日本消化器内視鏡学会甲信越支部

28.バルーン内視鏡を用いた膵・胆道疾患の診断と治療

新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部
小林正明、成澤林太郎
新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野
塩路和彦、山本幹、水野研一、本田穣、橋本哲、横山純二、竹内学、佐藤祐一、青柳豊

【緒言】当科では2008年よりバルーン内視鏡を導入し、術後再建腸管症例に対するERCPに応用してきた。今回当科で行ったバルーン内視鏡を用いたERCPの成績をまとめ、有用であった症例を提示、当科で行っている工夫について報告する。【対象】2008年1月1日から2013年1月31日まで術後再建腸管症例にバルーン内視鏡を用いてERCPを行った79回。用いた内視鏡はシングルバルーン内視鏡が55回、ダブルバルーン内視鏡が6回、ショートタイブ ダブルバルーン内視鏡が21回であった。再建術式はBillroth-II法が5例、Roux-en Y再建が10例、膵頭十二指腸切除後が29例、胆管空腸吻合術後が28例、その他が7例であった。【結果】79回中55回が治療目的で、乳頭および吻合部への到達は70回(88.6%)で可能で、そのうち結石除去、ドレナージなどの手技が完遂できたのは55回(78.6%)であった。【症例提示】症例は20歳代の男性。先天性胆道拡張症と胆管癌にて幽門輪温存膵頭十二指腸切除が行われている。膵管ロストチューブが肝内に迷入し摘出目的にERCPを施行した。SIF-Q260にて胆管空腸吻合部まで挿入。オーバーチューブを固定したあとXP260N(細径内視鏡)に入れ替えた。胆管吻合部からスコープを挿入し右後区域枝に迷入したロストチューブを確認、生検鉗子を使用し抜去した。【結語】バルーン内視鏡を用いることにより乳頭または吻合部への到達は比較的満足いく成績であるが、手技完遂率は決して高くない。バルーン内視鏡ではスコープ長や鉗子口径により使用できる処置具が非常に限られ、症例毎にさまざまな工夫をしながら治療を行っている。