狭窄し、下行脚は壁に沿って凹凸のある隆起、潰瘍形成、襞の肥厚を認めた。以上から十二指腸癌も疑われたが、悪性リンパ腫を強く疑った。潰瘍辺縁からの生検組織で腺管形成のない異型細胞を認め、後日免疫染色の結果、Burkittリンパ腫と診断された。骨髄吸引細胞診ではリンパ腫細胞は認めなかった。病期診断はLugano国際分類でstageII-1であった。血液内科へ転科しR-THP-COP療法を行っている。腸管壁全層に浸潤した症例では、化学療法中に出血や穿孔などの合併症が多く、化学療法奏功後も胆道あるいは十二指腸の瘢痕狭窄を来たすことがあると報告されており、これらに充分注意しながら経過観察中である。