日本消化器内視鏡学会甲信越支部

6.次世代シークエンサーにて耐性変異を確認したtelaprevirを含む3剤併用療法でbreakthroughをおこした1例

山梨大学 第一内科
辰巳 明久、佐藤 光明、前川 伸哉、鈴木 雄一朗、廣瀬 純穂、小松 信俊、三浦 美香、中山 康弘、井上 泰輔、坂本 穣、榎本 信幸

【背景】Telaprevir(TVR)+ペグインターフェロン(PEG-IFN)+リバビリン(RBV)による3剤併用療法は1b高ウイルス量のC型肝炎に対する高い有効性が確認されている。近年、次世代シークエンサーの開発により少量の薬剤耐性クローンをシークエンス可能となった。そこでTVRを含む3剤併用療法を行いbreakthroughした症例について次世代シークエンサーにて耐性変異を検討したので報告する。【症例】70歳男性のC型慢性肝炎。PEG-IFN+RBV治療でNRであったため3剤併用療法を行った。ウイルス因子は1b type、HCV-RNA 7.0 log IU/ml、コア70野生型、ISDR0個変異、IRRDR3個変異、宿主因子は肝組織F3A2、IL-28BはT/Tであった。TVR1500mg+PEG-IFN100μg+RBV600mgで治療を開始、HCV-RNAは1週間後2.8 log IU/ml 、4週間後<1.2logIU/ml、6週間後にウイルスは陰性化した。薬剤減量は行わず継続したが治療12週間でHCV-RNA 2.4 log IU/mlでbreakthroughとなった。次世代シークエンサーにて既知の耐性変異割合を検討したところ、治療前には耐性変異は認めなかったが、breakthrough後HVC-RNAが6.4 log IU/mlまで上昇した際のシークエンス結果ではNS3-A156Fの変異クローンが97.5%を占め、さらにウイルスが増加すると耐性変異の割合は19.3%まで減少しwild typeに置き換わった。【結語】TVRを含む3剤併用療法を行いbreakthroughした症例に対して、次世代シークエンサーにてダイナミックに変異を確認しうることができた。非常に示唆に富む症例と考え文献的考察をふまえ報告する。