日本消化器内視鏡学会甲信越支部

59.胃病変で発見された濾胞性リンパ腫の1例

長野県立 須坂病院 消化器内科
徳竹 康二郎、赤松 泰次、下平 和久、坂口 みほ、張 淑美
長野県立 須坂病院 血液内科
藤川 祐子

 症例は70代の男性。2013年1月、当院人間ドックでのEGDにて体下部大彎にヒダ集中を伴う陥凹病変を認め、MALTリンパ腫を疑って生検を行った。明らかな異型上皮は認めず、上皮下に全体的にリンパ球が浸潤しLELも伴っていた。リンパ球はCD20陽性のB細胞で、CD10陽性の濾胞様構造を呈する部分も存在し濾胞性リンパ腫の可能性が示唆された。全身検索として行った腹部造影CTでは腸間膜を挟むように8x4cm大の腫瘤を認め、腫瘤の内部を脈管構造が通過するsandwich signを呈していた。経口および経肛門的小腸内視鏡では回腸、空腸に白色顆粒状病変の散在を認め、同部の生検でも濾胞構造を有するB細胞リンパ球の浸潤を認めたが、腸管濾胞性リンパ腫の好発部位とされる十二指腸には異常所見は認めなかった。FDG-PETでは腸間膜の他に縦隔リンパ節や骨盤骨に集積を認めた。以上より、腸間膜原発の濾胞性リンパ腫(Grade2)、AnnArbor分類StageIVAと診断し、4月よりR-CHOPを開始した。4コース終了後のFDG-PET再検査では、病変を示す異常集積はいずれも消退しており、今後は8コースまで治療を予定している。

 一般的に濾胞性リンパ腫はslow growingな経過を辿ることが多く、また、消化管原発濾胞性リンパ腫は初期段階で内視鏡的に十二指腸病変を契機に発見される症例が多い。一方、腸間膜を原発とする場合は大きくなるまでに症状に乏しいため腹部腫瘤で発見される事が多いと考えられた。