日本消化器内視鏡学会甲信越支部

40.R-CHOP療法にて寛解を得た食道原発悪性リンパ腫の1例

都留市立病院
若尾 聡士、保坂 稔、山崎 玄蔵、落合 田鶴枝、渡辺 千尋、鈴木 正史
山梨大学人体病理学教室
山根 徹

症例は81歳男性。既往歴に前立腺肥大症、B型肝炎既感染、高血圧症、肺気腫を認めている。2010年7月より喉のつかえ感を自覚し、近医で上部内視鏡を実施され逆流性食道炎と診断されたが、症状が改善せず2011年1月12日当院を受診した。理学所見では表在リンパ節を含めて異常所見は認めなかった。血液生化学検査では可溶性IL-2レセプターが734U/mlと軽度な増加を認めた。上部内視鏡で上部-中部食道にかけて食道粘膜壁が肥厚しており、一部びらんと粘膜の脱落を認めたが、腫瘤性病変や狭窄による食道の通過障害は認めなかった。同部の生検にてCD20陽性、CD79a陽性のBリンパ球系の腫瘍細胞の増殖を認めた。胸部X線検査では縦隔の腫大は認められず、CT検査では上部食道の全周性壁肥厚及びNo106、No109傍食道リンパ節の腫大を認めた。PET検査では胸上部食道全域と、右反回神経周囲リンパ節、中下部食道傍リンパ節にFDG集積を認めた。以上より、食道原発悪性リンパ腫(Diffuse B cell lymphoma)、Musshoff分類 stageΙΙE2と診断した。食道における外科的切除術は侵襲性が高く、本症例においては高齢であることを考慮し化学療法を選択した。70%用量のR-CHOP療法(rituximab, cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, prednisolone)を開始し、骨髄抑制のため2クール目より40%用量への減量を要したが、8クールまで継続し2011年10月完全寛解を得た。発症から2年が経過したが再発や転移を認めず経過良好である。

消化管原発悪性リンパ腫は節外性悪性リンパ腫の30-50%に認められるが、胃原発が57-80%、小腸原発が20-29%、大腸原発が3-15%を占めており、食道原発悪性リンパ腫は稀な疾患である。今回、我々は化学療法が奏功した食道原発悪性リンパ腫の1例を経験したので、若干の考察を加えて報告する。