日本消化器内視鏡学会甲信越支部

26.副乳頭部神経内分泌腫瘍(NET)の一例

新潟県立新発田病院 内科
清野智、夏井正明、瀧澤一休、坪井清孝、岡宏充、青木洋平、山崎和秀、松澤 純、渡邉雅史

 今回、我々は副乳頭部NETの一例を経験したので報告する。症例は60歳代の男性で胃潰瘍の既往がある。2012年3月15日に胃潰瘍の経過観察目的に近医で施行された上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚内側にSMTを指摘され、3月30日に当科を紹介受診した。内視鏡検査では副乳頭部に中心が淡赤調で軽度陥凹した2cm大のSMTを認め、陥凹部からの生検でカルチノイドと診断された。カルチノイド症候群を思わせる臨床症状はなく、血中serotonin、ACTH、gastrin値はいずれも正常範囲であった。腹部CTでは十二指腸下行脚内側に腫瘤を認めたが、明らかな膵浸潤やリンパ節転移を認めなかった。EUSで腫瘤は第2~3層に主座を置く内部ほぼ均一な低エコー腫瘤として描出され、第4層は保たれていた。ERCPでは腫瘤内の口側に開口部を認め、同部からの造影で副膵管から主膵管が造影された。以上より、副乳頭部NETと診断され、7月20日に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行された。病理学的には副乳頭部膵管に隣接した粘膜固有層から粘膜下層にsynaptophysin陽性、chromogranin A陽性、CD56陽性、somatostatin陽性の腫瘍細胞が吻合索状から小結節状に増殖していた。MIB-1 indexは 3%でNET G2と診断され、腫瘍径は13mmでly1, v0, n1(+)であった。外来経過観察中であるが、現在まで再発を認めていない。副乳頭部NETは稀な疾患であり、文献的考察を加えて報告する。