日本消化器内視鏡学会甲信越支部

47.肝転移を伴った胃低分化型神経内分泌癌の一例

富士吉田市立病院 内科
山崎 貴久、中川 元希、高橋 正一郎

【症例】78歳、男性。【主訴】肝機能障害。【現病歴】心筋梗塞後などで近医に通院中。2011年3月28日頃より肝機能障害を認め、当初は薬剤性肝障害が疑われ、原因と思われる薬剤を中止したが改善しなかったため、2011年12月8日に当院へ紹介となった。【経過】血液検査で肝機能障害及びCA19-9高値を認め、単純CTで多発肝腫瘍を認めた。また腹部超音波検査で背景肝に脂肪肝及び脾腫を認めた。造影CTでは壊死・脱落を伴う多血性の肝腫瘍であった。鑑別目的のため、肝腫瘍生検を施行した。病理結果を待ち、内視鏡検査の予定であったが、吐血された。緊急上部内視鏡検査を施行したところ、胃体下部小彎後壁寄りに潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様病変を認め、露出血管から噴出性出血をしていた。内視鏡的止血術を施行し、後日、生検した。肝腫瘍生検の結果は、一次報告でpoorly differentiated adenocarcinomaであったが、胞体の少ないN/C比の高い細胞であり、免疫染色を追加した。chromograninAとsynaptophysinは陽性で、CD56は軽度陽性であり、metastatic neuroendocrine tumorが疑われた。胃腫瘍の病理ではpoorly differentiated adenocarcinomaであったが、胃腫瘍が粘膜下腫瘍様の形態を呈し、肝腫瘍と同様に小型の細胞であったことから免疫染色を追加したところ、同様にchromograninAとsynaptophysinは陽性で、CD56は軽度陽性であった。以上より胃低分化型神経内分泌癌の肝転移と診断した。【考察】胃低分化型神経内分泌癌は、比較的稀な腫瘍であり、極めて予後不良とされる。本例は転移性肝腫瘍がきっかけとなり、また胃原発巣からの出血も合併し、診断に至った。若干の文献を加えて報告する。