日本消化器内視鏡学会甲信越支部

8.当院におけるB型急性肝炎3例の経験

市立甲府病院 消化器内科
加藤 亮、雨宮 史武、早川 宏、石田 泰章、川上 智、門倉 信、山口 達也、大塚 博之
山梨大学 医学部 第一内科
中山 康弘、井上 泰輔、前川 伸哉、坂本 穣、榎本 信幸

【症例1】26歳男性。交際している台湾人のパートナーがHBs Ag陽性を指摘されたため、心配になり近医を受診し血液検査を受けたところALT 208 IU/ml、HBs抗原陽性、HBV-DNA>9.1 logcopy/mlの結果であり当科に紹介となった。ALT 1180 IU/ml、IgM-HBc抗体陽性、過去にHBs抗原陽性を指摘されていないことからB型急性肝炎と診断した。genotypeはAであった。入院時59%だったPT%が第5病日に45%まで低下し、脳症の出現は認めなかったが重症化が危惧されたため同日からentecavirの投与を開始した。肝障害は遷延したがentecavir開始から4週間で改善した。HBs抗原の消失はentecavir開始から24週後、HBs抗体が陽性となったのは32週後であった。【症例2】51歳男性。腹痛で近医を受診し血液検査でALT>1000IU/ml、T.Bil 5.0mg/dlを指摘され当科に紹介された。3か月前に山梨県内の風俗産業に従事する女性との接触がありHBs抗原陽性(2年前の検診でHBs抗原陰性)、IgM-HBc抗体陽性からB型急性肝炎と診断した。genotypeはCであった。肝障害は2週間で速やかに改善し、HBs抗原は発症後20週で検出感度以下になったがHBs抗体は32週後でも陽性にならずそのままdropしてしまった。【症例3】50歳男性。人間ドックを受けた際に、昨年まで陰性であったHBs抗原が陽性、およびALT>1000 IU/mlを指摘され当院を受診した。ALT 1437 IU/ml、IgM-HBc抗体陽性から急性B型肝炎と診断した。ドックを受ける4か月前にフィリピンへ旅行に行き現地の女性と性的接触があった。GenotypeはAであり入院後2週間で肝障害は改善したが12週経ってもウイルスは陰性化せず現在経過観察中である。【考察】現在全国的にgenotype AのB型急性肝炎が急増している。当院で経験した3例もすべて性的接触による水平感染が疑われ、2例がgenotype Aでありうち1例は重症化が危惧されentecavirを使用せざるを得なかった。Genotype Aは成人感染でも10%程度が慢性化するとされており、水平感染で新たな感染源になりうる可能性を考えると今後感染拡大予防のためにHBV universal vaccinationが必要であると考える。