日本消化器内視鏡学会甲信越支部

34.当院における小膵癌切除例の検討

JA長野厚生連 佐久総合病院 肝胆膵内科
桃井 環、比佐 岳史、宜保 憲明、若槻 俊之、清水 雄大、古武 昌幸、高松 正人
JA長野厚生連 佐久総合病院 外科
大久保 浩毅

【目的】小膵癌切除症例の検討から膵癌早期診断の方策を考察すること。【方法】1998年5月~2013年3月の間に当院で手術を施行し、組織学的腫瘍径20mm以下の浸潤性膵管癌(以下TS1膵癌)24例を対象とした。対象の内訳は、年齢が52~85歳(中央値68.5歳)、男女比が14:10、病変部位が頭部12例、体部11例、尾部1例、組織学的腫瘍径が10~20mm(中央値15mm)であった。検討項目は、発見契機、各種検査所見、病理所見、予後とした。【結果】●発見契機:黄疸が5例、膵に関連しない非特異的症状が6例、糖尿病の悪化が3例、ドックUSが4例、膵疾患フォロー中が2例、他疾患精査が4例であった。糖尿病を10例に認め、うち5例は急性増悪、2例は新規発症であった。発見契機となった検査はUSが16例、CTが7例、PET-CTが1例であった。●検査所見:腫瘤描出能はUS 23/24(96%)、CT 13/24(54%)、EUS 21/23(91%)、MRI 13/20(65%)であり、腫瘤尾側の主膵管拡張を14/20例(70%)に認めた。ERPでは腫瘤部主膵管の狭窄あるいは途絶を23/23例(100%)に認めた。細胞診陽性例(ClassIVあるいはV)は8/16例(50%)であった(膵管擦過細胞診5/13、膵液吸引細胞診0/6、ENPDによる膵液細胞診3/6)。●病理所見:stageIが10例、stageIIIが13例、stageIVaが1例であった。18/24例(72%)に癌内部あるいは癌周囲の主膵管内進展を認めた。11/24例(44%)に癌辺縁の貯留嚢胞を認めた。●予後:観察期間は109~4239日(平均1305日)で、生存13例(無再発9例、再発4例)、死亡7例、不明4例(転院など)であった。【考察】TS1膵癌の全例に狭窄あるいは途絶などの何らかの主膵管異常を、約40%に癌周囲の貯留嚢胞を認めたことから、主膵管異常、膵嚢胞を捉えることが膵癌早期診断に重要と考えられた。