日本消化器内視鏡学会甲信越支部

35.当院における切除不能局所進行膵癌およびborderline resectable膵癌に対するS-1併用化学放射線療法の現状

県立新発田病院
岡 宏充、夏井 正明、清野 智、瀧澤 一休、坪井 清孝、青木 洋平、山崎 和秀、松澤 純、渡辺 雅史

当院における切除不能局所進行膵癌およびborderline resectable膵癌(BR膵癌)に対するS-1併用化学放射線療法(CRT)の現状につき報告する。2012年7月から、切除不能局所進行膵癌1例、BR膵癌3例に対し、S-1併用CRTを施行した。放射線療法は1回1.8Gy/日、28回照射、計50.4Gy施行し、S-1は80mg/m2/日を4週間投与、2週間休薬のスケジュールとした。

症例1は、53歳、男性。膵頭部の3cm大の腫瘍で、門脈浸潤を認め、BR膵癌と判断し、CRTを施行。治療後CTは、SDの判定。S-1の化学療法1コース追加後に、手術施行し、pT3N1M0、StageIII、R0であった。症例2は、71歳、女性。膵頭部の33mm大の腫瘍で、門脈および胃十二指腸動脈への浸潤を認めBR膵癌と判断し、CRTを施行。治療後のCTは、SDの判定。S-1の化学療法を1コース追加後に、手術施行し、pT3N0M0, StageIII, R0であった。症例3は、49歳、女性。膵頭部の25mm大の腫瘍で、門脈および胃十二指腸動脈への浸潤を認め、BR膵癌と判断し、CRTを施行。治療後のCTは、SDの判定。S-1の化学療法1コース追加後に、手術施行し、pT3N1M0、StageIII、R0であった。症例4は、50歳、男性。膵体部の5cm大の腫瘍で、腹腔動脈へ全周性の浸潤あり、切除不能と判断し、CRTを施行。治療後のCTで、腫瘍は著明に縮小し、CRの判定。S-1の化学療法を2コース追加後に、手術施行。病理結果は、原発巣に腫瘍の残存はなく、リンパ節にわずかに腫瘍を認めるのみであった。

症例数は少ないものの、切除不能局所進行膵癌およびBR膵癌に対する、S-1併用CRTは有用な可能性があり、若干の文献的考察を加え報告する。