日本消化器内視鏡学会甲信越支部

58.9ヶ月で急速に発育し、遡及的検討が可能であった胃原発DLBCLの一例

佐久総合病院 胃腸科
山田 崇裕、小山 恒男、宮田 佳典、友利 彰寿、高橋 亜紀子、篠原 知明、岸埜 高明、久保 俊之、森主 達夫

 患者は60歳代男性。人間ドックのEGDにて、萎縮性胃炎・過形成ポリープと診断された。また、腹部超音波検査(US)にて3mm大の膵嚢胞が認められ、3カ月後のUS再検でも同様の所見であった。7カ月後に腹部膨満が出現し、9カ月後に近医を受診した。腹部骨盤単純CTにて胃壁全体の壁肥厚と、腹水を認めたことからスキルス胃癌による腹膜播種を疑われ当院紹介受診となった。 EGDにて、胃前庭部小彎にやや発赤調の辺縁隆起を伴う発赤調の不整形潰瘍性病変を認めた。NBI拡大にて陥凹部は表面構造が不明瞭化しており、辺縁隆起はWhite zoneが不均一なvillous patternを呈していた。また、体部大彎のfoldは不整に腫大し、giant foldを呈していた。 腹部骨盤造影CTで広範な胃壁肥厚と胃小彎側・大動脈周囲のリンパ節腫大、大網の肥厚、腹水貯留を認めた。また、胸部単純CTにて右胸水貯留と葉間胸膜の肥厚所見を認めた。腹水細胞診及び生検にてびまん性大細胞型リンパ腫(DLBCL)、StageIV(Lugano分類)と診断した。 EPOCH療法1コースを開始した所、3日目より腫瘍崩壊症候群と思われる高K血症(6.2mEq/ml)が出現したため、EPOCH療法1コースは3日目で中止した。GI療法を施行したが状態は改善せず、血液透析を2回施行した。腎機能障害・高K血症が改善した後に、EPOCH療法2コース目を施行したが副作用なく、胃壁の肥厚は著明に改善し、腹水やリンパ節腫大は消失していた。その後、CHOP療法を1コース、R-CHOP療法を4コース、Rituximabを2コース施行し、約13ケ月CRが継続している。<考察>発症9カ月前のEGDを再度検討したが、慢性萎縮性胃炎以外には所見がなく、また6カ月前の腹部エコーでもリンパ節腫大や腹水を認めなかったことから短期間に高度進行した胃原発DLBCLと考えた。