【はじめに】酸性洗浄剤サンポール®服用後に食道入口部・幽門前部狭窄を来し、保存的加療を行っている1例を経験したので報告する。【症例】35歳男性。アルコール依存症にて精神科入院歴あり。平成25年3月より厚生施設に入所していた。6月13日、自殺企図で酸性洗浄剤サンポール®を500ml服用。同居者に発見され、当院救急外来受診。服用後、1時間以内の来院であったため、胃洗浄施行。第2病日のCTにて下咽頭~食道~胃の浮腫性壁肥厚がみられた。上部消化管内視鏡検査(EGD)では咽喉頭から食道全体に強い発赤と白苔の付着がみられた。胃内は全体に黒色調の粘膜を呈していた。第20病日のEGDにて咽頭部の発赤は改善したが、食道全体および胃前底部から体部にかけての発赤・白苔に加えて潰瘍形成がみられた。幽門前部は全周性にやや狭窄しており、壁の進展性は不良であった。第21病日より食事開始。当初、順調であったが、第23病日から食事摂取不良や頻回の嘔吐が見られた。第30病日のEGDにて幽門前部はピンホール状に狭窄し、細経内視鏡でも通過しなかった。第34病日、幽門前部に対し、バルーン拡張施行。食道入口部はやや狭窄がみられた。第36病日より経管栄養開始。第50病日、細経内視鏡にて食道入口部を通過し、幽門前部・食道入口部に対してバルーン拡張施行。第76病日、細経内視鏡にて食道入口部・幽門前部の通過可能。第78病日、食事開始。第86病日、細経内視鏡で食道入口部を通過せず。第92病日、鎮静下でも同様であり、バルーン拡張は断念した。この状態でもムセなく、食事摂取は可能であった。第100病日、バリウム造影にて食道入口部・幽門前部の狭窄あり。造影剤の通過は良好であるが、食事のときに咽頭部つかえ感が出現し始めており、治療を検討中である。【考察】文献的には腐食性消化管障害の治療では外科手術を要することが多いとされている。当症例では内視鏡的拡張を行っているが、対応に苦慮している。その後の経過も含めて報告する。