日本消化器内視鏡学会甲信越支部

39.Mallory-Weiss症候群が診断の契機となった好酸球性食道炎の1例

長野市民病院 消化器内科
坂 めぐみ、岩谷 勇吾、多田井 敏治、伊藤 哲也、関 亜矢子、越知 泰英、原 悦雄、長谷部 修
長野市民病院 病理診断科
保坂 典子

症例は30代男性。主訴は吐血。既往に卵アレルギーがある。また以前より頻繁に食道のつかえ感を自覚していた。某日飲酒後数回の嘔吐ののち血性嘔吐が見られたため当院受診し緊急上部消化管内視鏡検査が施行された。胃食道接合部2時方向の食道粘膜に裂創を認めたが明らかな胃粘膜の損傷はなく、Zeifer分類I型のMallory-Weiss症候群と診断した。PPI投与下に絶食入院とし,翌々日に2nd lookを行ったところ、Mallory-Weiss裂創は改善傾向を認めていた。また食道全体に数条の縦走溝や輪状溝・白斑の多発を認め、食道各部の生検で30個/HPF以上の好酸球浸潤を認めた。末梢血中の好酸球は12.5%と軽度の上昇を認めた。以上の内視鏡所見、病理所見などから好酸球性食道炎と診断した。退院後もPPI投与を継続していたがつかえ感の頻度や程度は変わりなく,ステロイド投与を検討中である。

Zeifer分類I型のMallory-Weiss症候群は極めてまれとされており,好酸球性食道炎により脆弱化した食道粘膜が裂創の原因となった可能性が示唆されたが,Mallory-Weiss症候群と好酸球性食道炎の合併例の報告はなく,貴重な症例と考えられたため文献学的考察を加えて報告する。