日本消化器内視鏡学会甲信越支部

7.外来化学療法におけるB型肝炎ウイルス再活性化の予防対策

新潟県立がんセンター新潟病院
加藤 俊幸、栗田 聡、青柳 智也、佐々木 俊哉、船越 和博、本山 展隆、成澤 林太郎

【目的】造血器腫瘍に対するリツキシマブ導入によりHBs抗原陰性例からのHBV再活性化が報告され、肝炎は重症化しやすいため免疫抑制・化学療法においても再活性化対策が求められている。2009年にガイドラインも作成されたが、固形癌ではリスクが低いためか、がん専門病院でも関心が薄く問題である。

【方法】2012年と2013年の外来化学療法施行患者におけるB型肝炎ウイルス検査の実施率を調査した。

【成績】1.2012年6月-7月の外来化学療法施行は1,636件485例であったが、HBsAg,Anti-HBs,Anti-HBcのウイルス検査が実施されていたのは17%にすぎなかった。2.施行医に注意を喚起した結果、2013年6-7月の同期間では1,606件530例が化療され、HBVウイルス検査は48.3%に実施されていた。しかし、HBsAg陰性のみで抗体が追加検査されなかったものが45.9%、HBsAgも未検査であったのは5.8%であった。HBsAg陽性は1.3%で、抗ウイルス剤の予防投与が行われ、HBsAg陰性でAnti-HBc(+) and/or Anti-HBs(+)の高リスク群は8.3%で、HBV-DNAモニタリングが行われている。現在までは、化学療法後のHBV再活性化は認めていない。3.対象疾患は、造血器腫瘍8.7%、乳癌35.0%、消化器癌37.9%、肺癌12.8%、婦人科癌6.4%などであり、外科医への啓蒙が必要であった。

【結論】固形癌の化学療法によるHBV再活性化と重症肝炎は、当院の外来化学療法では発生していないが、HBVスクリーニング検査の実施率がまだ低い。施行医への注意啓蒙を繰り返す一方で、外来化療箋のダブルチェックを有効に活用すべきである。